生まれて初めてプレイしたゲーム

生まれて初めてプレイしたゲーム、というものを覚えているだろうか?私は覚えている。『ヨッシーストーリー』だ。

と、いっても当時私は字が読めなかったから、タイトルは記憶を頼りに推測したものだ。なんなら私は、何故だか私は『ヨッシーのピクニック』と覚えていた。

うちにはゲーム機はなかった。いや、あったのかもしれないが、少なくとも見たことはなかった。だから、初めてのゲームは他人のうちでプレイしたものだ。

その人のことを、私たちはローソンのおばちゃんと呼んでいた。私たちが住んでいたマンションの向かいにあったローソンで勤めていたのが彼女だった。だから私は、彼女の名前を知らない。母と彼女は友人関係にあるようだった。

私は幼稚園に送迎バスで通っていた。隣の幼稚園はシャトルバスの名にふさわしく、スペースシャトル型のバスで送迎をしていたが、私の幼稚園のバスは割と普通のものだった。

専業主婦にも事情はあるらしく、時折送迎バスからの迎えに母が来られないことがあった。そんな時には、同じマンションの1階に住んでいる同じ幼稚園に通う子どもを持つ人に預かってもらうことがあった。ローソンのおばちゃんの家に行ったのもそんなタイミングだったのだと思う。

初めてゲームを触った時は衝撃を受けた。テレビの中にあるものが、自分の意思で動かせるなんて。……とでも書けるなら面白いのだけれど、そんなことはなかった。私が覚えていることは、ヨッシーがゴールした瞬間のことだけだ。画面を縁取るように並んでいたフルーツが、端からヨッシーに吸い込まれていく光景だけだ。自分でプレイしていたかさえ定かではない。もしかしたら姉がプレイするのを見ていただけかもしれない。コントローラーでヨッシーが動かせることも、ポリゴンで描写された3Dのステージにキャラクターも、それが当然のものとして私は受け取った。

私が生まれる前から世界にゲームはあったのだ。

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