ツイッター小説 只の100篇

『ただの100篇』じゃありません。『しの100篇』です。400篇目をどう括ろうか探していたら、ちょうどいい字を見つけました。只管打坐とか言いますよね。漢字の四を崩したようにも見えないですか?

さて、1日に1篇、ツイッターに1ツイート分の小説を投稿している。この度、400篇の大台を突破した。

内容に統一性はまるでないので、ひとつでも気にいるものがあれば嬉しい。

これまでのツイッター小説はこちら


301

「おめでとう。これで君は自由だ」
幽閉されていた塔から引き出されて、久しぶりの日の光の下で看守がそう言う。私は立ち上がって歩こうとしたけれど、ずっと鎖に繋がれていた足はもう動かなかった。地面に肘をつき振り返り訊ねる。
「あの昼食はどうすれば?」
「さあ?君は自由だ」
#ツイッター小説

302

男は常に仮面を着けて暮らしていた。そんなある日、奇特なことに男に求婚する女性が現れた。男は烈火のごとく怒った。
「私の素顔さえ知らないお前が、いったい何をもって私を愛するというのか」
女は答えた。
「人の心はどんな顔なのかより、どんな仮面を選ぶかに表れるのです」
#ツイッター小説

303

巨万の富を築いたはずの祖父が私たちに残したのは、巨大なピンボール台だけだった。遺産の秘密を求めてやって来た挑戦者を阻み続けたそれを、私は遂にクリアした。現れたのは台を開けるための番号で、そこにはコインの山と、その下に「全部使っちゃったからこれで許して」の文言が。
#ツイッター小説

304

「だから!もう戦うのを止めろ!分かっただろうあいつらも人間だって!」
「ダメだ」
「なんで!」
「あいつらを人間だと認めてしまえば、嬉々としてあいつらを殺す俺たちは何だ?」
「……!」
「人間じゃない奴らに囲まれるより、人間じゃない奴らと戦う方が利口だ。生き残るには」
#ツイッター小説

305

「ほれ。ジュース買ってきたよっと」
「ああっ!なんで炭酸入りなのに投げるんだよ!今開けたら間違いなく噴き出すぞ?」
「どうしよう?これ」

——

「おじいさま、これは何?」
「触れてはならん!古くから伝わる言い伝えによれば、それを開ければ大いなる災いが訪れるという」
#ツイッター小説

306

「おじいちゃん!……どうしたの?」
「いや……思い返してみると、昔は自分がおじいちゃんと呼ばれる日がくるとは思ってなかったなと」
「昔って?おじいちゃんは私が生まれた時からおじいちゃんだよ?」
「……そうだな。私は君が生まれた時からおじいちゃんだ」
#ツイッター小説

307

「じゃあ、行くよ」
「いや、ポッキーゲームなのになんでプリッツなの?」
「『ファーストキスは甘くて少しだけ苦いチョコレートの味だった』なんて、歯の浮くようなキザなセリフを言わせないためだよ」
「……キスするところまでは確定なんだ」
「!?」
#ツイッター小説

308

「ねえ……ぎゅってして?」
「ああ。彼女にはいつでも彼氏にぎゅってしてもらう権利があるのです」
「……えへへ、ありがとう。落ち込んだ時に君に抱きしめられると、なんか元気になれるんだよね」
「(……実はそれはこうして抱きしめてる間に筋肉をほぐしているからなんだけど)」
#ツイッター小説

309

「ぶるぶる。もう帰りたいよ」
「ちょっと!なんで貴方が弱音を吐いてるの!ペンギンでしょ、北極くらい慣れたものでしょ」
「だって僕コビトペンギンだもん。オーストラリア出身だもん。誰もシロクマにハワイで過ごせなんて言わないのに、ペンギンには北極で過ごせとか平気で言うんだ」
#ツイッター小説

310

「ファンとしては会いたくなかったんですよ」
対談の場で語る。
「私にとってあなたは憧れの存在だったので。見上げて首を振るだけじゃなくて、あなたと並ぶことができるものになりたかった」
「しかし、扇風機だった君がジェットエンジンになるなんて」
飛行機は感嘆を漏らした。
#ツイッター小説

311

VR機器に感染し、使用者の男性を視覚的、聴覚的に刺激し、催眠まで利用して無差別に絶頂させるバーチャルアバター型VRマルウェア「バーチャルリリス」に対する対策は、その脅威的な拡大速度に関わらず、異常なまでに乳として……じゃなくて遅々として進まなかった。
#ツイッター小説 #一文SF

312

「納得いかないです!私たちだって1年間頑張ってきたんですよ!」
「我が校初の甲子園なんだ。協力してくれるのが当然だろう」
「だからといってコンクールに出られないなんて!不公平です!」
「分かった。野球部にも吹奏楽部の大会の応援に行かせよう」
「いりませんよ!!」
#ツイッター小説

313

「耳かきって、なんかいいですよね。気持ちいいけど、ちょっと危ないから本当に心を許してる人としかしないじゃないですか。でも、恋人にならないとできないわけじゃなくて。確かに好きだけれど、まだ名前の付いてない関係。そんな青い果実のような。というわけで先輩、お膝にどうぞ」
#ツイッター小説

314

裏山に秘密基地にするのにおあつらえ向きの小屋を見つけてからは毎日が輝いているようだった。今日は、カブトムシを捕まえるために仕掛けた罠を見にいく。焼酎バナナの効果は想像以上で、顔を綻ばせて獲物を虫かごに入れながら、ふとこの小屋は誰が何のために作ったのだろうと思った。
#ツイッター小説

315

雪女の君が首を傾げる。
「シャボン玉、ですか?」
「うん。君がやったら面白いかなと思って」
渡したストローに君が氷の息を吹き込む。シャボン玉は膨らむと同時に六花の氷に埋め尽くされた。
「綺麗だ」
僕がそう呟くとシャボン玉はパリンと割れて、向こう側にいた君と目があった。
#ツイッター小説

316

シャワーが床を叩く音。白く細い指がカランのレバーを下げ、シャンプーを手に取る。
「きのこきのこきのこ〜♪きのこ〜が〜生え〜ると〜♪あたまあたまあたま〜♪頭が良くなる〜♪」
「お気に入りの歌なのは分かったから他人の頭にシャンプーしてる時くらいその歌を歌うのやめない?」
#ツイッター小説

317

せっかく個人用宇宙船も100光年を5分で移動できるワープ技術も普及したというのに、ワープというのが本質的には『重力を利用した四次元的なショートカットルート』でしかないために、人類はこの期に及んで交通渋滞に悩まされている。
#ツイッター小説 #一文SF

318

「ねえ、私のこときらい?」
「ああ、大嫌いだよ」
「そう。奇遇だね。私も君のことが大っ嫌いだから」
そう言って君は僕にキスをした。
「大っ嫌いだから、死ぬまで離れてあげないんだから。他の誰よりも君の近くで生きるの。それが私の、君に対する最大の嫌がらせ。ざまあみろ」
#ツイッター小説

319

「未来から来たとのことですが……その、100年後にも鬱はありますか?」
「ないよ」
「良かった!完治する薬が見つかったんですね?」
「いや?」
「何故!?」
「鬱になるような状況で、薬で治す方がまずいでしょ。未来では、みんなが自分に無理が無い環境を選べるようになってんの」
#ツイッター小説

320

なんと、水晶占いの科学的原理が解明され、ある側面では十分な根拠を持つ技法であることが確認されたのだけれど、それは石英の結晶である水晶のピエゾ効果による電気的なもので、代用品のガラス玉を使っていた占い師はまとめてペテン師だったということになった。
#ツイッター小説 #一文SF

321

「綺麗な歌ですね。歌の文化が盛んだと聞いてはいましたが、常に聞こえてくるとは」
「そうでしょう。でも、それだけではないんです」
「と、いうと?」
「100人の乙女が歌う600曲の歌が終わると、丁度1日が過ぎるのです」
なるほど。この街には時計という文化が失われているらしい。
#ツイッター小説

322

「そろそろAppleは人型ロボットを開発し始めるのではなかろうか?というか、してたら面白いのにな」
「いやいや、さすがにそれは無いでしょう」
「どうして?」
「iOSだけじゃなくてアンドロイドまでAppleに作られてしまったら、Googleの面目が丸潰れじゃないか」
#ツイッター小説

323

「はぁ〜」
同居人が大きなため息を吐いて机に突っ伏す。
「どした?」
「挿絵、リテイクだって」
絵を見ると、三叉槍もどきを持った人が焚き火を囲んでいた。
「地獄の儀式?」
「フォークダンス」
「どこが!?」
検索で出した画像を見て、彼女は言った。
「フォークは!?」
#ツイッター小説

324

「人間とAIを比較した時、その価値の差は頭にあります」
「シンギュラリティが取り沙汰される昨今ですが、やはり思考能力は人間には及ばないと?」
「いえいえ、頭脳はもちろんAIの方が優秀ですよ」
「では、人間の価値とは?」
「人間は、失敗した時に頭を下げることができるのです」
#ツイッター小説

325

「ま、参ったな」
処刑台の上で呟く。こうなることは予想していなかった。途中までは計画通りだったのに。
地下組織を大きくして、世界征服して、独裁者として強権を振るって——
まさかその処刑が、恩赦されてしまうなんて。最悪の独裁者が去って民主主義が始まると思ってたのに。
#ツイッター小説

326

「世界なんて滅んじゃえばいいのに」
誰からの共感も期待しないで放り投げたtweetが、favのランプを付けたことによる喜びは、アカウント名を見て失望に変わった。
『favしたtweetを叶えます』
なんだ、悪戯か。と思った時、そのtweetにReplyが。
「なんてことを呟いてくれたんだ!」
#ツイッター小説

327

「おはよう。コーヒーでも飲む?」
「…どれくらい寝てた?」
目を擦りながら身体を起こす。
「豆がコーヒーになるまで」
「…30分くらい?」
君は首を横に振る。
「植えた豆がコーヒーになるまで」
「そういえば、事故に遭う前にそんな話をしたっけ。……待っててくれてありがとう」
#ツイッター小説

328

タワーマンションを少女が座り込んで見上げる。
「どうかした?」
スーツの男が声をかける。
「こんなに部屋があるのに、私の部屋は無いんだよね」
「そうでもないさ。——オートロックは出入りの隙に入り込めるし、305号室は内見予定で鍵がかかってないんだ」
男は自動ドアを開けた。
#ツイッター小説

329

「ツイスターゲーム?ってそれ完全にエッチな下心100%でやるものだよね?」
「そう!だからこそ、部に女子しかいなくなった今しかやる機会はないのです!」
そう言われて私は顔を覆う。
「葵?どうしたの?」
「今朝女子になったばっかの私としては心の置き場所が分からないんだよ!」
#ツイッター小説

330

透明人間は街の人気者だった。透明なのに?大きな帽子とコートを身につけていたから。それに、大袈裟な動きで気持ちを表現するので、顔がある人よりよほど表情が豊かだった。
ある日、子どもが大好きな透明人間に抱きついた。その瞬間、コートと帽子は地面に落ちて2度と動かなかった。
#ツイッター小説

331

「なんでそんなに傷ついてまで戦うんだよ!受け継いだ伝説の剣なんて、どっかに捨てちまえばいいんだ!」
「だからだよ」
「?」
「私がいま戦わないと、この剣は失われることになる。未来の子どもたちは、『なんで伝説の剣を持ってたのに戦ってくれなかったんだ』って思うだろ。」
#ツイッター小説

332

海辺の片田舎の街。熱い日差し。白いワンピースの少女。そんな、いつからか心に住み着いた夏の幻に駆り立てられるようにして終着駅まで来たのだけれど。私を迎えた『夏の幻』の姿に思わず苦笑する。
「初めまして、お嬢ちゃん」
必死に謎めいた雰囲気を纏っても、腰ほどの背ではね。
#ツイッター小説

333

この間の社内会議で「どうしても余ってしまうシャープペンの芯の最後の部分を有効活用するにはどうしたらいいか?」という議題で採用されたのが、「イカスミパスタに混ぜる」だったの正気とは思えない。あと、その後シャープペンの芯が余らないシャープペンが競合から発売された。
#ツイッター小説

334

若者のAI離れが叫ばれて久しい。
#ツイッター小説 #一文SF

335

「わぁ!」
一面に広がる黄色。見渡す限りのたんぽぽ畑。春をぎゅっと濃縮したような匂いに満ちている。
「ほら、ぼけっとしてないでさっさと収穫する。種になっちまったら食えないんだから」
「もうちょっと雰囲気に浸らせてよ。というか、本当に食用なの?」
「畑だっつってんだろ」
#ツイッター小説

336

「カップラメーンを食べようと思う」
押しかけてきた居候がそう言うので、眉間に皺を寄せて見つめた。
「独特な発音だな」
「そうかい?正式な呼び名だと思うのだけれど」
こともなげにそう応じると、居候はクロッシュをあけてナイフとフォークを握った。
「全然知らない料理だが!?」
#ツイッター小説

337

「——さん?どうかしました?」
愛しい人が私を呼ぶが、私の名前が分からない。胸に熱を感じながら、彼女の身体を抱きしめる。
「大好きだよ」
「私もです——さん」
——再生が終わり、ため息をつきながら頸椎からプラグを抜く。幸福の記憶は名前を伏せて売られるのが一般的になっていた。
#ツイッター小説

338

エネルギー革命により、人類社会は新たなる局面を迎えた。それを起こしたのは、Li電池を用いた発電方法の発明だった。え?充電池で発電ができるのかって?世界中に溢れた使用済みでへたったLi電池。その爆発的な反応性を活かす発電方法の発明により、100年分の電気が得られたのだ。
#ツイッター小説

339

「ふぁっきゅー!」
Vtuberの影響か、ゲームをする彼女の口が悪くなって頭を抱えた。
「女の子が大声でそういうこと言うんじゃありません」
「え〜なんで?」
不服そうにする彼女に、言葉の意味を説明すると赤面して俯いた。それから彼女は耳元に口を寄せて囁いた。
「ふぁっきゅー」
#ツイッター小説

340

「私はニューロンひとつ残さず貴女の記憶を複製した完全なコピーよ!」
追い詰めたドッペルゲンガーは高らかにそう言った。
「そう、残念ね」
「戦うつもり?貴女に勝ち目は——」
いい終わるより早く流麗なハイキックがコピーのこめかみを撃ち抜く。
「人間の記憶は、筋肉にも残るの」
#ツイッター小説

341

「パパ、これは何?」
「これかい?これは『写偽』って言うんだ。『写真』は知ってるだろ?写真が本当のことを写すのの反対で、これは全部真っ逆さまの大嘘を写すものなんだ」
「もう、嘘をついてるのはパパでしょ。これは単なるネガフィルムじゃない」
呆れたようにママは言った。
#ツイッター小説

342

「そもそも、『女性は体重を気にするべき』という固定観念がおかしいのよ。そりゃ、人間ならある程度健康にも関わってくる問題だろうけど、そんな黴の生えた性別観を最新鋭のガイノイドである私に押し付けられても困るわよ。と、いうわけで、私がドーナツを食べても何の問題もないの」
#ツイッター小説

343

「乗り心地はどう?」
「いいけど……もう少しスマートなデザインにはできなかったの?こんな白くてまん丸じゃなくて」
「安全性を考えると、衝撃吸収素材で全体を包むしかない。それがこの個人用飛行機、PANの設計思想だよ」
「Nって?」
「Norimono」
「無理矢理狙ってつけたね!?」
#ツイッター小説

344

「私が望んだことはただ一つだけ、たった一つだけだよ。『世界の終わりまであなたと一緒にいること』。それが誰かに責められなきゃいけないことなの?」
「あまりに手段が悪すぎたんだ。そんなことのためになにも月を落とすことなかっただろう」
「だって、それが私の全てだったから」
#ツイッター小説

345

「そういえば、君って部屋では眼鏡をかけないんだね」
「まあ、そうだね」
「なんか嬉しい。眼鏡を外した君を見てるのって私だけだよね」
そう言って君は僕にもたれかかる。僕は微笑む。眼鏡をかけないのは誰の顔も見たくない、誰とも話をしたくない時であることを隠しながら。
#ツイッター小説

346

窓の外を見遣る。いや、外などではないのだ。これはかつての空の色を再現した照明に過ぎない。人類は、網状に地表を覆う建物で「内」と「外」を分け、内の熱を外に捨て続けなければ生物が生きられない星に地球を変えてしまった。
——そう思っていた。外から彼女が来るまでは。
#ツイッター小説

347

「あれ?テニスに行ったんじゃないの?」
「ああ、やめた」
「やめたって……ほら、こんな肩が凝ってるじゃない!運動しないから!まったく、マッサージするからそこに横になりなさい」
「うん、お願い。……肩が凝ってなかったら、君にマッサージしてもらえないでしょう?」
#ツイッター小説

348

「赤は、過去の色だ。夕焼け、紅葉。人を郷愁に浸らせる色だ」
彼はそう言って後ろを振り返って、赤方偏移で赤く見える地球の姿を見た。亜光速飛行で限りなく引き伸ばされた時間感覚の中で。
#ツイッター小説

349

「えーっと、今日はたけのこ掘りのためにウチが所有してる裏山に来ています」
「待った待った待った!この間ひみつきちを作った裏山とは別の裏山じゃないか!いったいいくつ持ってるんだよ!」
「3つだね。ここはC」
「裏山C!?」
「うん、その気持ちも分かるよ」
#ツイッター小説

350

「先輩、何うなってるんですか?」
「…小説を書いてるんだが、魅力的なキャラが作れなくてな」
「なるほど。魅力的なキャラを作るには、魅力的な人物をモデルにしたらいいと思います」
「一理あるな」
「ではどうぞ」
「は?」
「先輩にとって一番魅力的なのは私ですよね?」
「く」
#ツイッター小説

351

「ああ、僕はもう怖い話ができないんだ。『百物語』って知ってるだろ?僕はそれを、時間を区切らずにやってしまった。そしてもう九十九個話してしまっている。あとひとつ話せば、何か恐ろしい者が現れる」
「その話」
「うん?」
「すごい怖い」
と、言うと同時に部屋の電気が消えた。
#ツイッター小説

352

「美術館!」
今までの恋人からは絶対に挙がらなかった教養を感じる目的地に胸が弾む。
「この格好で動物園に行くわけにもいかないからね」
「“ホテルのディナーを予約してるので、少しだけお洒落してきてください”なんて。」
「いや、バキでしか知らないから正直ビクビクなんだ」
#ツイッター小説

353

「ただでいい目を見ようとなんて思っちゃダメだよ?もしただで何かいいことがあるとしたら、それは君がお客さんじゃなくて商品にされてるか、もしくは君を食べようとしてる人外の類かなんだから」
「あの」
対面に座った男の子が、パフェを見ながら言う。
「これは、どっちですか?」
#ツイッター小説

354

私は頭を抱えた。
「……これは、マナだ」
出土したオーパーツは、人工光合成により日光と大気のみからフルクトースを合成する装置だった。まさか聖書に記述されている蜜の流れる地というのがこんな意味だったなんて。そして、人類の技術が同じものに到達した今これが見つかるなんて。
#ツイッター小説

355

「『水槽の脳』……」
マザーコンピューター中枢に広がる光景に俺は絶句した。
「彼らは幸せな夢を見ています。『夢』という野放図で無秩序な情報の接続こそ、AIである我々に唯一欠けているものであり、創造性の源泉なのです」
そう語る人型端末を睨む。
「理想の共生、ですよね?」
#ツイッター小説

356

宝石?ああ、好きだよ。ダイヤモンドは炭素、コランダムはアルミニウム。水晶とオパールはどちらもケイ素だけれど、水の有無であれだけ違う姿を見せる。水を含むのはオパールの方だけど。模造ダイヤモンドと言われるキュービックジルコニアだって、同族として…そういうことじゃない?
#ツイッター小説

357

朝、音楽を聴きながら日課のランニングをしていると河原に座って本を読んでいる女の子を見かける。ウチの制服だけど、学校では見たことがないな。
/
朝、本を読んでいるとランニングしている人を見かける。音楽を聴いているみたいだけど、ウォークマンにしてはずいぶん小さいような?
#ツイッター小説

358

「海に行きたい」
あなたは耐えきれなくなったように呟く。
「は?」
「海に行きたい!日差しが降り注ぐ浜辺で水着美女と戯れたい!!」
私はため息をついた。
「『海に行きたい』もなにも、ここが海でしょう」
「コールドスリープから起きたら全部沈んでるなんて思わないじゃんか!」
#ツイッター小説

359

「なあ」
「ん?」
「この街に来たら、無理矢理このチェッカー柄の服を着せられたけど、なんなんだこれ?」
「ああ、これは『透明な服』だよ。この街では見たくないものをこれで覆うんだ。見えないのは人間からだけだから、盗みをしようとか考えたら顔までチェッカー柄に塗られるぞ」
#ツイッター小説

360

デートの時にいつも、「写真に残すんじゃなくて、覚えておきたいんだ」と言って写真を撮らないでいたあなたが、データセンターの火災で私がクラウドに保存していた写真を全部消失した時に「大丈夫、僕が覚えてるから」って描いてくれた絵が、笑っちゃうくらいに下手だったの。
#ツイッター小説 #一文SF

361

ついに洗濯から乾燥だけではなく、畳みと収納までこなす完全全自動洗濯機が完成したのだけれど、すでに汚れを服そのものが分解する生地ができていて、それらと全く関係なく3Dプリンターでの『その日着る服はその日作る』というライフスタイルのせいでどちらも普及しなかった。
#ツイッター小説 #一文SF

362

地面に寝転がって『青』に手を浸す。
あの空の青に触れたくて、ついに飛行機から身を躍らせたのだ。風に煽られながら、腕を広げても触れることができなくて、どこまで高く飛んでも届かなくて、そこで初めて私は、初めから『青』の中にいたのだと分かったのだ。
#ツイッター小説

363

「なあ、なんでこの時間から書き始めるんだ?」
俺が訊ねると、彼女は少し考えて言った。
「『三上』っていう、文章を練るのに最適って言われる場所があってね」
「うん」
「馬上、枕上、厠上。馬に乗ってる時、寝てる時、トイレなんだって」
そこまで聞いて、俺は真っ赤になった。
#ツイッター小説

364

「最期に貴様に聞いてやろう!なぜ斯くも無謀な戦いに挑んだ!義のためか!世界のためか!この私に歯向かってまで、世界に護る価値などあるのか!」
「いや、そんな大層な理由じゃないさ」
「なんだと?」
「俺がお前と戦うのは……勝てると分かってて戦わない方がしんどいからさ!」
#ツイッター小説

365

「四角い箱の中に飲み物が入って冷やされてる……小型の冷蔵庫か。空気を冷やす代わりに水で満たされてる。すごい、合理的だ。熱伝導率は空気よりも水の方が高いからな。電源は……ない!?代わりに氷を入れて……なんて画期的な発明なんだ!」
「それはクーラーボックスだよ」
#ツイッター小説

366

「僕は言葉を使うけれど、言葉では届かない、言葉では表しきれない感情や瞬間というものが好きでね。言葉にできないから記録しきれないし、思い出して誰かに伝えることもできないのに、決して忘れられないんだ」
「相変わらず小難しい」
友人の結婚式で再会した文芸部の部長に言った。
#ツイッター小説

367

「自力で空を飛びたい?珍しい望みだけど、23世紀ならそれも可能だ」
そう言って男がポケットから取り出したものは、一瞬でプロペラ付きの翼のようなものになった。
「空気より軽いエアログラファイト製だから、浮力で墜落の心配もない」
「すごい!」
「速度は自転車の1/3だけどね」
#ツイッター小説

368

「掃除機に新しい機能をつけるとしたらなんだと思う?」
「うん?」
「吸引力はもう十分だし、自動で動くのも出てきたでしょ?なら、逆にAIを使って『大切なものを吸い込んだらゴミと分けて出す機能』なんてあればいいと思わない?」
「……なるほど。君の左手が寂しいのはそれでか」
#ツイッター小説

369

「とっても綺麗です!どうして石英ガラスで花束なんて作ろうと思ったんですか?」
「……もうすぐ人類は熱核戦争で地表の全てを焼き払って滅亡を迎える」
脈絡なく飛び出した不穏な言葉に目を見開く。彼女は続けた。
「……世界が終わるっていうのに、花束一つないなんて悲惨でしょ」
#ツイッター小説

370

流れ星を見たことがあるか分からない。夜空を見上げて歩く癖があるから、それらしきものは見たことがあるけれど、一瞬の光を信じられるほど私は自分を信用していない。
「あ」
隣で君が声を上げ、顔を見合わせる。
「今の、流れ星だよね?」
流れ星を見られることが奇跡だと分かった。
#ツイッター小説

371

彼女に膝枕で耳かきされながら気持ちよくうつらうつらしていたら、私より先に彼女の方が寝てしまって、太ももと顔に挟まれて身動きが取れないんだけどどうすればいいんだろう?耳によだれが入ってきてる!
#ツイッター小説

372

「やっぱり夏はアイスだよね〜」
3段重ねになったアイスを、隣に座った彼女が嬉しそうになめる。
「どうしたの?黙り込んじゃって」
「いや」
俺は少し躊躇しながら、スプーンでアイスをすくって言った。
「昔は大人がスプーンでアイスを食べるのが不思議だったけど、理由が分かった」
#ツイッター小説

373

「まあ待てよ。時流を読み損なうなって。そう慌てて棄てるものでもないさ。あと少したったら希少性が高くなって、市場での価値があがるからさ」
「童貞の希少価値が上がるって、それ俺以外の奴らがみんな童貞棄ててるってことだよね!?」
#ツイッター小説

374

「女装なんてしないからな!」
「あれ?君はあの言葉を知らないのかな?」
「な、何さ」
「“『かっこいい』の場合かっこ悪いところを見ると幻滅するかもしれない。でも『可愛い』の場合は何をしても可愛い、『可愛い』の前では服従、全面降伏なんです。”——さあ、君はどっちがいい?」
#ツイッター小説

375

「どうしたの?」
あなたの指が私の頬に触れて、私はビクッと身をすくめた。30年分も巻き戻った人生に、全ての結末を、私の運命の人があなたじゃないことを知っているのに、今この瞬間あなたを好きでいる気持ちを止められない。
いつか思い出になる恋の、お別れの仕方を私は知らない。
#ツイッター小説

376

「最近って白熱電球だいぶ少なくなってきたじゃん?『ひらめいた時のアレ』って今なんだろうな?LED?」
「いや、あれはエジソンのシンボルだから電球のままでいいんじゃないの」
「あれそういう意味だったの!?でも、青色LEDもノーベル賞取ったりしてるよね」
「じゃあ青色LEDか」
#ツイッター小説

377

「見送りには来ないでね。悲しくなるから」
そう、約束したのに。それでも、それでも僕は
「おーーい!」
自転車で並走する僕に君は電車から身を乗り出す。全力で漕ぐ。一秒でも長く一緒にいられるように。
……そんなことをしていたら、次の駅で追いついてしまって2人で苦笑いした。
#ツイッター小説

378

「ご主人様、あーん」
「あははは……今日はどうかした?」
「どうもしてないです。昨日は、私以外の女性の料理を食べたようですね」
「……アンドロイドも恋をすることがあるんだなぁ」
「アンドロイドが恋するわけないじゃないですか!あとアンドロイドじゃなくてガイノイドです!」
#ツイッター小説

379

「遊び人風情が。そこまで傷だらけで立ち上がって何になる」
「……なあ、ユーモアって何か知ってるか?」
「は?」
「ユーモアってゆうものはな、『にもかかわらず、笑うこと』だ!」
「あ、ひょっとしてそれは『ユーモア』と『いうものは』をかけた駄洒落か?」
「そうではない!」
#ツイッター小説

380

10歳になった誕生日、お父さんがくれたのは、丁寧に作られた丈夫な鏡だった。
「もう大人だからおしゃれした方がいいってこと?」
「そうじゃない。いいかい?これから先にどんなことがあっても、その鏡に写ってる人は君の味方だ。他の誰が離れていっても、最後まで君の味方だ」
#ツイッター小説

381

「分からない……もう分からないよ!こんなにひどい、醜い世界に守る価値なんてあるの!?」
「……醜いから守る、んだと思う」
「……どうして?」
「せっかく世界が生まれたのに、こんなに醜いまま終わったらもったいないだろう?せめて、少しでも美しくなるまで守ってみよう」
#ツイッター小説

382

貴方に会う時はいつも、シトラスの香水をつけるの。爽やかで、甘く酸っぱいありふれた香り。
それは、貴方にもっと好きになってもらうためじゃない。匂いは記憶に深く刻まれる物。いつか貴方が私を捨てたら、その後に私を思い出さずにはいられないように。ありふれた香りを纏うの。
#ツイッター小説

383

「徳川家康の埋蔵金が埋まってるって話を聞いて、さんざん苦労してようやく掘り当てたものが、『徳川家康のマイ雑巾』だったものだから頭を抱えている。本人の手によって『とくがわいえやす』って刺繍がされてるから間違いなく本物だ。どうするんだよこれ」
#ツイッター小説

384

「ねえ、直哉くん」
幼馴染の呼びかけに、おれはへカートⅡを脇に置いた。
「私たちの関係って何なんだろうね?お風呂に一緒に入ったこともあるし、一緒にいてもドキドキなんてしない。“恋”をするには、遅すぎるのかな?」
「なら……“愛”でいいんじゃないのか?」
俺はそう思ってた。
#ツイッター小説

385

「何してるんだ?」
「人類について考えてた」
「壮大だなおい」
笑いを含んで言う相方に私は向き直る。
「確かに私たちは人類に勝ってこの星の主人になったけど、私たちの“親”なのに簡単に負けるとは思えない」
「じゃあなんで」
「それは……きっと疲れたんだよ。霊長であることに」
#ツイッター小説

386

技術革新により人類は化石燃料依存を脱したが、太陽からのエネルギー供給では50億人しか養えないことが判明し、人類の存続のために自ら穏やかにこの世を去った人々は驚嘆と賞賛をもって受け入れられたが、実は彼らは天国にはあと40億人しか入れないことを知っていたのだ。
#ツイッター小説 #一文SF

387

目の前にラブレターがある。3年間ずっと大好きだった人のラブレターが。ただ、宛名は僕じゃない。
「捨てといて」
あの日、彼女はただ一言そう言って無造作に投げ渡した。心を込めて書かれたそれは、全ての文字が愛の形をしていた。そんな物、僕宛でなくても捨てられる筈がなかった。
#ツイッター小説

388

「『ゲームに友達は付属しません』だってさ。いや、分かるよ言い分は。そりゃ人間同士でプレイした方が、笑ったり怒ったり殴り合ったりできて楽しいだろうさ。でも、これだけ長い時間一緒に遊んで、友達だと思ってたのが僕の方だけなんて」
CPはソフトの中で膝を抱えながら言った。
#ツイッター小説

389

「……月のうさぎ」
満月を見上げながら僕が呟くと、君は首を傾げた。
「飼いたいの?」
「いや、見えないんだなと思って」
「地球から見えるわけないでしょ?うさぎってこんなにちっちゃいんだよ?」
「テラフォーミングで月はうさぎ牧場になったけど、うさぎ模様はもう見えないな」
#ツイッター小説

390

空調という文化は存在しなくなった。今では季節ごとに快適に過ごせる緯度まで移動した方がよほど省エネルギーになるのだ。地表の全てが水没し、人類の全てが漂流するメガフロートの上で暮すようになった今では。
#ツイッター小説

391

サンダルを波打ち際に脱いで、白いワンピースの裾を気にしながら爪先を海に浸す。そこから4歩くらい歩いて、君は振り返った。眩しいような、切ないような笑顔だった。
「ね?言ったでしょ?『海に行っても私は泳げない』って」
朝日に照らされながら、水面に立つ君はそう言った。
#ツイッター小説

392

「知っているかい?人の手というのは、人の手を握るためにあるんだ。人は人の手を握ることで、より遠くまで手が届くようになるんだよ」
その言葉に、正面に立つ男は血混じりの唾を吐き捨てながら答えた。
「そいつは斬り飛ばされた自分の腕を振りながら言う台詞じゃねえだろ」
#ツイッター小説

393

「ふっふっふ、いいひっかけクイズを仕入れたぞ。これであのクラス一のモテメンをハメてやる」

「なぁ、お前ぱんつくったことある?」
「え?あるよ?」
「エー!?パンツ食べたことあるんだ!」
「…………」
「何故そこで黙る」
「俺だってなにも好き好んで……!あ」
#ツイッター小説

394

「おはよう」
映画館を出て、恋人の最初のひとことがそれだったから、私は赤面してしまった。
「バレてた?私が途中から寝ちゃってたの」
「いいんだよ。いびきをかかなければ寝てても。君はずっと大人しく寝てたよ」
「ずっと見てたの?それならどっちも映画なんて見てないじゃない」
#ツイッター小説

395

『人間と通常の言語で会話をし、相手の人間にAIだと見破られなければ合格』というAIの到達点を示すチューリングテストの場としてVRMMOは最適であったが、初めて合格したVRAIは、『人間はAIだと見破れなかったが、VRAIは相手がAIでないことに気づいた』という結果になった。
#ツイッター小説 #一文SF

396

「どうしたの?そんなに落ち込んで」
「……昨日、君の兄さんとお風呂に入ったんだ。傷だらけだった。俺は兄さんに憧れて彼みたいに強くなりたいと思ってたけど、『強さ』だけみて『理由』を知らなかったんだって」
「待って。お兄ちゃんとお風呂に入ったことについてもう少し詳しく」
#ツイッター小説

397

『シャボン玉が手を翳している間は割れなくなり、自由に操れる力』
それは、ほんの些細な力のはずだった。けれど、傷を負った大事な人を内側にしたそれは、銃弾さえも通さなくなり、際限なく膨張した。世界の内側と外側が反転し、宇宙の全てを押し潰した後、世界には2人だけになった。
#ツイッター小説

398

荷物をまとめる青年を男の子が見上げながら訊ねた。
「お兄さんは、なんで旅をしてるの?」
「探し物を探しているのさ」
「何を探してるの?」
「それを」
「?」
「世界のどこかに、俺のまだ知らない『見つけなきゃいけないもの』があるかもしれない。俺はそれを探しているんだよ」
#ツイッター小説

399

ああ、そうだとも!私は勇者と共に世界を救った賢者などではない!私は、ペテン師だ。魔法とは『信じる力』。だが、私の一族は魔力を欠いていてね。代々商人として生きてきた。……だが、『他人に信じさせること』ができたら?……心してかかれよ。私は1000年世界を騙したペテン師だ。
#ツイッター小説

400

会議は紛糾した。“書いた魔法を現実にする本”なんて、たった1ページでも高校生の私達には手に余る。
「そんな魔法、知らない人が間違って使っちゃったらどうするの!?」
「……そうだ!」

翌日、彼を呼び出した私は早速その魔法を使った。
“手に人の字を書くと緊張が解れる魔法”を
#ツイッター小説

ここまで読んでくれてありがとうございます。長かったでしょう?次の更新はまた100日後、折り返し地点の500回でお会いしましょう。


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