サンデーロースト

 日曜日。サンデー。完璧な日曜日というと、パーフェクト・サンデー。ルー・リードが「パーフェクト・デイ」という曲を歌っている。〈完璧な一日。公園に座ってサングリアを飲む〉という歌い出しだったと思う。ベルベット・アンダーグラウンドには「サンデー・モーニング」という曲もある。こちらでは、かなり憂鬱な朝という趣のある歌詞とスローテンポで幻想的なメロディが印象的だ。夢見心地の昼下がり、白昼夢。日曜日はサタデーナイトフィーバーの後の倦怠感のようなイメージを抱く。それも近代以降、いやもっと後のポストモダンの話かもしれないが。そもそも曜日というのも西洋のユリウス暦、ローマ神話からのもので、東洋には旧暦があって、あえて当てはめるなら占星術的な吉日とかだろうか。そういうものは子どもの頃から信じてなかったからよく分からない。完璧というからには何一つ悪いことの起こらない日だろう。日曜日は休日だから、それだけで完璧に一歩近づく。でも休みじゃない人にとって、その日が完璧になることはない。そうすると、完璧な日曜日は完璧な曜日ではないが、完璧な仕事日ではあるということになるだろう。でも、仕事が好きな人間にとっては、それは完璧な日曜日になり得る。人によって、完璧な日曜日は十人十色というわけだ。
 わたしは、甲本ヒロトを詩人として信頼している。ハイロウズにトヨタのCMで使われて超有名になった「日曜日の使者」という曲がある。〈このまま どこか遠く 連れてってくれないか〉から始まるあの曲だ。シャラララ ラララ ララだ。彼は君と語りかける。どこか遠く。思えば、キリストが復活する日曜日を祝日とするのに対し、日本だと彼岸を休みにする。神に祈りを捧げることと、死者とともに過ごすことはどこか似ているかもしれない。どちらも実体を伴わないものに対してとても厳かな気持ちを抱いているという点で。たぶん、わたしにとって完璧な日曜日は、まだ生の実感を楽しむ快楽へと浸る一日を想起することになるだろう。それは死というものを遠ざけておきたい、死に対する恐怖感の裏返しなのかもしれない。イギリスでは「サンデーロースト」という伝統料理がある。、日曜日の正午過ぎの昼食で、グレイビーソースをかけたローストした肉、じゃがいもに、ヨークシャー・プディング、ファルス、野菜の付け合わせ。これをパブで食べるのが彼らの楽しみになっている。わたしもイギリスに滞在していた時にこれを食べて大変気に入った。日曜に遅く起きて、着替えてパブに出かけてパイントのビール片手にサンデーロースト。この日曜日の始まり方がその日一日を幸福に過ごすための始め方だろう。その後は、読書しても公園のライブに行っても楽しく過ごすマインドになっているはずだ。

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