枇杷の木(びわのき)
3年前に剪定してもらった庭の枇杷の木が、かなり高くなっていた。
母に「伸びすぎているから少し切ろうか?」と尋ねたら、「実が育ってからでいいんじゃない?」と返事が帰ってきた。
「待ってたら、ますます伸びちゃうよ」
私はそう返して、主人に切ってもらうことにした。
長い枝が何本も庭に転がって、枇杷の木はすっきりして見える。
しばらくして夕飯の支度をしようと台所に立って、ハッとした。
枇杷の枝と、まだ青い実が花瓶に飾ってある。
心が痛くなった。
兄との思い出が、きっとたくさんあっただろう枇杷の木。
まだ命が繋がっている青い実を、私が切ってしまったことが、母はどんなに悲しかっただろう。
娘なのに、そんなことにも気がついてあげれなかった。
何も言わずに飾ってある枇杷の木が、悲しく見えた日曜日。
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