バッハから編曲技法を学ぶ
バッハのorgelbüchlein(オルガン小曲集)
コラール前奏曲としてのこの小曲集にはインベンションとシンフォニアに匹敵する小宇宙が展開されている。
元々のコラール"Das alte Jahr vergabgeb ist BWV 288"(写真1)も素晴らしいんだけど、そのコラールをもとに作曲(編曲というべきか)されたオルガンのための小曲集orgelbüchleinのやつがすたこら楽しい。(写真2)
シンプルなla,si,do,reの上行型ソプラノ旋律に対する非和声音の巧みな扱いもさることながら、その半音階進行が全体を統制していることに驚かされます。(黄マーカー部分)
和音の拡張と半音階旋律の水平的試験とでもいいましょうか。。
赤枠でしめした部分全体はもはや音の配置技術の塊。
反行型や16分音符で施された芸術的変容がみられます。
もとのコラールと比較してくださいね。
緑色でマークしたfa♯とfaの"対斜"(※注1)も見逃せません!(東京藝大入試2次試験バッハ様式コラールの作成の勉強で必須の研究要素になります。コラールだけじゃなく、バッハの様々な作品を見ましょう〜)
現代耳からすると普通かもしれないけど、このバッハの時代を考えたら、こんな音使いすんのすごくないすか。これが1世紀近くのの時を経てワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのエロスに繋がるという…(笑)
自然に聴こえるための限定事項が普遍的にあって、それを逸脱したスリルを楽しむ感覚も生まれながらにして得ているこの人間の聴感覚の不思議さ。
編曲のおべんきょも、バッハでできちゃいますねー。
注1)対斜...半音階進行を作る二つの音が、違う声部に置かれることです。和声の教科書的にはには禁則とされています。
(旋律の一貫性が曖昧になるためです。)
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