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ハッとする和声②(西洋音楽ロマン派編)

シューマンの連作歌曲、(Myrthen Op.25 / Schumann,Robert)より、
第24曲【Du bist wie eine Blume (Heine.)】

変イ長調。和声法の観点だけ見ていきます。
注目すべきところは4つ。(和音数字の分析画像もつけてます。)

<画像水色囲み部分 ※① 7~8小節目>
属調である変ホ長調のドミナントの結合(Ⅰ度和音の2転とⅤ度和音の結合)に入る転調部分に注目。
この部分の手前、7小節めのところで・・・転調先である変ホ長調のⅤ度和音(属和音)に対するドミナント(ドッペルドミナント=Ⅴ/Ⅴ7)が配置されていて、スムーズな転調への導入がとても自然で美しい。さらに特筆すべきは、この部分のドッペルドミナント、通常のドッペルドミナントではなく、和音構成音のうち第5音が下方変位(根音よりも減5度になっていること)していて、かつ、短9(♭9)のテンションノートが付加されていて非常に緊張感のある響きになっている。


<水色囲み部分 ※②16小節め>
8分音符2拍めの裏拍(16分音符のファ♭)の経過音。この経過音がファのフラットになることで偶成的に同主短調のⅡ度和音(シ♭レ♭ファ♭ここでは準固有和音という名称になります)が響いている。サブドミナントマイナーを同主短調から借用することで、長調(メジャーキー)の世界観に一瞬の陰りをもたらす効果がある。

<水色囲み部分 ※③18小節め>
8分音符2拍めと3拍めで一つの和音、Ⅵ度和音に対するドミナント(V7/Ⅵ)になっている。つまり、この小節の8分音符2拍めのバスが3拍めの和音の根音に対して倚音(レ♭)→ドとなっているため、この部分で弱拍と強拍が裏返ったように聴こえるところが面白い。(補足:倚音は非和声音の一種であり、本来強迫から弱拍へ和音構成音に対して緊張と緩和を作用する音のため、強迫と弱拍の置かれ方が裏返しのように聴こえるということ。ある種のアクセントと捉えてもよいかもしれない

<水色囲み部分 ※④19小節め>
Ⅵ度和音とⅡ度和音(第1転回型)に対して倚音がついている(オレンジマーク部分)とくに、Ⅱ度和音の部分の倚音、ラ、ド、ミ♭、が、Ⅱ度和音に対するドミナント構成音になっていて、倚音を施すことで瞬間的にドミナント→トニック(Ⅱ度調のⅤ→Ⅰ)が聴かれるところも、シューマンらしい細やかな和音装飾の芸術を見ることができる


18小節のⅥ度和音に対するドミナント和音(いわゆるⅥ度五度)


小曲だからと侮るなかれ。
こんな短い歌曲でも、凝縮された芸術を聴くことができます。
みなさんもぜひ作曲法・和声法の学びを名曲から掘りあててみてください〜

ご参考までに~^^

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