大喜利茶屋の回答、偶然現実にあること拾っちゃう説3

大喜利サイト「大喜利茶屋」で出題されたプロレスお題に対する回答を「実際のプロレスの出来事」に照らして検証する記事、第3弾です。第1弾、第2弾もぜひご覧ください。


今回は8月29日出題の「とんでもない新人」について検証します。

分かる、聞き取りづらいよね

まずはこちら。バラエティやモノマネタレントのネタなどで元プロレスラーの事を認知している人のイメージで上位にくる要素かもしれない「滑舌」。長年のチョップを喉元に食らった影響で声が枯れてしまっているパターンや、ちょっと舌足らずな感じになっているパターンと、いくつかあると思います。

たとえば前者のパターンで特徴的なのは天龍源一郎さんや、現役でいえば新日本プロレスの本間朋晃選手でしょうか。

滑舌…といって思い浮かぶのは長州力さんや、お馴染み「炎の飛龍」こと藤波辰爾選手。前回解説した、師・アントニオ猪木に世代交代を訴える「飛龍革命」は、興奮のあまり聞き取れない部分も多く、特に張り手を食らったのちに張り返す瞬間の言葉はユリオカ超特Qさんによると「モイスチャーミルク配合です」と言っているそうです。

個人的には、長州VS橋本戦を止めた「ドラゴンストップ」の方がかなり凄いのでこっちも見てほしい。

また、大人気ゲーム龍が如くでは、実写キャラとして現役レスラーや往年のメイレスラーが登場しており、龍が如く極2では藤波・天龍・長州・武藤・蝶野が登場。ミニゲームで主人公が彼らと会話するゲームでとんでもないのが出ます。

字幕なしで3人の会話を聞き取って正しい相槌を打とう! じゃないんだよ

武器は色々

続いてはこちらの回答。プロレスといえば凶器攻撃というのも要素の一つ。基本的には反則ですが、(様々な理由で)レフェリーが見ていなければ反則裁定は取れませんし、凶器ありのルールや、そもそも凶器でハードにお互いを傷つけ合うデスマッチもあります。

フォークを食器として認識していない、ということはおそらく「凶器」として常に認識している新人、どうやって育ってきたんでしょう。
フォークといえば浮かぶのはそうですね、アブドーラ・ザ・ブッチャーですね。

ブッチャーは1941年に生まれ、21歳でデビュー。アメリカマットや日本では全日・新日のどちらのリングにも上がり、世界を股にかけて長い活躍をした悪役レスラーです。

1977年、全日本プロレスでの対テリー・ファンク戦において、フォークを取り出して相手の腕に突き刺し、凄惨な流血マッチとなりました。当時の試合について関係者が振り返る記事もあったので詳しく知りたい方はご参照ください。

続いてはこちらの回答。これもどうやって生活してるんだ。
プロレスの凶器としてイメージされるのは竹刀などの長物や、パイプ椅子がパッと浮かぶところかと思いますが、自転車が試合に出てくることなどあるのでしょうか?

答えはもちろん「あります」

「文化系プロレス」を掲げ、路上プロレスや人形「ヨシヒコ」が所属したり、プロレスの可能性を広げまくっている、DDTという団体の社長でり現役レスラーの高木三四郎選手は、戦闘自転車「DD号」を凶器として用います。基本的には自転車に跨って相手を轢くという使用法ですが、誤って椅子の山に突っ込む、奪われて逆に轢かれるといった悲劇も多数。

ちなみに今度は新幹線の車内でプロレスをするそうです。
鈴木みのるが「285km/hで115km/hのパンチを打てば400km/hのパンチだ」と述べており、「プロレスに相対速度の考え方ってあるんだ」と筆者は思いました。


レスラーから政界へ

続いてはこちら。「逆に」という接頭辞からプロレスへの造詣が深い方なのではとお見受けします。
プロレスラー→政治家への転身はかなりの例があり、著名なのはやはりアントニオ猪木でしょうか。1989年にスポーツ平和党を結党し、参議院議員選挙に当選。その後2期目も当選を果たしたのち、党内の紛争やスキャンダル報道を受けて落選。2013年に維新の会から再出馬し、計3期勤めました。出馬当初のキャッチコピーは「国会に卍固め、消費税に延髄斬り」。ちょっと今見ると面白すぎないか?

政治家としての実績が一番大きいのは現・石川県知事の馳浩でしょうか。
元教員というバックグラウンドを持ち、戦う国語教師の異名も取った馳は1995年に森喜朗のスカウトで参議院に出馬し当選。現役レスラーを続けながらその後2000年に衆議院へ鞍替えし当選したのち、2005年にレスラーを引退。その後も国会議員としてのキャリアを積み重ね、2015年に文部科学大臣に就任。昨年、石川県知事選への出馬を表明して議員辞職し、見事当選を果たしました。

そんな馳ですが、2023年1月1日、プロレスリング・ノアの日本武道館大会においてサプライズ登場。得意技であるジャイアントスイングを現役選手相手に20回転繰り出し、最後はノーザンライトスープレックスでピンフォール勝ちを収めています。
ちなみに筆者は、その後の県議会で出場を咎められた際に「私は死ぬまでプロレスラーだ」と答弁したのにサイコー痺れました。

その他にも国政や地方議会で出馬・当選した議員は結構いて、大仁田厚、神取忍は参議院に、新日本初期に活躍した木村健吾は品川区議、90年に新日本デビューした西村修は文京区議を務めています。

また、筆者の故郷岩手でも、「東北の英雄」ザ・グレート・サスケが岩手県議会議員を1期務めました。マスクマンとして出馬し、当選後のマスク着用を巡って全国的なニュースにもなっています(色々揉めた結果、「議会用マスク」を作ることで決着)。あー、なんか、「サスケはすごいんだぞ」の話もしたくなってくるな…

民族の誇りを背負って

続いてはこちらの回答。マスクと見紛うほどの刺青を新人が入れてたらそれは本当にマジでヤバいですが…「刺青」という言葉にかけて2人のレスラーをご紹介したい。

まずはそのまま「刺青獣」という称号がつけられたクラッシャー・バンバンビガロ選手。1980年代に新日本のリングに上がり、猪木の新たなライバルとして活躍。その巨漢とスキンヘッドに入れたタトゥーがファンの目に衝撃を与えました。
芸人のもりやすバンバンビガロさんは絶対ここから名前を取ってる。

インターネットにはビガロの透過画像が転がっている

もう一人は、現在新日本プロレスリングに所属している、HENARE選手。
ニュージーランド出身で、2016年に新日本デビューし、継続参戦しています。
団体内では多国籍ユニット「United Empire」に所属するHENARE選手ですが、今年の夏のリーグ戦「G1クライマックス」にて、これまでとは全く異なる風貌で登場しました。

右が現在

スキンヘッドに、顔に施したタトゥー。リングネームも「アーロン・ヘナーレ」から「HENARE」(へナレ、と短く発音する)に改めたのです。

インタビューによれば彼はニュージーランドの先住民族マオリにルーツがあり、その文化である「マタオラ」を入れたとのこと。マオリ族は顔に刺青を入れる文化が古くからありますが、男性で顔に刺青を入れたマオリのスポーツ選手は彼が初めてなんだとか。

ギミックではなく、故郷の歴史、一族の歴史を背負って挑む覚悟が伝わってきます。これから人生の過程と共に、刻むマタオラは増えていくとも語っているので、いつかその顔が覆われる時がくるかもしれません。


伝説の一戦

最後にご紹介するのは、1位を獲得されたこちらの回答。

前回も毒霧についての回答がありましたが、こちらはまた違った角度でヤバさを感じさせる回答です。そういえば毒霧の説明を前回しておりませんでしたが、毒霧というのは、一部のレスラーの口から出てくる、毒の霧です。

こちらの回答もなんと、今年まさにプロレス界で実際に起きています。
2023年1月1日、プロレスリング・ノアの日本武道館大会(さっきも出ましたね)のメインイベントとして、グレート・ムタ引退試合、VS中邑真輔戦において行われました。

グレート・ムタというのはアメリカで誕生した武藤敬司の別側面で、世界的な人気を博したペイントレスラー。他方、相手となる中邑真輔は、新日本プロレスでデビューしたのち、アメリカのWWEへと移籍。長年タイトル戦線に絡むスーパースターの一人です。

WWEというのは非常に権利関係に厳しく、契約中の選手は基本的に他団体の試合に出ることはまずありません。中邑も新日本を去って以来、WWE以外のマットに上がることはこれまでありませんでした。世界の新旧スター選手が最初で最後の邂逅というこのカード、元日からプロレスファンにとっては最高のお年玉というほかありません。

毒霧はグレート・ムタの得意技の一つでもあり、この試合においても繰り出され中邑を苦しめます。一度ならず二度も毒霧を浴びせ、必殺技の閃光魔術に繋げるなど猛攻をかけるムタ。

追い込まれた中邑は終盤「口移しで毒霧を奪って吹き返す」という驚きの攻略法を見せます。組み合ったと思いきやすかさず唇を奪い、吸い取った毒をムタに発射!視界を奪われた所に必殺技のキンシャサを見舞い、勝利を収めました。

飲ませた、のか飲まれた、のかはさておき、またも1位回答がプロレスの史実に存在していました。どれだけプロレスの世界は広く、深いのかを教えてくれるかのようです。

いや〜奇しくも第二弾、第三弾とも武藤敬司で〆ることになるとは…
また、プロレスお題が出たら書くかもしれません。

プロレスって、知れば知るほど楽しくなる格闘芸術なのでみんな見てください。

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