良い子のところにサンタさんは来る
クリスマスが近くなると、世の子どもたちは親からこんなことを言われる。
「いい子にしてないと、サンタさんは来てくれないよ」と。
とある街で暮らす美鈴もそのうちの1人だ。明日はクリスマス。彼女はプレゼントのため、その日まで「いい子」を演じ続けていた。
面倒な宿題やお手伝いをこなし、『ゲームは1日1時間』の決まりも守り、夜はきちんと9時には寝る。両親は「感心、感心」と言いながら美鈴を褒めた。
美鈴は24日の夜、サンタさんに手紙を書いた。内容は「プレゼントはうさぎのぬいぐるみがいいです」というものだった。サンタさんのためのクッキーとミルクも用意し、その日はいつもより少し早く眠りについた。
🎅🏻
美鈴は物音で目が覚めた。誰かが足を擦って歩いているような音だった。
「サンタさんかもしれない」と美鈴は思った。見てはいけないような気がする。しかし見てみたい。美鈴は興味本位でうっすらと目を開いた。
ぼんやりと見えたそれは、確かにサンタさんだった。赤い帽子と服、白い髭、恰幅のいい体格。誰がどう見てもサンタさんだった。
もっとしっかりと見てみたいと思ったが、眠気には適わなかったのだろう。それが本当のサンタさんかどうかを確かめる前に、いつの間にか夢の中へ誘われていた。
耳元で、やけに発音の良い”Merry Christmas”が聞こえた気がした。
🎅🏻
25日の朝。毎年のように朝の6時には目覚める美鈴だが、今年はまだ9時になっても起きてこない。
「美鈴、いつまで寝てるの?いくら冬休みだからって、もう9時よ!そろそろ起きなさい!
全くあの子は…いつまで1人でプレゼントの喜びを噛み締めているつもりなのかしら」
リビングに母親の呆れた声が響く。
ベッドの上には美鈴の姿はなく、ただ、雪のように真っ白な愛らしいうさぎのぬいぐるみが転がっているだけだった。