カニカマという食べ物の切なさ
ふと、「カニカマというのはなんて切ない食べ物なのだろう」と思った。
カニカマは蟹に強い憧れを持っている。彼らにとって蟹はスターだ。自分もかっこいい蟹になりたくて、だから自分の身体を朱に染めて、蟹になった気分を味わっている。そしていつかは自分も蟹になれる日が来る。そう信じている。
でも所詮カニカマはカニカマだ。お正月シーズンにスーパーの広告に大々的に載ることもなければ、おせちやお寿司など縁起物の仲間たちと一緒にアー写を撮ることもない。蟹は蟹専用のコーナーを作ってもらえるが、カニカマは他の練り物の仲間たちと一括りで並べられてしまう。さぞ「お前らと一緒にされたくない」と思っていることだろう。カニカマがソロデビューする日はまだまだ遠い。
カニカマにとって何よりも悔しいのは、いつまで経っても本物の蟹にはなれないことだと思う。「まるで本物の蟹みたい!」と言われることはあっても、「すごーい!このカニカマ、身がぎっしり詰まってて濃厚!」と言われたことは無い。
可哀想なカニカマ。私が美味しく食べてあげようじゃないか。「お前はちゃんと蟹なんだよ」と言いながら。