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装ひ堂のブックレビュー

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既読本のレビューをのらりくらり。
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#幻冬舎文庫

『去年の冬、きみと別れ』/中村文則著

推理小説というものは一般的に、物語に於ける起承転結の結部がわかりやすいと思っている。 乱暴に言ってしまえば、大広間に関係者を集めて「この中に犯人がいます」と、探偵に宣言させれば良い。 しかし今作に於いては、そのセオリーが通用しなかった。 起承転結の結は、どこが始まりだったのだろう…? 自分が今読んでいるこの描写は、もう伏線の回収に入っているつもりで読んでいいのか、それともまだ、転部が続いているのか…読みながら私は、とても不安だった。 不可解で曖昧な狂気に満ちた

はぶらし/近藤史恵

脚本家の真壁鈴音のもとに、高校時代の友人、古澤水絵が転がり込んできた。 DVを受け離婚、仕事もリストラされた水絵は行くところがないから、息子の耕太と共に、一週間だけ鈴音のマンションに置いてくれと言う。 しかし、一週間の約束が、また一週間延び、更には…。 ……………………………………… 私は決して友達が多い方ではない…と思う。 友達という存在は不思議なもので。 学生時代に、何年も同じクラスで過ごした人もいるはずなのに、今も付き合いがあるのは、3年間同じ高校には通ったけれど