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装ひ堂のブックレビュー

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既読本のレビューをのらりくらり。
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#文庫

『去年の冬、きみと別れ』/中村文則著

推理小説というものは一般的に、物語に於ける起承転結の結部がわかりやすいと思っている。 乱暴に言ってしまえば、大広間に関係者を集めて「この中に犯人がいます」と、探偵に宣言させれば良い。 しかし今作に於いては、そのセオリーが通用しなかった。 起承転結の結は、どこが始まりだったのだろう…? 自分が今読んでいるこの描写は、もう伏線の回収に入っているつもりで読んでいいのか、それともまだ、転部が続いているのか…読みながら私は、とても不安だった。 不可解で曖昧な狂気に満ちた

『黒後家蜘蛛の会1』/アイザック・アシモフ著

世のミステリ好きにとって、ココロオドル単語がいくつかあると思う。 嵐、吹雪、館、山荘、孤島、マザーグース、わらべうた、見取図、見立て、倒叙、クローズドサークル… そして、安楽椅子。 私がこの本を初めて手にしたのは十代の頃だ。 そして、安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)というジャンルのミステリを知った初めての作品だったと思う。 正直、かなりの衝撃だった。 まず…『安楽椅子とは何ぞや?」である。←そこ?(;゚д゚) いやいや、十代半ばの知識には『椅子』は『椅子』