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ONE VOICE ZINE vol.2 加川大志郎(unklet,ex-TURNING CENTER,ex-gotta move this site)


vol.2はunklet,ex-TURNING CENTER,ex-gotta move this siteの加川大志郎さん(https://twitter.com/d4r)にお話を伺いました。僕が前のバンドをやっている時に知り合い、当時Twitterで色々書いていた事に関心を持っていただき、間も無くして、自分にとっては結構異例なのですが、2人で飲みに行ったりしたのですが、その時に今回の内容のような音楽や諸々の話をしていて、その内容が文字起こししたら面白いんじゃないかと思ったのが今回、というかONE VOICE ZINEの発端だったりします。そこから月日も流れ、自分も色々と迷走した挙句、改めて2020年に同じような話をすると、一体どんな内容になるのか?今回は音楽だけじゃなく、仕事の面からもリアルな目線で切り込んで頂きました。インタビュー/対談のミックスみたいな内容になっていますが、おじさんたちの会話として、ご一読いただけると幸いです。


◾️unkletと5年の歳月 

ーどうですか最近?バンド(unklet)の方とか。

今バンド止まっちゃってて。

ーどんな編成なんですか?

ドラムが僕と同世代で元Enforceです。2000年前後に当時やってたバンドでよく明大前のガードアイランドスタジオを使ってたんですが、Enforceのギターの、後に54-71に加入したタクちゃんが働いててバンド単位で仲良くしてもらってたんです。当時はドラムの子とはそこまで話したりはしなかったんですが、10年ぶりくらいにFacebookで再会したら美容師になってて、髪切ってもらうようになってそこから...って感じです。あとはちょっと下の世代で、ここ数年でライブハウスで仲良くなったCrepuscular Raysて叙情系ハードコアをやってたベースと、その子の紹介で知り合ったarcheってバンドのボーカルです。


ライブ一回やってみて、ここからどうしていくかな...ってときに、年長組との年少組のギャップが結構あって。僕が預かって曲作っていくことにしたものの、そこから形に出来てない状態です。年少組はガッツリとハードコアというか様式美な感じなんですが、年長組が20代のころってハードコアなんだけど「わけわからないことやってやろうぜ」っていう風潮が強かったんですよね。そこの溝をどうやって埋めたものかなと。ちなみにFood of ThoughtとかWiz Own Blissのミツくんも明大前に住んでて、いろいろ教えてもらってました。一時期Kornみたいなバンドを一緒にやってたんですよ。最近の20代のほうが当時に近い「テンプレに嵌めずにやる」を志向する人が多い感じがしてシンパシー感じたりするんですけどね。 

ー「ジャンルを限定したくない」みたいなのは聞きますね。

明日の叙景のギターのけーしー君がアイドルに曲書いたりとか。ああいうのを見てると「敵わないな」ってなります。

ーvol.1でも書いてるんですけど、こういう話って案外遺ってないじゃないですか。バンドやレーベルだったり、ある程度の人のインタビューとかは遺っているけど、ハードコアは少ない方、というか遺ってない方だと思うんですよ。そこで音楽の話はそこそこに、人間の話みたいなものを集めていこうと思っていて。

なるほど。面白そう。

ー5年ぐらい前に飲みに行ったじゃないですか。そこで今回やろうとしている内容みたいな話をした時に、加川さんが「これ文字起こししてアーカイブしたら面白いのに」みたいな事言ってて。それもヒントになって、 今回、加川さんに白羽の矢が立ったわけなんです。あれから年月も経ったし、改めてどうかな?と。加川さんは一貫して音楽や生活に関して考えてるなと思って見ていたんですが。

色々止まりましたけどね。当時の僕ってTurning Centerやってないですよね。

ーですね。あの後ですね。

その時40手前ぐらいで、30手前ぐらいの子達のバンドに入って。楽しかったんですけど合わなくなってクビ、と...。

ー書いちゃって大丈夫なんですか?

まあ、僕は別に(笑)僕がバンドの進め方に我慢出来なくて口出しすぎた感じはあったので、切り出されたときも「まぁそうだよね」って感じでしたね。「辞めて欲しいんですけど...」「うんオッケー」ぐらいの軽いノリで。僕のほうも扱っているテーマ的なところでの違和感が拭えなくなってきてたんですよね。今の日本で"労働者階級"としてパンクバンドをやるってどうなんだろう?って思うようになっちゃって。ブルーカラーホワイトカラーが生まれで決まっている時代でもないのに、日々の仕事は心を殺して淡々とやって、週末のバンド活動で会社から搾取されてる感とか世の中に対してのヘイトを表現して...というのを自分ゴトにできなくて。

40になって仕事の裁量を持つようになると、現場の若い子に対して「どうして小さくまとまってるの?」「もっといいやり方があるなら変えれば良いじゃん」「なんで変に忖度してるの?」みたいに思うことが多いんですよね。その感覚をバンドにも持ち込んじゃったという...。

世代的な事もある気はしているんです。僕らは就職氷河期世代で、苦労はしつつもやりたい事ガンガンにやってきた世代だし、やらざるをえなかった世代なんですよ。そのせいもあって下の世代には「甘い」「弱い」と思ってしまう事が多いんですよね。 これは仕事でもなんですが。

ー予防線の張り方が上手いとは感じます。そこからの突破力が人によるけど弱いと言うか極端というか。

上手くいかない、突き抜けられないっていうのは、もしかしたら、ゆとり教育の影響もあるのかなって気もしてます。「怒られない正解」を探しに行く姿勢に対する違和感や嫌悪感はありますね。2000年ぐらいのハードコアって、きっと本来的なハードコアではないんですよ。でもEVERLASTのやきそばくんがヴィジュアル系みたいな格好で歌ってたりとか、Gauge Means Nothingがギターシンセを入れてやりたい放題やってたとかは、精神的な意味ではハードコアだったんじゃないかなと。あの当時の「このままで良いのか?」という自問自答する姿って、今の20代の子たちがバンドサウンド以外のところで表現してることに通じる気がしています。そうするとやっぱり、パンクとかハードコアって名乗ってるのに"答えを探し に行く姿勢"みたいなのは引っかかりますね。

ー2000~10年代に多感な時期を過ごした世代は、ハードコアやメタルコアに限った話なんですけど、2000年代に色々やって来たのを過去として見た時に、それ以前の80,90年代が正解のように映ったんじゃないか、 10年代の後半に80年代90年代リバイバルが来たのが、その証じゃないかなと思うんです。だからブームが繰り返すみたいな事が起きてるような気がします。そうなると今の20代みたいなフォーマットに依らないスタイルになるんでしょうね。

観測範囲が変なのかもしれないですけど「わけわかんない事やってやろう」とする人が楽器を演奏するってスタイルを選ばなくなっている気がするんですよね。「歌ってみた」とか「弾いてみた」カルチャーがウケているのとか。最近だと軽音楽部に入るにもオーディションとかあるらしいですからね。アニソンとかも、バンドサウンドだけどやっている事が案外懐かしいものだったりして。「それ2020年にやるんだ?!」みたいな。そりゃ尖った子は違う方向行くよね...と。生の楽器でやるものが"リア充"のものになっているような感じがします。 昔は、特にハードコアバンドなんて、型に嵌れない、色んなところがはみ出した人達が集まってやってた感じがあったじゃないですか。ハードコアって型にも嵌れなくなった結果の一つが、前の世代で言うと54-71だったりdownyだったりするんじゃないかなと思います。あとはsome of us(かつて渋谷にあったポストロ ック等を扱うレコードショップ)で扱ってたものとか、BATTLESみたいなシカゴ音響派じゃ無いポストロックとか。親和性はあるんだけど、ハードコアやバンドサウンドでは無く格好良いものって言うと。

ー肉体的なものから非肉体的なものになっていく流れみたいなものは流れとしてありますね。過去の傾向に、これも型に嵌っちゃってますけど、パンクからポストパンクに行って、NO WAVEかNEW WAVEに行くかみた いな事なんでしょうか。そんな系譜はありますね。

そういう人たちが歳取って初期衝動に戻ってくる傾向はありますけどね(笑)

ーある種バンドがおじさん達の同窓会ツールになってる感はありますよね。自分も他人の事は言えないですけれど。良い事だとは思うんですけどね。


■生い立ちからバンド活動まで

ーそれではこの辺で気分を変えて、生い立ちなんかを聞いて行こうかと。

神奈川県大和市出身です。暴走族しか名物が無いような。

ー高座渋谷のハードオフが閉店する事ツイートしてましたよね。

そうなんです。帰ってないと、どんどん変わって行きますね。藤沢町田線っていう町田から藤沢まで南北に 小田急江ノ島線と併走する道路があって、僕が居た頃は土日の夜はエレクトリカルパレードでした(笑)いちょう団地っていう80棟ぐらいある結構なマンモス団地に住んでたんですが、ベトナム戦争があった頃に移民の受け入れをやってたところで。なのでクラスに3人ぐらいはカタカナの名前の子がいるような環境でした。 今はいちょう団地の祭りが東南アジア系の人達で国際色豊かになってるそうで、好きな人達が遠くからも集まって来るそうです。

※いちょう団地はアジアンフードが好きな人は検索だけでもする価値があります。

ー恒例の質問なのですが、初めて買った音源は?

CD じゃ無いんですよ。テープ。ジャスコで売ってた本人が歌ってないアニソンの寄せ集めだったはず。はじめてアーティストを意識して買ったのは TM NETWORK です。

ー音楽を始めようと思ったきっかけみたいのは?

ギター自体は中学から弾き始めて、最初はB’zとかから、ヤングギターに載ってるような HR/HM に興味を持つですが、速弾きとかできなくて。そんな中で HELMETに出会ってドロップDチューニングを覚えて、そ のあとにミュートマ(※ミュージックトマト、tvkで放送されていた音楽番組)...当時だとビデオ星人(tvkの音楽番組)だ、それで KORN の"blind"を聴いて何だこれ!って衝撃を受けて。ちょうどその頃大学で音楽サー クルに入って、COCOBATとヌンチャクを教えてもらって、そこから日本のバンドも買い漁って...って感じですね。NU METALって言われる前の Heavy Groove とか言われてた時期でしたね。そこからサークルに馴染めずに学校の外でメンバー探しだして、初めてオリジナル曲でライブやったのが Food Of Thoughtのボーカルとドラムとやってたバンドです。その縁でFood Of Thoughtのライブによく行くようになって、 ギグアン(渋谷 Gig Antic)に入り浸って、なんとなくハードコアってこうなのかな?ってわかるようになっ て、それが大学2年ぐらいですね。

大学4年くらいの頃、友だちのバンドのデモテープをレコーディングしたり、ヘルプでギター弾いたりしてたんですが、そのバンドのギターが抜けて方向性変えるってタイミングで入れてもらったのがgotta move this siteです。

gotta move this site

リーダーがFIVE KINDS SQUAREとか好きで、僕は当時全然わからなかったんですけど (笑)スタジオライブをやったりして、ジャンルというより、アティテュードとしてのハードコアが分かり始めたのはその辺ですね。gotta move this siteは社会人 2,3年目ぐらいまでやっていました。スタジオライブができる場所を探してたら、当時勤めてた会社の先輩が「実家がスタジオやっている」とか言い出して (笑)それが今は亡き大塚 Boonっていう、THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUTが使ってた伝 説のスタジオなんですよね。そこで繋がるんだと思ったりしました。



■ライブハウスやお金の話

ー今(2020年7月)ってコロナでライブするにも入場数を絞ったり、配信したり、ライブハウスでは寄付を募っ たり各々やっていますよね。こんな状況になってしまったから...というのはあるんですが、もしかしたらライブハウスや界隈の環境って、前から何かしらの形で出来たんじゃないかと思うんです。そういった今の環境についてどう思いますか? 

そもそもライブハウスの数が沢山あって、ノルマ制みたいなものは変えられなくて。それでもアイドルがライ ブハウスでやるようになっていったのは面白いなとも思うんですよね。そこは好意的に見ています。

ー僕もその辺りを考えていて。バンドを組んでライブをしようとなったら、まずライブハウス、じゃなくても良いんじゃないかと。スタジオライブだったり、自分達で機材を持ち込んだり借りして。騒音とか問題は沢山ありますが、そこが増えても良いと思うんです。そこから、もう少し規模が大きいものをやろうとなった時にライブハウスとか。その方が互いのためになるんじゃないかと。

去年の11月に渋谷HOMEで企画したんです。すごい良かったし、整った環境でどう音を出すかはプレイヤーとして重要だなって改めて思ったけど、個人的にスタジオライブ大好きなのと、自分でPAやったりレコ ーディングやったりもするので、そこまでの設備じゃなくても良いなと思うところもありますね。(ライブハウスの)キャパを適切に埋められないならオーバースペックだよなと。 

ーライブハウスに人がいっぱい入っているように見えても、実際はその日の出演者 6 バンドとかで溢れてたりするじゃないですか。それってどうなのかなと考えてしまうんですよ。とはいえ外に溜まるわけにもいかないし、楽屋もそんな人数を入れておけないし、これはこれで良い面もあるしで、一長一短なのですが。

うちの会社、社長を筆頭にバンドマンとか元バンドマンが多いんですよ。去年の新卒の子とか「割と本格的にバンドやってる子が入るよ」って入社前から情報が回ってたりして。最近その子のライブを観に行ったんで すけど、平日なのに、出演バンドそれぞれに 5から10 人ぐらい、明らかにバンドをしていない客が付いてるんですよ。それって凄いことだなと。その子は今はそのバンドやめて打ち込みで曲作ってサブスクで配信してます。食べていくまではいかないけど、機材代ぐらいは賄えてるみたいです。

ーいかにも今の稼ぎ方とか在り方と言う感じですね。

ライブをやってどこまで客を入れられるか?というか、入れたいと思ってやるかなんですよね。ライブハウスどうあるべきか?問題にセットで繋がるんですが。ノルマ制にしている時点できつい部分はあるんですよね。

ーちょっとでも良いので、やるからには何かプラスにならないといけないと思いますよね。

バンド形態の音楽だと、ハコに客が付くっていう文化が弱い気がしますね。ジャンルによるんでしょうけ ど。クラブミュージックっぽいのだと付いてたりしますよね。客側がジャンルじゃなくてバンドで見てしまってる部分がありますね。海外バンドの来日とかがそんな感じが。

僕が歳取ったからなのか、3バンドくらいでお腹いっぱいになっちゃって。同じような感覚で、実はサクッと終わってサクッと帰るぐらいの方が敷居が下がるんじゃないかって気もしてます。
この間(unklet 企画)やった時は昼間に 3バンドでやってサクッと終わって...って考えてたんですよね。めちゃめちゃ影響を受けたスタ ジオライブみたいに、徹底して演者と客を分けたくなかったんです。渋谷 HOME ってお酒が充実していて、 その日はフードも入れてたので、なんなら 1 人で来て 1 人で飲んで帰るぐらいの空間にしたかったんですよ。どっちが良いってわけでもないんですけど多様性として。

ーどちらも必要性はありますよね。

それこそオモチレコード界隈とか、ハバナイ(Have a Nice Day!)とか、やめちゃったけどNATURE DANGER GANGとか、ちょっと違うけどVMO界隈とか、あの辺に来てる人が昔で言うギグアンに来てた人 たちなんでしょうね。

ー現にその辺りにいた人達がハマっていったりしていましたしね。熱量的に近いものがあるんでしょうね。その 一方でハードコアが"こうあるべき"というのに嵌っていったように個人的には感じていました。これも良い悪いの話では無いので難しいのですが...。

そういうのを求めている人の居場所がハードコアじゃ無くなってるなという気がします。ライブハウスの形態やビジネスモデルの破綻の話と、パンクやハードコアのタコ壺化、二つあるんでしょうね。


■ドネーションや bandcamp など

ーその一方で最近はハコやイベントやバンドに付いた客によるライブハウスへのドネーション(寄付)とか配信ラ イブとかが活発になってきていますよね。

それどう思います?ライブハウスのとか。

ー演者として出たところには些少ですが。個人的には何で前からやらなかったなのかな?とも思います。寄付は別の問題として、物販、グッズ販売の面だったり配信ライブだったり、拡げる方法はいくらでもあったんじゃないかと。今さら言っても仕方のない事だとは重々承知しているんですけどね。

なるほど。僕は真逆なんですよ。余計な物品いらないよ。普通にお金だけ出すよ!と思うんです。本当にヤ バいんだったら何かしらに人件費払う前にお金出すよ!と。何らかの物品が絡むと、その物品に対しての高い 安いって判断になるんですよね。

ーああ!それですね!物品が絡むから変に考えてしまうのか...。

bandcampのNAME YOUR PRICEが良いのってそこなんですよ。いくら払うの?と突き付けられるの で。こっちが試されるじゃないですか。これが現代のパトロンなんだ、アートって結局パトロン制が性に合うんだ、と。中世ヨーロッパでは大金持ちの貴族が1人でやってたことを、今は無数の人達が出来るように変わっただけだと思います。ライブハウスのドネーションは物品挟まずにやるのが正解なんじゃないかという気はしますね...。これで例えばコロナがインフルエンザ並みになったら、コロナ前のビジネスモデルに戻るのか? といったら、きっとそうじゃないでしょうしね。

ー個人的にはバンドはまた別として、ライブハウスだったらグッズ販売とかしていって、配信とライブの二輪で 行って欲しいと思うんですけどね...。

もう少し何か出来ると思うんですよ。それがハコの企画力とかになるんでしょうね。それで「おっ」となる のは小岩 bushbashですかね。ただ遠いんだよな...。

ー小岩っていう立地以外は構造も凄く良いですしね(同じく遠い)。ハコ企画が面白いのはつくつづく大事だよなあ。 今までの在り方プラス何か業態を変えていった方が良いと思うんですけどね...。

僕らの仕事じゃ無いこともあって、ライブハウスに携わってる人に寄り添ってないとは思いつつ...。平日は レコーディングだったりPV撮影用だったり、何かに特化しながらの割り切りでも良いんでしょうね。何にお金を払うか悩む世の中になってきましたね。

ー前は CD 買えば済む話でしたからね。今だと音源買ってTシャツ買ってライブのチケット払って...とかですものね。

自分がやっている表現にいくらお金を払ってもらうか?って難しくないですか?僕のやっている仕事がコンサルっぽいのもあって、お客さんに見積もりを出す時に人月いくらなんですよ。僕の1時間をいくらにするのか?っていう値付けの話と、やっている事があなたにとってどれだけのお金を払う意義があるのか?のバランスを取る必要があって。提供するものに価値をきちんと見出して提案しないと、世の中的にも、自信を持って やっている事の価値が下がってしまうので。そこは責任をもってやらないといけないのかなと。 同じ発想で、自分の作った曲はいくらなのかと。自分たちで素人レコーディングしたものとプロに録ってもらったものとで値段を変えるのか、とか。ブラックメタルだと音質悪いのが良いみたいな風潮あるじゃないですか。そうすると原価で考えてしまうのもどうなのかなと。クリエイティブなものって原価で考えちゃダメなんでしょうね。「○○円です!」って自信を持って出さないと後が続かないみたいな。bandcamp で考えると、パンク・ハードコアが特に安いのをよしとするのかみたいな。 

ー最近ちょっと上がった気がしますね。世の中的なものなのか。前は NYP か 1 ドルくらいだったであろうものが、3,4 ドルとか。

これにどういう価値があって、だから、お前はこの金額を出すべきなんだということをアーティスト側がやらないとだめなんですよね。ファインアートとかはアーティストはやらないんですけど。 値段を付けるのも価値を付けるのも周りですよね。

ー今までそれでやってきた事が現在の状況に反映されるんで しょうね。

そこに乗っかるか乗っからないかはアティテュードの話なんでしょうね。どっちでも良いと思うんですよ。

ーそこで特色とか選ぶ側のスタンスが出来るんでしょうね。

これだけ言ってるけど、僕は自分のやってるものに値段付けたくないんですよね(笑)それだったらタダでいい。生活する分の収入源は別であるから原価は気にしないよ、と。でもそこで本当は収支がとんとんにしかならない、更に広がらないのは良くないんですけどね。

ー僕も 1 人で曲みたいなの作って bandcamp 上げてますけど、あまり多くを望めないのがわかっているので、 プラマイゼロなら良いかな...とか思ってしまいますね。きっと加川さんが買ってくれるだろうとか思って (笑)

そういえばKMさん経由で結構買ってますよ。

ー知ってます!都度メールが送られてくるので。

※bandcamp は個人アカウントが買ったものがタイムラインに履歴として表示されます。例えば KM が買った ものを見た加川さんが同じものを買うと、KM にその旨のメールが送られてくる仕組みになっています。

ー楽しいですけどね。「これは響くのか!」と。

その生態系を作るのって凄いですよね。

ー僕もきっとそんな風に見られてるんでしょうね。「またこいつ俺と同じの買いやがった!」みたいな(笑)

bandcampってファン同士の繋がりが無いじゃないですか。サイト上ではやりとりをさせないファンコミュニティ。インフルエンサー的なファンが出難い造りになっているんですよ。日本語対応していないからあまり語られてないんですけど、あれを考えた人は凄い。 今、日本のハードコア界隈とか...さっきのライブハウスの話とか、そういうのが上手く回っていない気がしますね。もしかしたら本当はそういうのは人じゃない方が良いのかもしれない。それこそハコとかレコ屋の役割ってそういう事なんでしょうね。そういうところまで含めて"場の提供"っていうのが、そこが上手くいってな いのかな。

ーカルチャーの役割みたいなものですよね。論争の火種って、それが上手く機能していない場合なのかもしれないですね。そういった場を作ろうとしている人って、音楽に限らず沢山いるんですけど、なかなか表に出て来ない、出て来づらい気がします。


◾️リテラシーとおせっかい

ーこの状況になって海外の 90 年代や 00 年代に活動していたバンドの人達が回顧録的な記事やコラムを書いて いるのを目にするんですが、結局自分たちがいたのは音楽シーンというのもあるんだけど、生活の場だったと いうのが共通しているような気がします。メタルでもストレートエッジでも、クリスチャンやクリシュナとい った宗教でも。大義名分というより、友達や近所だったり、集まって遊ぶ...遊ぶというか、付き合いの場だったみたいな。そういうものの方が特色が出るのかなと。結局、地元でバンドやるのが一番強いのかなとか考えてしまいます。

難しいですよね。東京とか地域が限定されていたりすると。色んなアートやカルチャーに触れた上での取捨 選択をしていないじゃないですか。本質的じゃない気もするんですよね。
...いや、それは客のリテラシーが凄く高いから成り立つ話だ。オープンマインドでなければならないとか、 きちんとアートを批評的に見れないとダメってこととか。 

ーもっと皆んなは...早い言い方だけど、もっと皆んなは俗っぽいって事でしょうか。

そうですね...。それこそ地元が一緒とか、極論すると"ボーカルがイケメン"とかでも同じような話ですよ。 "モッシュピットがエゲツない"でも良いですし。もちろんそこをスタートに拡がっていくのは良いんですけどね。僕らが話している問題意識みたいなのに対してだと、そこで止まってしまう人達に引っかかりを感じてし まうんじゃないかなと思います。THA BLUE HERB の「シーンはどんどん小さくなれば良い」って言うのはそういう事じゃないのかな。結局、ブームに踊らされている間はダメだよねって感覚はあるんです。音楽を楽しむうえでは踊らされるのもいけない事じゃないし。かといって地続きになると...棲み分けなのかな?そうなるとタコ壺化するし、どう整理するのが適切なんだろう。

今、仕事でもそういうのが起きてるんですよ。どうしても出来る人達で固まってしまうんです。働き方改革が進むと、そうせざるを得ないんですよ。能力の違う人に合わせようとすると、ギャップを埋めるための超過労働が発生するので...。そこに凄く危機感を抱いているんです。ポテンシャルが高い若手が失敗をする貴重な機会を奪ってしまっている。チャレンジさせてあげたいんだけど途中で仕事を奪わざるを得ない機会が発生してます。同じようなことが色んな場所で発生する気がします。仕事に限らず、アートに対する向き合い方とかでも同じで、ある種おせっかいなおっさんがいて「こうじゃいといけないんだ」と説教する場所が無くなっていくんですよね。今って世代をまたいでフラットではあるんですよ。若くて優秀がある・素質がある人が、経験がある人にダイレクトに触れる機会があって。でも一方で、うざいけど親身になってくれる人がいないっていう面もあって。

ー無いよりはあった方が良いのか、あるよりは無い方が良いのか...。

とある若い子のバンドがフライヤーを燃やして歳上のバンドマンに殴られたっていう出来事があったじゃな いですか。あれ、殴った方って半分親切なんですよね。ライブハウスの入り口で火遊びなんて、消防法の面とか安全面で言ったら、問答無用で警察に突き出されてもおかしくない。殴った側の「誰に向かって口利いてん だ?」っていうので問題の本質がズレているんですよね。説教で収めようとするのはだいぶ優しいですよ。 

ーもしそれで大火事になってしまったら、大変どころじゃないですしね。

っていう話と、さっきのリテラシーが足りない人や能力が異なる人にどこまでケアするかって、実は地続きになんじゃないかなって。そこの良くも悪くもお節介なのが無くなっていったら、わかる人とわからない人が どんどん分断されていくんですよ。パッと見は皆んなハッピーになるんでしょうけどね。でも5年10年経つと、どうやっても覆らないギャップが出てしまって、2030年ぐらいの身分格差になると思うんです。そこには差別っていう概念は無いんですよ。それぞれがそれぞれを尊重して、だからこそお互いの居場所を区別しようねってやっていると、結果的に利益を得る人と、いつまで経っても利益を得られない人が明快に分かれて、” 利益を得られない”っていうのが 100パーセント自己責任になっちゃうんですね。それって凄く正しい世界なんだけど、それで良いのか?と。
ハードコア的なアンチシステムの文脈で考えると、押し付けられてきた、貴族とかの逃れられない身分階級だったところが崩壊していって、でも、新たな身分階級のようなものが生まれようとしていて。知的好奇心だったりとか、情報を収集してそこから取捨選択していくことへの耐性とかだったり。もちろん十分な教育を受けられたかにも依存するので、そういった格差は是正されるべきですけど『大学卒の間で生じるリテラシー 格差』ってなったら誰も救えなくなるんですよ。

ー冒頭の話に繋がってくるわけですね。

自分たちプラスα手が伸ばせる範囲をどうするか...となると外に出す必然性が無くなっていくんですよね。わからない人に時間を割くよりは、自分と自分の大切な人達のために時間を何に使うかが建設的になって。でもそうやって対話の輪が狭まっていくのはヤバいなとは思うんですよ。

ー僕も相当に限られた人間関係の中で生きているので、その危機感はよくわかります。なので冒頭に戻ってくる んですけど、こういう形(ZOOM)が降って沸いて来たので、これは今まで話したいけど、なかなか話せなかった人たちと話すチャンスだぞと思って始めたんですよね。こうやって記録を遺して 10年後、2030年になった時に、誰かの考える材料になれば良いなと。けしからん奴がいた!にもなりそうですけどね。こういう会話でも、どこかで遺っていれば...と思います。

10 年後だと僕は 50 すぎてますからね...もう今から言ってるんですよ。「俺は若い人に媚びる」って (笑)「絶対にしょぼくれていくから、おこぼれで仕事を貰えるように今お前を育てている」とか。

ーいいじゃないですか(笑)

だからこそ、さっきの問題意識でいう、何をどの広さでするべきなのか?が大事だなと。受け売りなんですけど「自分と自分の好きな人のために頑張る」という所信表明というか。理想を拡げていって、相容れない人と触れ合うのも重要ではあるんですけど、それでいったら自分に近しい人達でどうするかの方が建設的だよなと。

ーでも、青臭い理想論ではありますけど、それが 1人1人に波及すれば全体に対して悩む事は無いですよね。ど こまでも拡げていけば、身がもたないじゃないですか。

僕の中でのパンク・ハードコアの定義が揺れている感じはあるんですけど、それを表に出して、表現していかないのは"ハードコア"と名乗っているものとは相反しているよねと。今はバンドが動いてないのでアレですけど、世の中に対する問題意識はあるのに、それを表現していかないんだとしたら、パンク・ハードコアとするのは何か違う気がするんですよ。 

ー今ままで伺った感じだと、パンクというのは別問題なんですけど、ハードコアという面では、ある意味ではハ ードコアに揺れ動いているなとは思いますけれど。

unkletっていうバンドなのか、別の形なのか、いずれにしても何か表現しなければいけないなとは思っていて。義務感なのか何なのか良く分からないんですが。 

ーそれが一番スッキリするからじゃないですか?HELMET から始まった経緯から察するに、一番それを発露しやすい形態がバンドなんじゃないかなと思うんですが。

表現をするときにも、思想とかは出さずにフィジカルなものとするのか、思想や文脈とか考えている事を言語化していくのかとか、結構悩むところではあるんですけどね。

ー1人しゃべりに特化するとかどうなんですか?スポークンワードというか。立ちとかで。色々ありますよね。 

それ...仕事でやっちゃってるんですよね。

ーそういえば喋りの仕事してましたね。


■微分とコミュニケーション 

実は、仕事についても、世の中に対する問題意識に立ち向かいつつも、効率的に稼いでいこうっていうのは意識していて。大学院に入った時に、微分積分とかサインコサインとか「あ、これただの道具じゃん」と気付いたんですよね。

ーほう...(←数学 I 止まり)

あれって自然界を理解する、モデル化するツールでしか無いんですよね。それ、中学の時に最初からそう教えろよ!って凄いムカついて。微分って引き算でしかないんですよ。院で画像解析やってて、顔認証とかでモ ノがどこに写ってて、どこが境界線だというのをプログラムで見つけるんですが... 

※この後、加川先生による微分のわかりやすい説明が続きます。が、映像を交えず、文字だけで説明するとカオス極まりないので、泣く泣くカット致します。

ーなるほど...。これ文字起こし出来るのかな (出来ませんでした)

これでKMさんが「なるほど」ってなったみたいに、いつか誰かに微分の話をする時があったら、(そうい えばあいつあの時なにか言ってたぞ)って思い出すかもしれないじゃないですか。 

ー生活の場で何を表しているのか?っていう事ですよね。

そうそう。微分も積分もサインもコサインも、世の中にめちゃくちゃあふれているんですよ。という事から始まったら、理系離れみたいなの無いよね、と。もちろんそれで合わないっていうのはあるかもしれないけど。 

ー理系とか数学とは言いますけど、写真や画像の解析だったりとか、ある意味では絵画的な美術的な一面もありますね。 

今やっているデザインとかコミュニケーションの仕事って、情報とか概念をどういう風に伝えると本質がきち んと伝わってお互いがハッピーになるかの追及なんですよね。小難しい事は多少正確じゃ無くてもいいって割り切ることのほうがでお互いがハッピーになるとかもあって。得てして、情報を持ってる人って色々言いたがったりとか、逆に大前提は皆んなわかってると思って端折ったりとか、そこでコミュニケーションのギャップが起きるのは凄く勿体無いですよと。

さっき言ったリテラシーの話も本質的に一緒なんですよ。ハードコア界隈のところまで届くかというと、なかなか...となるものはあるんですけど。 そこはやっぱり自分の出番というか近いラインを走っている人間が覗き見たり、ピックアップしたりするのかなと思います。

40 過ぎると何かを遺さないといけないよなあ、と考えることも多くなって。うちは子供がいないのもあって尚更...。今やっている事に対して『これは遺していかなくて良いのか?』と。そこに『わかってる人たちだ けで固まってて良いのか』も合わさって。でも実際はわかる人で固まって、そこのジレンマ。 

ージレンマを抱えている事を表に出して、誰かが知れば、明日でも良いし 10 年後でも 誰かの目に触れればそれはそれで遺りますよね。今の時点では結果が出ない話だとしても無駄ではないかと。

さっきの、音楽でなにを表現するかの話、フィジカルに原始的にといくよりは、意味を持ったものを表現していった方が良いのかなと今話していて思いました。表に出していかないとね。少ないかも知れないけど、やらないとゼロですから。今のギグアンあったところなんて何も残っていないですしね...。あの頃の空気感とか。アーカイヴ大事ですよね。 

ー僕が山形から上京して来て「真夏の東京は始発前でも蒸し暑い」って知ったの、ギグアンのオールナイト後で した。

昔のバンドのライブとか、VHS をリッピングしてYouTubeに上げたりしているんです。今ツイッターと かあるから、デジタルアーカイヴになってるように見せかけて、実際はそうでもないんです。10年後に辿り 着けるのか怪しいし。やっぱり遺さないとなあ、と。

◾️ウッドストックとスターウォーズ

たまたまなんですけど、さっきテレビでウッドストックのことやってて。そこまで興味は無いんですけど、なんとなく”当時エグかった”みたいな話って断片的に記憶に残ってるじゃ無いですか。 

ーでかいスピーカーがあって、砂埃が凄くて、人が波打ってる感じですかね。

そういう多少の文脈の共用が出来ている人たちの共通のイメージみたいなものに、僕らが関わって来たものが 成っているのかというとなんか微妙だなと。リアルタイムのギグアンの空気感...MC で何か面白いこと言っ てやろうみたいなのとか(笑)あれってあの時のダウンタウンの全盛期というか、とんがってる子がお笑いや るかバンドやるかみたいなとこあったじゃないですか。それってウッドストックに漠然と抱くイメージと近いんですよ。あの頃のリアルな(服の)オーバーサイズの、デザインされ切ってない感じとか、その空気感とか目を閉じた時に浮かぶ光景って、リアルタイムだとわかるけど、それが 10歳下に同じようには伝わらないですよね。でもウッドストックって、10 どころじゃなく、ジャンル的にも違うのに、なんとなくのイメージっ て、あらゆる世代で共有出来ているじゃないですか。そこと僕らが通過してきたカルチャーの差って何なのか なと。極論、空気感の共有が出来ていればアーカイヴは必要ないかもしれない。2000年〜2010年代の空気感は共有出来ていないからこそアーカイブが必要なんだろうなと。

ー10年前(2010年)ぐらいって結構覚えてないですね。翌年の震災の方が遥かに記憶に残っているんですが。今 聴いてて思ったのはウッドストックっていうのは、ある種の災害...というとダメですが、災害級のインパクト があったって事ですよね。

極論、民俗学的な話なんですよ。神話だとか口伝だとか。 

ー神話の本質はそれですからね。イメージを伝えていくって事で。

デジタルの谷間だった90年代後半から 2000 年代のアーカイブが遺ってないのはわかるんですが、口伝的にも遺ってないっていうのはどういう事なんだろう。

ーイメージが完璧に分断されている状態でしょうか。ウッドストックっていうデカいものを投げたら伝わるもの は多くの人にあるんでしょうけど、例えばスターウォーズって、光の剣を持った人がチャンバラするっていうのとか、なんかロボットが出てきて、戦闘機で...みたいな大まかだけど合っている印象がありますよね。最初に公開されたエピソード 4 から 6 は比較的大多数の人がイメージ出来るけど、それ以降は、より掘り下げた情報やスピンオフなんかも入っちゃって細切れになったことで、かつてほど伝わらなくなったんじゃないかと。 情報過多になって、口伝しようにも難しい、本筋を伝えるにはサイドストーリーが多過ぎるとかになっていっ てるんじゃないでしょうか。それが音楽でも一緒なのかなと思います。

↑2019年でもこれ

確かに。アーカイヴしていく事に意義がある一方で、言い伝え的に遺っていくカルチャーに出来ていないと。 僕らが責任を感じる事じゃないんだけど、そこに何が足りなかったのか?っていうのは考えないと...。 

ーもう一つ考えついたんですけど、足りないのは『下世話さ』ではないかなと。ゴシップとかとは違う...こうし て普通に会話した事とか、どんなの食べてどう生活してたのとか、その程度のレベルを遺しておこうと思って も、パンクやハードコアの人は「いやいや、そうじゃねえよ、俺たちが伝えるべきは、こういうスタイルでこ ういう音で、みたいな事なんだよ」っていう妙なストイックさがありますよね。言いたい事は音源やライブでって。それはそれであるとは思いますけど。一方で何でもかんでも記録して遺していく、野次馬根性みたいなのが足りなかったのかなと思います。 

それこそ民俗学だし風俗を記録するって事ですものね。実は僕、DISCHORD全然通ってないんですよ。むしろ苦手ぐらいで。でも 4:3 の画角で狭いところでやっているという風景は印象に残っていて。同じような風景 を、近隣の界隈とかリアルタイムじゃない人にも植えつけられるかっていう。そう思うと写真とか映像メディアは凄いですよね。ギグアンとかのニュースクールハードコアみたいなものの、アイコニックなイメージってあんまり遺ってない んですよね。多少のデフォルメみたいなものはあっても”こういう写真”っていうのは遺っていないのかもしれないですね。

ーFUGAZI とかアイコニックな写真遺ってますよね。バスケットリングにボーカルが突っ込みながら歌ってる写真とか、公園だったかな、とんでもない数の動員のライブ写真だったりとか。FUGAZIって厳密にい うと、あの中では少しだけ後のバンドなんですよね。でも膨大に写真や記録が遺っているから代表格みたいな扱いで。

なるほど。そうすると、厳密でなくてもいいから当時のアイコニックなものが遺っていたら、多少尾びれ背びれがついたところで、雰囲気は遺っていくのか。

ーそうですね。空気は遺るのかもしれないですね。詳細もあったら尚良いってことなんですが。

 逆に、そういうアイコニックなものと、今アーカイヴしようとしているものがセットじゃないとダメなのかもしれないですね。でもそれ面白いかもしれない。 

ー収集癖みたいなものなんですよね。あれもこれも遺したいと思ってやっていったら、膨大な城が出来上がって いた、と。そうなったら良いなと。 

それで厳密に伝わらないのが良いんですよね(笑)そこから勝手な読み解きをされて歪に伝わっていくのとか が。 実際、今回も映像にしたら大分ピー音入れないといけないですからね。でないとめんどくさいことになっちゃう...。

ー行間に何か言ってたんじゃないか想像してもらえたら良いなと思います。

バンドの歴史を切り取ったものはあるけど、周辺の歴史みたいなものは無いかもしれないですね。KMさんが やろうとしているのって、パーソナルな歴史の話になるじゃないですか。そこから時代時代の切片を集めて2000年代っていう時代を想起出来るのか?というのは気になりますね。インターネット以後SNS以前って いうのが本当ぽっかり無いですよね。インターネット以前はマスメディアのパワーもあって遺ってるんですが。海外で”日本のハードコア”っていうと、結構インターネット以前のものが多いじゃないですか。今でこそ多少増えてはいますけど。ネット以前 SNS後の空白の期間って案外謎になっていると思うんですよね。 これは是非ライフワークにしてもらって、10年後に時代ごとに分けたりとかして欲しいですね。

ー溜めに溜めて出た人みんなが頭を抱えるような黒歴史になっていて欲しいです(笑)

いやー遺ってるの本当いやだ(笑) そういうところに色んなリアルが遺ってるんだろうな。話してて、アーカ イヴ賛同派だったんですけど、口伝として遺るのも良いなって気もしてきました。 

ー口伝の良い加減さと学究肌の記録が遺れば面白いですよね。

でもなんかムカつきません?僕らがわちゃわちゃ遊んでたのが希少価値付いて遺るっていうのも(笑) 

ーそんなにしなくて良いんだけどなって気持ちもわかりますけどね。その辺の雰囲気も含めて...っていう、これ が下世話さなんでしょうね。 

当時の人たち、本当に音源をデジタル化してインターネットの海に流してくれないかなって思うんですよね。 音源になってないけどライブでやってた名曲持ってるバンドとかいっぱいいたじゃないですか。 こだわりもあるんですよね。これは他人様には...っていうのは僕も凄くわかるんですけど。ただそこも含めて アーカイヴなんですよね。ひとつ致命的な事を思い出したんですけど、2000年代って google 出始めなんですよ。当時のバンド名って 一般名詞過ぎて検索しても出てこないんですよね。ググられビリティみたいなものが無かったから、いま電子の海に放出されても出会えないっていう(笑) 今バンドやるとしたらその辺考えますよね。 

ー海外だと弁護士付けて名付けしたりしますよね。

unkletも本当はanklet なんですよ。un始まりでネガティヴなイメージにしたかったっていうのもあります けど、スペル変えといた方が、アクセサリー売ってる人たちと分けることが出来るので。

ーDISTANCEは逆に埋もれに行きました。似た名前で同じ方向性のバンドいっぱいいますしね。何より単語の意味を優先しました。それも皆一緒なんでしょうけど。そういう戦略みたいなのって、今でこそ出来る話ですからね。

■逆質問コーナー

ーそろそろ 4 時間弱なので、ここらで締めようかと思うのですが、ちなみに ONE VOICE ZINE って逆質問コ ーナー設けているんですが何かありますか?

なんすかそれ(笑) やりたいことわかったから聞くこと無いかな...。この先が凄く楽しみですね。ネタはたく さんあるので押し付けてしまえみたいなのも沢山あるので、ネタに詰まったら言ってください。 

ー何かあったら宜しくお願いします。本当に長丁場有り難うございました!


◾️あとがき

いかがでしたでしょうか。長かったでしょうか。文字数にすると18500字ぐらい。ロッキン◯ンか⁈というボリュームになりましたが、削った話もあるので、実際はもっと長くて、気がつけば4時間弱は話していました。加川さんは喋ってくれる人だと確信していましたが、期待以上も以上で、ハードな文字起こし&編集になりました。人によっては思うところもあるかもしれませんが、1人の声として耳を傾け、何かを考えていただければと思います。個人的には加川さんの合理と非合理の間を慎重に考えている姿が垣間見えたのが非常に印象的でした。最後まで読んで頂き、本当に有り難うございます。がっつりチェックして頂いた加川さんも有り難うございます。次回からは制限時間を設けて話していきたいと思います…。

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