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【弁護士相談室#2】若手の頃仕事で心がけるべきこと

若手弁護士や就活生からの質問を素材に、弁護士のキャリアの話題などを中心に考えてみるシリーズです。内容は備忘録のようなものです。今回は、

若手の頃、仕事をするにあたり重視していたことや仕事への向き合い方で、現在にも生きている、現在も続けているようなことがありますか

というテーマについて、コメントしたいと思います。

今、弁護士になって約20年ですが、様々な経験を積んで振り返って考えると、若手の頃はこれに全く気付いていなかったとか、認識が甘かったなあと思い出すと恥ずかしいようなことの方が圧倒的に多いように感じます。(ただ、誰だってそういうものだと思いますけどね。)

自分の仕事に妥協しない

私が常に意識しているのは、この言葉です。これは、修習時の実務修習の検察庁の担当総務部長がよく言っていたことを、私なりに咀嚼したものです。

この総務部長は大変仕事に厳しい人で有名で、いい加減な仕事をしているとすぐに見抜かれました。確か、屋外広告物条例違反の事件でしたが(修習生が触れる事件は、大抵その種の比較的軽微な事件です)、決裁を受けにいった際、条例の立法趣旨や屋外広告物法との関係、法解釈について細かく質問され、単に条例の文言に形式的に当てはめた程度だった私は、当然何も答えられなかったわけです。で、資料のない中、調べて再度行きますが、また同じような質問の繰り返しで、いつまで経っても先に進みません。私も若かったので、(さすがに口には出しませんが)こんな軽微な犯罪でそこまで細かく調べる必要もないのではなどと思ったわけですが、おそらくそれが表情に出たのでしょう。総務部長に、すかさず、「お前は自分の仕事に妥協するのか」、と言われたのです。そして、こういった事件で徹底的に詰めなくても目の前の仕事は進むかもしれないが、そう思えば、そこで終わりである。将来、いい加減な仕事をしている弁護士を山ほど見るだろうが、自分がその程度の弁護士で良いと思うなら、それで良いのではないか、もう実務に出るのだから分かるだろう、あとは自分次第だ、と言うのです。

実務に出てしばらく経って、この言葉は大変重かったなと理解するに至りました。確かに、(残念ながら)勉強もせず、いい加減な仕事をしている弁護士も沢山いて、そういった弁護士の仕事のレベルは当然高いとは言えないわけです。一方、優秀な弁護士は、仕事は徹底しているし、常に勉強もするし、そうやって自分を高いレベルに置くようにしていることが良く見えるようになりました。

これは私の法曹としての原体験ともいうべきエピソードで、「自分の仕事に妥協しない」ということを、常に心がけています。

若手の頃は、リサーチで、この事案と似たような裁判例を探してとか、マイナーな論点について文献を探してと言われることもあるかと思いますが、実務に出てみると、司法試験に出てくるような典型論点などについて質問されることはほとんどなく、どうしてこうなってしまったのか・・・という事実関係や、極めてニッチな法律について、弁護士に質問が来るわけです。すぐに見つからないこともあるでしょう。そこで、依頼したクライアントやパートナーに、特に見当たりません、という報告をすることがあるわけですが、「本当に探し切ったのか」、というのは常に自問自答するようにしていました。

インプットの努力の継続

最初から長くなったので、あとは具体論になりますが、インプットの時間を確保することは心掛けた方が良いと思います。これが仕事もプライベートも忙しい中で、なかなか苦しいのですが、インプットがないと実力は向上しません。

例えば、商事法務、NBL、ビジネス法務、金融法務事情、金融商事判例あたりを(全部は無理ですが)定期的に読んでいれば、数年単位では、差が出てくるものです。それ位ならと思うかもしれませんが、実際に忙しくなってくると、意識的にインプットの時間を設定しないと、後回しになってしまうこと請け合いです。誰もがそうなんです。また、積読になってしまう可能性があっても、目に付いた書籍は惜しまず購入した方が良いです。本との出会いは一期一会と思う位で良いでしょう。目次とパラパラと読むだけでも、そこに何があるかを覚えていて、リサーチの際に思い出すこともあります。

(※補足:全雑誌の全記事をくまなく読むというのは物理的に時間が足りないし気分的にも無理だと思うので、週末とかにパラパラと目次を眺めて、興味が湧くものをピックアップして読むというイメージです。)

アンテナは高く

昔から、仕事でも趣味でも、常にアンテナは高くしておくようにしたいと思っていますね。ただ、これは最新ガジェットに投資する口実という面があります。

AI契約書レビューをはじめ、リーガルテック界隈も初期のころからずっと追いかけていますが、そのおかげで、色々な人とも知り合いになれて世界が広がったという面もあります。

機会は貴重

これは振り返っての反省ですが、機会は貴重です。勉強会や研修会、何かの交流会でも、呼ばれたら積極的に参加するのが良いと思います。若い人材は、どこのコミュニティでも貴重であり、かわいがってくれます。下手に年次が上がってくると、遠慮されてしまい、なかなか新たな場に参加できない、という面も大いにあります。飲み会の幹事も、もちろん面倒ではありますが、引き受けていけば良いと思います。

別に見返りを求めるわけでなくてよくて(それを考え出すと苦しくなります)、それでも、何かいいことがあったりもします。テイカーではなく、ギバーになれ、ということも言われますが、そのとおりだと思います。

他にも色々と思い付そうですが、この位にしておきたいと思います。

※自己紹介

私の自己紹介については、以下のページにまとめておりますので、こちらをご参照ください。連絡先は、後記のとおりです。

Eメールでの連絡先:
info@sparkle.legal
事務所連絡先:
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-105 ワテラスアネックス1205 
スパークル法律事務所
TEL: 03-6260-7155

(了)

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