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独立開業用資料(弁護士向け)

弁護士の独立開業の話を耳にすることも多くなりましたので(大変嬉しいことです。)、私が昨年の独立開業に向けて作っていた資料を少し公開してみようと思います。

収支計算

一番気になるのは、やはりお金の問題、収支関係かと思います。特に事務所の運営側の経費がどの位かかるかについては、慣れてないとなかなかイメージが持ちにくいと思います。

ここで、私が開業準備時に作っていた簡易キャッシュフローの計算表を公開してみましょう(数字は省略しています。)。実は、こちらは東京弁護士会の独立開業マニュアルの付録資料を参考にして、少しアレンジを加えたものです。

内装工事費は、もちろん値段の高いものは見栄えがして良く見えますが、アップグレードには際限がないので、スタートの段階ではやはりシビアに考えておくのが穏当かなと思います(が、私の場合でも予測よりもかなり上振れしました。なお、オフィスの場合、什器類は結構重くてしっかりしていて、そう簡単に模様替えできません。)。住宅も同じですが、坪単価が一つの目安で、電気・ネットワーク工事やオフィス家具も含めて30~50万円/坪というのが一般的かとは思います。SOHO物件だともう少し安いかもしれません。

開業後の経費面で、侮れなかったのが通信費(便宜上、判例データベースや書籍閲覧サービス等もここに分類しています)です。2枚目のシートにまとめていますが、ここが項目が多く、一つ一つはさほど大きな金額でなくても、積み重なると結構な費用になります。独立開業マニュアルの例では全般的にここがあまり金額が大きくないのですが、少し前の資料なので、今はもう少しかかるイメージの方が良さそうです。

その他、予測と違うことは勿論多々あり、特に期中の税金の支払(所得税、住民税のほか、源泉税、消費税)は結構金額としては大きいので、この予測どおりということにはならなかったかと思います。そうはいっても、ある程度予測していたことによって柔軟に手を打てたという面もあるので、計算をしておくことは無駄にはならないと思います。

事業計画

独立開業マニュアルにも紹介されていますが、資金の準備のために借入を検討されることがあるかと思います。私自身は、慌ただしく独立準備をしたために融資申請を行っている時間がないという理由で利用しなかったのですが、好条件で利用できるので、今にして思えば利用しても良かったかなと思っています。

そこで用意するのが事業計画書(創業計画書)ですが、今後どうなるか分からないので、そんなに詳細なものを作成する必要はありません。企業法務用ですが、私が開業準備時に作った書類を公開してみますので、こちらをたたき台に作成して、経歴を付けると割と簡単にできるかと思います(なんだ、こんなもので良いのか、と思うはずです。)。

オフィスの賃貸の申込みや審査などにも使うので、こういった書類を準備しておくと良いと思います。独立の経緯などは割と聞かれることも多いので、思考の整理にも良いです。

オフィス選び

やはり大事なのがオフィス選びです。仲介手数料無料のオフィス情報サイトも多数ありますので、都市近郊であればこちらを利用しない手はないと思います。オフィス選びについても色々とアドバイスがありますが、良い物件は公開されると間もなく決まっていき、残っている物件はやはり何らかの理由があったりします。即決で良い物件に出会える、ということもあるかもしれませんが、やはり、しばらく見ていると傾向も分かってきますので、ここは少し時間をかけて見ても良いかと思います。もし目を付けた物件があればサイトに登録してみて、空きが出れば教えてもらうようにすると良いと思います(私はそうしました。)。

ミニマム方針で行くのであれば、東京・大阪ではシェアオフィスの物件も多数あります。少し割高ではありますが、立地が良かったり、会議室の部分のスペースが節約できるので、こういったオフィスからスタートするのも最近では合理的な選択肢かなと思います。

個人的におススメなのが、居抜きやセットアップ物件の情報サイトの研究です。もともとオフィスとして使われている物件なので、レイアウトの参考になります。自分の事務所として使う場合にどこにデスクや什器を配置するかを考えていくうち、段々と事務所運営のイメージも湧いてくるかもしれません。なお、セットアップオフィスは結構オシャレに作ってありますし、特に少人数の段階ではなかなか内装工事で作れない「仕切りのある会議室」があったりするので、そういったオフィスからスタートするのも良いかなと思います。

もちろん、こだわりのデザインオフィスの情報も沢山ありますので、予算に余裕がある方はこちらもどうぞ。夢は膨らみますね。

フリーレントについて

(※追記)物件によっては、入居日から数カ月を「フリーレント」期間として、賃料がかからない条件としている場合があります。少し空き期間がある物件だと、比較的長めにフリーレント期間を設定してもらえる場合もあります。(なお、オフィスの場合、一般の住宅よりも条件が柔軟に設定できる余地があるので、賃貸人とは交渉してみると良いと思います。)

実際には、賃貸借契約を締結して入居日が決まっても、入居日にすぐ開業というわけには普通はいきません。入居日の後に内装工事を入れ、什器を搬入し、ネットワークなどのセッティングをして、ようやく執務開始という流れになるので、少なくとも1,2カ月は時間がかかると考えておいた方が良いでしょう(そして、内装工事や什器の発注も時間がかかりますので、入居日から開業日までのタイムラグを最短にしようと思うと、その数カ月前から段取りを考えなくてはなりません。)。

当然、入居日以降は賃料が発生するわけですが、一方で(新事務所としての)収入はまだ発生していないので、この間は持ち出しになってしまいます。ただでさえ開業に向けて色々と物入りで、かつ不安も募る中で持ち出しの状態が生じるのは負担なので、フリーレント期間があると気分的にも資金繰り的にも助かる、ということになります。

以上、お役に立てましたら嬉しいです。

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