会社法施行規則等改正案のパブコメ開始(主に取締役の報酬等の関係について)
※2020年9月1日現在の投稿です。
会社法施行規則等の改正案のパブコメ開始
2020年9月1日、法務省のウェブサイトで、令和元年会社法改正の施行に伴い予定されている会社法施行規則、会社計算規則等の改正案が公表され、パブリックコメントに付されました。意見募集期間は2020年9月1日から同年9月30日までとされています。
会社法の改正に伴う法務省関係政令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集
改正会社法の施行日
改正会社法の施行日ですが、現時点で令和3年(2021年)3月1日を予定しているとのことです(省令案附則第1条)。また、意見募集の公表文によりますと、株主総会資料の電子提供制度の創設等に関する改正規定は、令和4年(2022年)度中の施行を予定しているとのことです。
実務的に影響が大きいのが株主総会関係ですが、株主総会参考書類に関する主な経過措置として、「施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会又は種類株主総会に係る株主総会参考書類の記載については,・・・・、なお従前の例による(改正省令案附則第2条第7項)」、(それらのほか)「施行日前に招集の手続が開始された株主総会又は種類株主総会に係る株主総会参考書類の記載については,なお従前の例による(改正省令案附則第2条第9項)」とされています。要するに、3月31日が事業年度の末日の会社(6月総会の会社)は、定時総会前の臨時総会の場合は別として、来年6月の定時総会では、改正後の会社法施行規則に従って株主総会参考書類を作成しなければならないことになりそうです。
事業報告についても、一部経過措置はありますが、基本的には施行日と同時に適用になります。したがって、施行日以降に作成される事業報告については、改正後の会社法施行規則に従って事業報告を作成しなければならないことになりそうです。
以下、個人的な関心事項でもあった役員報酬まわりについて、会社法施行規則の改正案の条文を概観してみます。
取締役の報酬等の決定方針
今回の会社法改正で、監査役会設置会社(公開会社・大会社・有報提出会社に限ります。)、監査等委員会設置会社についても、「報酬等の決定方針」を決定しなければならないとされました(改正後の会社法361条7項、399条の13第5項7号)。
この「報酬等の決定方針」で決定すべき事項は、法務省令で定めることとされていましたが、以下のような条項になったようです。(新旧対照表だと少し見にくいので、こちらにテキストをコピーしました。)
(取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針)
第98条の5
法第361条第7項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この条において同じ。)の個人別の報酬等(次号に規定する業績連動報酬等及び第三号に規定する非金銭報酬等のいずれでもないものに限る。)の額又はその算定方法の決定に関する方針
二 取締役の個人別の報酬等のうち、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の当該株式会社又はその関係会社(会社計算規則第2条第2項第25号に規定する関係会社をいう。)の業績を示す指標(以下この号及び第121条第5号の2において「業績指標」という。)を基礎としてその額または数が算定される報酬等(以下この条並びに第121条第4号及び第5号の2において「業績連動報酬等」という。)がある場合には、当該業績連動報酬等に係る業績指標の内容及び当該業績連動報酬等の額または数の算定方法の決定に関する方針
三 取締役の個人別の報酬等のうち、金銭でないもの(募集株式又は募集新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする場合における当該募集株式又は募集新株予約権を含む。以下この条並びに第121条第4号及び第5号の3において「非金銭報酬等」という。)がある場合には、当該非金銭報酬等の内容及び当該非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定に関する方針
四 第一号の報酬等の額、業績連動報酬等の額又は非金銭報酬等の額の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定に関する方針
五 取締役に対し報酬等を与える時期または条件の決定に関する方針
六 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部または一部を取締役その他の第三者に委任することとするときは、次に掲げる事項
イ 当該委任を受ける者の氏名又は当該株式会社における地位若しくは担当
ロ イの者に委任する権限の内容
ハ イの者によりロの権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容
七 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(前号に掲げる事項を除く。)
八 前各号に掲げる事項のほか、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項
かなり詳細にはなりましたが、開示府令の(記載上の注意)で開示が求められている事項と比較すると、概ねこのような内容かな、という感想ではあります。上記では、六号、七号あたりが少し議論になるでしょうか。
事業報告における情報開示の充実
今回の会社法改正において、役員の報酬等に関する事項について、事業報告による情報開示に関する規定の充実が図られることとされていましたが、その詳細についても法務省令で定めることとされていました。こちらの内容も具体的な条文として案が示されています。
(株式会社の会社役員に関する事項)
第121条
五の二 前二号の会社役員の報酬等の全部又は一部が業績連動報酬等である場合には、次に掲げる事項
イ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定の基礎として選定した業績指標の内容及び当該業績指標を選定した理由
ロ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法
ハ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定に用いたイの業績指標の数値
五の三 第四号及び第五号の会社役員の報酬等の全部又は一部が非金銭報酬等である場合には、当該非金銭報酬等の内容
五の四 会社役員の報酬等についての定款の定め又は株主総会の決議による定めに関する次に掲げる事項
イ 当該定款の定めを設けた日又は当該株主総会の決議の日
ロ 当該定めの内容の概要
ハ 当該定めに係る会社役員の員数
六 法第361条第7項の方針又は法第409条第1項の方針を定めているときは、次に掲げる事項
イ 当該方針の決定の方法
ロ 当該方針の内容の概要
ハ 当該事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除き、指名委員会等設置会社にあっては、執行役等)の個人別の報酬等の内容が当該方針に沿うものであると取締役会(指名委員会等設置会社にあっては、報酬委員会)が判断した理由
六の二 各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針(前号の方針を除く。)を定めているときは、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要
六の三 株式会社が当該事業年度の末日において取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)である場合において、取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が当該事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 当該委任を受けた者の氏名並びに当該内容を決定した日における当該株式会社における地位及び担当
ロ イの者に委任された権限の内容
ハ イの者にロの権限を委任した理由
ニ イの者によりロの権限が適切に行使されるようにするための措置を講じた場合にあっては、その内容
こちらも、詳細にはなりましたが、法令として定める内容としては穏当なところかなという感想です。上記では、六号ハ、六号の三、あたりが少し議論になるでしょうか。
全般に、代表取締役への報酬分配の一任に、焦点が当たっている印象を受けました。
(※なお、パブコメはこれからですので、今後変更もあり得ることにご注意ください。)