何故?悠々自適な不動産投資ライフが破綻したのか?
42歳で会社を辞めて、サブリースの不動産投資で生計を立てながら起業に踏み切った武田氏の不動産投資は何故破綻したのか?
当事者ではないが、クライアントが目の前で破綻していく姿を見ていて、どうしてもその理由が知りたくなったので、いろいろと調べてみた。
そして、そこには何というか、なんとも言えない根深い闇を感じてしまった。
サブリースという仕組みが悪いわけではない
今回の事件をざっくり見ると、武田氏はオーナーで、オーナーは販売会社から土地を購入して建築会社と請負契約を結んでシェアハウスを建築。そのシェアハウスをスマートディズがサブリースで一括借り上げして、オーナーである武田氏に契約で取り決めた賃料を毎月定額で支払うというもの。
1棟あたり1億円を超えるような高額投資だったが、武田氏を始め、多くのオーナーはその資金のほとんどを銀行借入れで賄っていたという。
それでも、滞りなく賃料が支払われていれば何の問題も無いだろうが、2017年10月には家賃の支払いが減額されて、2018年01月には支払いそのものがストップしてしまった。
その背景には、想定通りに入居率が伸びなかったことがあり、実態は相場よりも高くオーナーに土地・建物を売って、そこから得た収益を不足している家賃支払いに充てるという言わば、自転車操業だったみたいだ。
ネットのニュースを見ていると、こういった事件が起きると、その仕組みそのもの、つまりサブリース自体が悪だという論調が起きる。でも、決してそうではない。
例えば、投資詐欺のニュースが出ると、投資そのものが悪いような事を語る人が一定数いるが、投資そのものは一つの行為であり善でも悪でも無い。
同様に“サブリース”というのは、ひとつの仕組みであって、善でも悪でも無い。
このケースはその“サブリース”という仕組みを使ったビジネスモデルがあって、武田氏のようにそれに乗っかった人が居て、そしてそのビジネスモデルが上手く行かなくなったというだけのこと。
もちろん、それが恣意的なのか、そうでは無いのかはわからないが、結果だけを見るとそういうことになる。
不動産投資は事業活動
当然だけど、武田氏の立場からすれば、“騙された”といった感情になるだろうし、もっともだとも思う。
今回のケースでは、賃料に加えて、地方から上京した女性に仕事を斡旋することで斡旋料も入るというスキームだったので、単なるサブリースの不動産投資ではなく、サブリースの不動産投資に人材紹介といったビジネスモデルに投資したということになる。
ネットニュースによれば、このビジネスモデル、つまり人材斡旋料という家賃外収入をGoogle社の広告収入やソーシャルゲームの課金収入になぞらえて説明していたらしい。
Google社が無料で検索や地図、メールサービスを提供するように、家賃収入が無くてもそれ以外の収入、つまり人材斡旋料の収入で投資家には高利回りを還元出来るというカラクリだ。
男女がひとつのシェアハウスで暮らす台本のない素人参加番組の人気も手伝って、シェアハウスに対してのイメージが向上したという背景もある。
でも、それだけで数億円も借金してそのお金を投資に回すという決断をするのは凄いと思う。
武田氏は事前に他で運営しているシェアハウスを見ていなかった。もし、冷静な目で他で運営しているシェアハウスを見ていたら数億円を借りて投資していただろうかと思う。
実際に武田氏が運営している東急東横線沿線のある駅にあるシェアハウスを見せてもらって、わたしが抱いた疑問は、本当にここに住みたいと思う人がいるのだろうか?ということだった。
玄関を入ると目の前には狭い通路、共有スペースと言われる部分には狭いキッチンに簡易的なIHコンロが2台に4畳半ほどのラウンジには丸椅子が数脚。
そして共同のバスとトイレ。
キッチンにIHコンロが2台しか無いと、自炊している人が2人以上いたら、待機の時間が生じる。
また、一般家庭用のバスルームを少し大きくしただけのバスルームに同じシェアハウスの人と一緒に入るというのはいかがなものだろうか?
どれだけ仲のいい友人同士でも一緒にお風呂に入るということに抵抗を覚える人も少なくない。
まして、同じシェアハウスで暮らしているだけの人と、全裸でお風呂場で顔を合わせるということに何の抵抗を感じない人って少なくは無いのではないかと思う。
これが街の銭湯ならまだマシだ。見ず知らずの人同士がほとんどだろうし、居ても顔見知り程度でだろう。何より銭湯であれば一定の空間が保たれているのでプライバシーもある程度は守られるだろう。
わたしが見せていただいたシェアハウスのバスルームは2人〜3人用に見えた。ということは、2人ないしは3人が使用している時は他の人はバスルームを使えないということになる。
お風呂の時間って、だいたい20時〜23時頃が一般的で、お風呂の順番で決めなくてはならないというのは日常の生活では結構ストレスになる。
そもそも共有スペースには清掃の課題も生じる。
部屋にいたっては、地方の狭いビジネスホテルレベルだ。一部屋7平方メートルという居住スペースはどう考えても狭すぎる。
ちなみに、一般的な8帖のワンルームのスペースは12.96平方メートルだから約半分程度の広さだといえる。
これで家賃が激安なら分かるが、わたしが武田氏から聞いた家賃は決して安いとは思えなかった。
思うにエンドユーザー(入居者)の立場に立って、このビジネスモデルが成立するかどうかを見極めるのがまず先にやっておくことではないのだろうか?
そもそも、不動産投資というのは、主に金融機関から融資を受けて新築や中古の区分マンション、1棟アパートやシェアハウスといった物件を購入して入居者からの家賃収入や物件売却による利ザヤを稼ぐというものだ。
更に今回のケースは人材斡旋業も絡んでいる。
今となっては後の祭りだけど、もっと慎重になって然るべきだったのではと思う。
■遊休地の有効活用:https://threedesign.co.jp/
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