不語ガール ―ショートショート―

noteでやってみたかったことをやってみる。
できればPCから見てください。

ちなみにタイトルは「カタラズガール」と読みます。

                                                                         

 私が未来予知をできると知ったのはたしか六歳の頃だった。
 夢見がちな少女時代だったから、その延長線とも考えた。
 ただ、私が語ったことが必ず起こってしまうのだった。
 ――もしかすると、私には不思議な力があるのかも。
 愚かしいことに、この頃の私は気づいてなかった。
 それが未来予知などというものではないことを。
 私の言葉が未来になる。それは予知ではない。
 未来予知ならぬ未来創造。私は神になった。
 そのことを知らない私は「予知」をする。
 私を愚かと呼ぶのであれば呼べばいい。
 私はそれだけのことをしてしまった。
 八歳の時、母と些細な口論をした。
「お母さんなんか死んじゃえ!」
 だれでも言うような言葉だ。
 でも私が言ってしまった。
「私」だからダメなのに。
 翌日に、母は死んだ。
 無残な死体だった。
 そこで私は知る。
 これは呪いだ。
 私の言葉が。
 母を殺す。
 殺した。
 母を。
 そして。
 それから。
 私は黙した。
 何も語らない。
 たったの一言も。
 これは呪いだから。
 みんなを守るためだ。
 語ってはいけないのだ。
 弱音を吐かず、反論せず。
 いつしか空気になっていた。
 それでも私は不満を持たない。
 誰かが傷つくよりはマシだから。
 だというのに「それ」は起こった。
「1人1役、最低でも1台詞あるから」
 文化祭の発表は演劇になってしまった。
 そして1人1役、最低でも1台詞がある。
 しかし私は否定の言葉を持っていなかった。
 否定の言葉さえも、恐ろしくて口にできない。
 首を振って拒むが空気たる私の意思は届かない。
 私の台詞は「世界なんて滅べば良いのよ」だった。
 つまり、私は文化祭で世界を滅ぼすこととなるのだ。
 嫌な汗が首もとを流れる。息が詰まるように思われた。
 やる気ある者のみが練習し、私は練習に参加しなかった。
 そして時間はめまぐるしく進み、ついに本番がやってくる。
 演劇を台無しにするか世界を滅ぼすかの決断を迫られていた。
 幕が上がる。拍手と歓声。期待と興奮。震えつつも勇ましい声。
 劇場の熱が上がる。心臓が跳ねる。そして私の出番がやってきた。
 失敗しないでね、声出してね、といった目があたりから向けられる。
 誰一人として想像だにしまい。私が世界の命運を握っていることなど。
 私は覚悟を決めた。逃げることなどできない。舞台に立ち、そして言う。
「世界よりも、声が欲しい。こんな世界じゃ叫べない。だから、私に声を!」


 私はそうして世界との折り合いをつけた。

 そして「声」を得た。

 なにものにも縛られない、私だけのこの「声」を。


 え? 演劇はどうなったかって?

 そうね、しっかりと“過去形”で言うわ。

「演劇は、大成功だった!


ショートショートのお題、待ってます!
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