パンダのプンダ、旅に出る その3

第3話「パンダのプンダ、黒くなる」(全10話)

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「ねぇキミ、その黒いの、もしかしてボクのぉ?」

 傍らに1匹のテントウムシが飛んでいました。赤い羽根に黒い斑点。もしかすると、このテントウムシが黒模様を盗んだ犯人かもしれない、とプンダは思ったのでした。

 長い旅路でした。プンダの住処から、森の外の草原まで、およそ1kmです。なまけもののプンダはそんな距離を歩いたこともありません。だって、お腹がすいてしまいます。

 しかしそれだけの苦労を重ねた甲斐があったようにプンダは思いました。ようやくこれで黒い模様を求める旅が終わりだ、とプンダは思います。

 プンダは、にっこり満面の笑みで、もう一度、

「ねぇキミ、その黒いの、もしかしてボクのぉ?」

 と尋ねました。

 しかしテントウムシは「わ、わ、わ!」と叫んでどこかへ飛んでいってしまいました。

 テントウムシから見たらプンダはパンダではありません。おそろしいシロクマなのです。食べられてしまう、とテントウムシは勘違いをしてしまったんですね。

 飛んでいくテントウムシを眺めながら、「あぁ……」とプンダは呟きました。

 これは困りました。

 森から持ってきた笹をもしゃもしゃ食べながら、プンダは頭を抱えました。何しろ、早く黒模様を取り戻さなければ、プンダにとっては深刻な問題が発生してしまいます。

 早くしなければ、笹がなくなってしまうのです!

 なぜなら、森の外では、笹が1本も生えていなかったからです。

 こればかりは盲点でした。森の外を知らなかったプンダは、森から出たとしても笹は生えているものだと考えていました。笹のない世界など、プンダには考えられなかったのです。それでも森を出るときに何本か笹を持ってきたプンダです。それに妹のポンダからもお弁当が渡されていました。しかしそれが尽きるのも時間の問題です。

 こんなことがあったから、プンダは少しだけ急いでいるのでした。

「どうすればいいんだろぉ」

 むろん、プンダはプンダなので、もしゃもしゃと、1本目の笹を食べてしまいました。おいしいものには勝てません。

 さて、プンダは考えます。

 プンダがまた森へ帰るには、パンダにならなければいけません。そのためには模様を盗んだ犯人から返してもらわなければ行けません。けれどプンダはシロクマで、プンダが話しかけようとすると逃げてしまいます。話しかけるためにはパンダでなければいけないような気がします。でもパンダになるためには……。

 堂々巡り、というものですね。

 プンダは頭の中でぐるぐるぐるぐると同じことばかりを何度も何度も考えて、頭がくらくらしてきました。めったに頭を使うことのないプンダですので、それだけでもう疲れてしまいました。

 プンダは「よっこらしょ」と木陰に座りました。

 しかし困ったことに、木陰は泥だらけでした。プンダの右手がどろどろです。いつもなら大きな葉っぱで拭くところですが、草原には小さな草ばかりです。プンダはため息を吐きました。

 でも、プンダは「あっ!」と言いました。何かを思いついたようです。

 プンダはその泥を、今度は左手に付けました。次に耳、それから目、両足にも。

「しっぽは、どうだったっけ……。まあいいやぁ」

 と呟くと、しっぽにも泥を塗りました。塗りおえるとプンダはご満悦です。

「これでパンダになれたかなぁ」

 と言いました。

 見てみますと、シロクマだったはずのプンダに、パンダのような模様がありました。プンダは泥んこでパンダの模様を描いたのでした。

 おやおや、本当にそれでいいのでしょうか。こんなズルは許されるのでしょうか。

 それでもプンダはにっこりです。

 こうしてプンダは、パンダになれた……のでしょうか?

(第3話 おわり)


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