「絶望の歌を唄え」堂場瞬一

久々の堂場作品。警察小説を好きになるキッカケは、この方の鳴沢シリーズ。主人公が背負う自らの過去との葛藤。捨てられない正義感により、罪や犯人とではなく、自らとの向き合いとも感じられる世界観に惹かれた。鳴沢シリーズ以外にも失踪課など好きな作品は多い。一方、ここ数年は、主人公の背負う過去は深いが、その深さの割りに、事件の動機や解決までの仮定が、軽いというか、読み進めても、物語に入り込めないことが多くある。本作。タイトルにある絶望。犯人が体験した異国でのテロ、家族を失ったことへの恨みなどなど、そして、そこと交差する主人公である元警察官の喫茶店のマスター。解決に至るまでのいくつかのアクションシーン。テレビの二時間ドラマには最適な内容か。読後感は無。作品作りは相当のエネルギーがいるはず。架空ではあれ、何人もの人間の人生を描く。背負う。自らを削る作業。ビジネスとしても成立させなくてはならないなかで、ある意味、効率化も求められるだろう。


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