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経営のチェーン構造

お恥ずかしながら、高校生になる息子は学年で低空飛行を続け本人も悩んでいます。
当然オヤジの言うことなど聞いてくれませんのでアドバイスも出来ませんが、試験の成績を見れば対策は明らかです。

得意な英語をもう10点あげるよりも赤点すれすれの音楽と美術を20点ずつ上げればいいだけ。そこが全体の足を引っ張っている。ただ平均点にもっていくだけだから暗記を頑張ればなんとかなる範囲。

陳腐な例ですが、経営でも同じような景色を見ることがあります。意外にシンプルな構図を。

ドラッカーやポーターを信奉している私としてはどうしても強みや競争優位を偏重してしまいがちですが、実は経営の強さとは、もっとも強いところで決まるだけではなく、もっとも弱いところをいかに強化して強みにするか、というのもあるような気がします。

例えば、
・新規開拓の営業マンが優秀であっても、現場能力がそれについていかなければ品質問題を起こし、結果的には顧客の信頼を失っていく
・現場の技能レベルが高くモノづくりの品質が優れていても、人事部門が弱くてエンゲージメントが下がってしまえば人材流出して現場は弱体化していく
・製品は価格品質ともに業界トップレベルだが、ヘルプデスクなどアフターサービス体制が脆弱であったため次第に顧客離れした
など。

どこが弱いかを探るには次のような3つのアプローチを使うと炙りだせます。

1.SWOT
弱みは機会を生かせない、脅威でまっさきにやられるという文脈で考えると解像度が上がります。逆にいうと機会や脅威に影響のない部分は対象外にしておくことが出来る。

2.ボトルネック
バリューチェーンや社内プロセスでみていったときにどのプロセスが全体の足枷になっているか、リソースの投入が少ないか、ということを見出だします。

3.バケツの穴
投入したリソースが無駄になっている、獲得した顧客がドンドン失客している、など流出しているものを見出し、どこから漏れているのかを発見していきます。

いま実務で取り組んでいるところもこれらによって弱いところを見出して、強化をしている真っ最中です。

名著「良い戦略、悪い戦略」では鎖構造(チェーン構造)を強化せよとありましたが、とてもわかりやすい表現だと思いました。

例えば自転車のチェーン。踏み込む力を推進力に変えるためにしなやかで強靭な役割を果たしていますが、もしどこか一つの部品が金属疲労あるいは経年劣化かなにかで切断してしまえば、大事故が起きてしまいますよね。

経営でもあるひとつの歪や弱点が大きな経営リスクにつながることもあります。

競争優位どころか、コンプライアンスやガバナンスで足をすくわれます。

しかし逆にいえばこのチェーン構造を巧みに強く設計していけば、柔軟でかつ強靭な戦略、企業体質ができるということにもなります。

企業は強みを生かして競争力を持つというのは大原則ですが、いまの時代、足を引っ張ってしまう弱みこそ最優先に修復・強化もしなければならないことを再認識しています。