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『サムシング・イン・ザ・ダート』クリエイターによるクロストーク

ジャスティン・ベンソン × アーロン・ムーアヘッド × デヴィッド・ローソン・ジュニア
映画『サムシング・イン・ザ・ダート』のクリエイター3名による作品についてのクロストークをお届けします


プロフィール

ジャスティン・ベンソン & アーロン・ムーアヘッド
監督・製作・編集・出演・脚本(ベンソン)・撮影(ムーアヘッド)
“ムーアヘッド&ベンソン”として知られるジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドの共同監督チーム。監督や脚本のほか、俳優、製作、撮影、編集、視覚効果もこなす。これまでに、ホラーロマンス『モンスター 変身する美女』(14)、アンソニー・マッキー主演の『シンクロニック』(19)、そして2012年にトライベッカ映画祭で絶賛の嵐を巻き起こした『キャビン・イン・ザ・ウッズ』などを手掛けている。また、製作パートナーのデヴィッド・ローソンとともに、独立系の製作会社RUSTIC FILMSを立ち上げた。『サムシング・イン・ザ・ダート』彼らが手掛けた5作目の長編作品となる。

――FILMOGRAPHY――
映画
『サムシング・イン・ザ・ダート』(22)
『シンクロニック』(19)
『アルカディア』(17)
『モンスター 変身する美女』(14)
『V/H/S ファイナル・インパクト』(14) ※アンソロジー「BONESTORM」
『キャビン・イン・ザ・ウッズ』(12)
TVシリーズ
「ロキ」シーズン2(23)
「ムーンナイト」(23)
「アーカイヴ81」(22)
「トワイライト・ゾーン」(19-20)
短編映画
『WRECKED(原題)』(13)

デヴィッド・ローソン・ジュニア
プロデューサー
メリーランド州ボルチモア出身。幼少期から映画を愛した彼は、高校卒業後に空軍へ入隊。そこで彼は同じように映画を愛する人々と知り合っただけでなく、彼らの核となる価値観、すなわち「誠実第一」、「自分よりも奉仕」、「すべてのことにおいて卓越すること」を心に刻んだ。彼はその価値観をロサンゼルスに持ち帰り、2005年以降、商業映画と長編映画の分野でキャリアを積んできた。ムーアヘッド&ベンソンと共に『シンクロニック』(19)、『アルカディア』(17)、『モンスター 変身する美女』(14)、『キャビン・イン・ザ・ウッズ』(12)と5本の長編作品を手掛けている。

ロサンゼルスへのラブレター

ジャスティン・ベンソン(以下ジャスティン):あらゆる意味で本作はロサンゼルスへのラブレターのようなものなんだ。

アーロン・ムーアヘッド(以下アーロン):そうそう、その通り。ロサンゼルスに特化した作品を作ろうと考えていた。自分が住む街の奇妙な側面を掘り下げたかった。
ロサンゼルスを舞台にした映画は数えきれない。だから、僕たちは何を描けばよいのか?ロサンゼルスについて人々は否定的だ。浅はかだとか、権力志向だとか、非常にネガティブなことを言う。しかし、ロサンゼルスは美しい街だ。

ジャスティン:美しくも奇妙な街だ。

アーロン:そう、美しくて奇妙な場所なんだ。ロサンゼルスを否定する人は、好奇心を失っていると思う。

映画の起源

ジャスティン:さて、この映画の起源について教えてくれないか?

アーロン:2020年に遡るんだけど、ロックダウンの最中であっても、僕たちはインディペンデント映画作家だから、映画を作りたくて仕方がなかった。僕たちは二人揃えばどんな作品でも作れると思っていた。ただ、そのような考えは一切捨てたんだ。これまで通りにはいかないぞと。そして僕たちは、高額の制作費をかけて作られたお化け屋敷を題材としたフランチャイズ映画を観て思い至った。「そうだ、僕たちはリメイクやフランチャイズ映画を作るつもりはまったくないぞ。たとえば、この条件でこんな作品を制作したらどうなるだろう?」ってね。

アーロン:これこそが、まさに基本なんだ。DO IT YOURSELF、僕たちのルーツだよ。ご存知のとおり、僕たちの最初の作品『キャビン・イン・ザ・ウッズ』はすべてを自分たちでやってみようと試みた。そして、僕たちは素晴らしいスタッフにも恵まれた。そこにいるプロデューサーのデヴィッド・ローソン・ジュニアも撮影に帯同していたんだ。

デヴィッド・ローソン・ジュニア(以下デイヴ):『キャビン・イン・ザ・ウッズ』の制作中、僕たちはこの作品を足がかりにより一層大きなプロジェクトに取り掛かろうと考えていたし、自分たちだけで映画を作るなんて二度としないだろうと思っていた。映画が完成したとき、ビールを飲み交わしながら、「こんなことは二度とないだろう。仲間と集まって映画を作るのは、おそらくこれが最後だ」と話したのを覚えているよ。

ジャスティン:当時は、おそらく誰もが、小規模の映画を作る目的は、より大きなサイズの映画を作るためだと思っていた。ただ時間が経つにつれ、幸運にも僕たちは少し大きな映画を作る機会にも幾度か恵まれたんだけれど、その旅路において、大規模なものを作るために低予算の映画を制作したわけではないことに気付かされた。大きな作品も、小さな作品も作るし、今でも友達と一緒に映画を作っている。

撮影スケジュール

アーロン:このDIY映画を撮影する平均的な1日がどんなものだったか、教えてくれないか?

ジャスティン:ああ、僕の場合は、朝起きてコーヒーを飲みながら、とんでもないフェイクタトゥーをたくさん入れ、それから台詞を見直したんだ。皆が揃ったところで、君が照明の指示をしてくれ、デイヴと僕は照明機材を調整した。多くの人が知らないかもしれないけれど、撮影現場ではCOVIDのプロトコルがあったんだ。撮影現場には、君と僕とデイヴの3人しかいなかったんだけど、他の俳優が加われば状況は変わるし、スタッフの多くはリモートで参加してくれた。

ジャスティン:録音などの部門があってないようなものだった。だから、長い間デイヴに手伝ってもらった。

デイヴ:ちょっと忙しすぎて、コントロールしきれなかったんだ。正直に言うと、僕たちの誰もが完全にコントロールできているとは思っていなかった。ただチームは皆、どこに何があるかを理解していた。多くのことを学ぶ必要もあって、この仕事のプロセスは本当に楽しかった。僕は一般的に、学ぶことが好きなんだ。スキルセットを身につけるのが好きだから、プロデューサーとしてだけでなく可能な限り手伝いたいし、電気部門や撮影部門が僕に何かを伝えに来たときに、より深く理解することができるようにもね。だから、自分自身をスキルアップさせ、得た知識を活かすことができるような別の仕事をするのが楽しみなんだ。一番大変だったのは、カメラのことを学ぶときだっただろうか。僕はカメラに触れない方が良く見えると思っていた。でも、この作品ではカメラに触れる機会も多々あった。僕のスキルセットと言えるようなものではなくて、このために学ばなければならなかったようなものだから、大いに楽しむことができた。僕は映画を作ることが大好きなんだ。これ以上のものはないよ、本当に。

ジャスティン:役作りのために毎朝行っていたことはある?

アーロン:毎朝、ヒゲを整えたよ。僕の役柄は、ちょっとソシオパスのような雰囲気を醸し出していた。だからいつも身だしなみを整えていた。喫煙の練習はしなかったから、全くの素人のように見えたし、実際に慣れていなかったから、その日の撮影の内容を20分か30分くらいかけて見直したよ。

ジャスティン:チェックリストを作ったね。

アーロン:撮影当初、僕たちは座って脚本を読み合わせていた。その後、立って読み合わせるようになったけれど、撮影15日目には脚本に没頭しすぎて、撮影のプロセスを忘れてしまったりもした。そして、立ち止まって撮影のチェックリストを確認するようにした。だからどのシーンでも、撮影を始めたらすぐに入り込むことができた。脚本を読み、リストをチェックする。当たり前のことのように聞こえるけど、3人だけで映画を作るとなると、ちょっとやそっとのことでは終わらないんだ。

アーロン:君がカメラに映っているとき、壁に向かって演技していることになるよね。僕は演技中にカメラにぶつからないよう、持ちながらセリフを言うけれど、その逆もしかりだ。僕がカメラに映っているとき、君がそれをやっている。ピントを合わせたりね。デイヴは隅っこに隠れながら音声レベルを調整したりしているんだけど、その他には他に誰もいないし、非常に親密で小さな小さな経験だった。ハロウィンのシーンを撮影したときのことを思い出しているんだけど、カットとしては5分、セッティングに9分程度を想定していたが、カメラが動き回るため、1テイクに20分ほど必要だった。だからカメラは常に位置を変えなければならなかった。そして、撮影後に音声を録っていないことが判明したテイクもあったんだ。正直「冗談だろ?」と思った。信じられなかったよ。ただ、このプロジェクトをとても誇りに思っている。

ジャスティン:ここ10年の僕たちの生活のサイクルは、映画を作ることだった。僕たちはこんな小規模の作品を撮った、それが公開され、今は何をしたらよいのか分からない。だけどまた立ち上がるだろう。

アーロン:映画を作り続けよう!

映画『サムシング・イン・ザ・ダート』は絶賛公開中


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