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お家で料理しましょう

前日のこと

先日、2月21日に急遽家に人が来ることになった。
もともと会う予定ではあったんだけれど、翌日その人の予定があることも知っていたし、最近会うときはもっぱら外だったので当日もそうだと思っていた。
のだけれど、前日20日、届いたメールには「手料理食べたい。家いってもいい?」の文字。ねえ、今22時ですよ。
いや、まあ、いい、いいけど、何作ろう…?


私は料理が下手だ。紛れもない事実だ。
妙齢の女性なのに料理も満足に作れないなんて、と白い目で見られるかもしれないけれど、実家が二世帯住宅の為に台所は母と祖母の領域だった。
料理ができない私が手を出せば食事の時間が遅くなるからやめてくれ、と家を出るまで言われ続けた。
じゃあ一人で料理すればいいのでは、とも思って休日にチャレンジしたこともあるが、冷蔵庫の中身を計算したうえで一週間の献立が決まっているため、そちらも手出しが許されなかった。
お小遣いは少なく、料理の材料を買う余裕などなかったので、選ばれた選択肢は「作らない」だった。
他にも理由が一つあるのだけれど、それは追々何かの時にまとめられたらいいなと思っているので割愛。

後々私のつくったとんでもない塩分量だったらしいきんぴらを口にした母は「もっと料理をさせればよかった」と後悔をしていたようだったけれど、時間はもとには戻らないので諦めてほしい。
とはいえ、一人暮らしをしていてお腹を壊したり、餓死をしない程度には料理ができているので、所謂メシマズではないのだ…と思いたい…。
料理上手なのになぜか味覚が似ている私の友人曰く「我々はおいしいの幅が広いがゆえに得をしているので、美味しく食べられるものは美味しく頂きましょう」。その通りだと思うので、今日も適当に料理をしている。

とはいえ、人に手料理を食べさせるのが怖いという問題が浮上する。
美味しくないって思われたらどうしよう。まずくて、酷い場合お腹を壊してしまったらどうしよう。
夜の23時を過ぎたころ、慌てて片づけてぴかぴかの部屋を見ながら、料理をどうするべきかと頭を抱えて悩んだ。

当日のこと

相手からはリクエストがない。
メニューは仕事中に考えればいいか、と思ったものの、そもそも料理が得意ではなく、でも美味しいと思ってもらいたいよね…と考えれば考えるほど、悩む。
カレー?オムライス?丼もの?
もともと相手は私が諸事情で料理が苦手である、ということを知っているので、過度な期待もされてはなかったんじゃないかと思う。でもだからといってまずい料理を出すわけにもいかないし、美味しいなと思ってもらいたい。

結局落ち着いたのはハンバーグだった。
失敗も少ないだろうし(過去に失敗したことはあるけれど)お互いの好物でもあったし。煮込みハンバーグにすれば生焼けということもないでしょう。
その日の朝賞味期限が切れそうでギリギリだった豆腐と鶏肉のハンバーグはさすがに出す勇気なかった…。おなか壊されたら困る。

のに!
急遽残業。どのレシピ使うかまだ決めてませんよ!
調味料がなさすぎることに定評のある私の台所。一から買うものとかもあるのに、レシピをゆっくり選んでいる時間もないなんて!
パッとレシピを検索すると、出てくるナツメグ!?赤ワイン!?そんなのないよ!
そうだ、日本の主婦の皆々様の強い味方、料理の元を使おう。カゴメとかからトマトソース出てるし、まあなんかそういうのあるでしょ!

結局落ち着いたのがこちら。

キッコーマンさんの『デルモンテ トマットリア 濃厚煮込みハンバーグ』
他に見つからなかったのもあるけれど、そもそも副菜を作っている時間がない可能性があったため、野菜も一緒に取れるやつ!となったら手が伸びた。
お肉に混ぜる「特製ハンバーグのもと」にナツメグとかいろいろ入っているようで、私みたいな料理下手には嬉しいですね…。
主婦だけじゃなく、料理下手の味方ですね…。後ろにレシピ書いてるし。ありがとう…ありがとうキッコーマンさん…
まあ結局相手は残業で遅くきたので、時間はたっぷりあったのでした。次は一からハンバーグ作ります。

いただきます

「あっハンバーグじゃん!」
とフライパンの中身を見せたときににっこり言われてほっとした。トマト煮込みなので失敗もない。
人参は予めレンチンするから火も通ってる。(じゃがいもは慌てて買うのを忘れていた)
なんて料理下手に優しいんだろう…。私も今度からちゃんと火の通りにくい野菜はチンします。


ハンバーグとお味噌汁を温め直し、ほかほかに炊き上がったお米をテーブルに乗せていくときはどきどきした。
予め「残業があったために、時短アイテムを作りました」と自己申告していた。あちらが望んでいたのは恐らく1から10までの完全なる手料理だと思っていたから。

「時短アイテムって何つかったの?」
「煮込みハンバーグのソース…。レシピみたら赤ワインとか書いてたけど、そもそもうちに赤ワインはないので…」
「え?それだけ?ハンバーグ作ったのは?」
「それは私だけど」
「え~!!めっちゃ形綺麗だね!大きさもいい感じ。ハンバーグも買ったやつかと思った!」

ま、まじか~~~~~~~~!!
この人褒めるハードル低くないか?と正直に思った。言うのはやめた。
実は常々「この人自己肯定感高そう」と思っていたのだけれど、それが如実に表れたと思った。一人っ子だと言っていたから、ご両親から一身に愛を受け、小さいことでもたっぷり褒められて生きてきたんだろう。だから、他の人に対しても小さいことで褒められるんだと思う。
私が「料理が苦手で」という話をした時も「じゃあ料理、偶にでいいから食べさせてよ!上手になってくところ見れるじゃん!」と言われた。すっごいポジティブだな!

ハンバーグに話を戻そう。
一緒に煮込んだにんじんは甘くて、そうだ!にんじんって甘いんだ!と思い出せるくらい甘かった。特別にんじんが好きというわけではないんだけれど、フライパンに残っているにんじん全部私食べていい?って言いたくなるくらいだった。
ハンバーグも、ちゃんと火が通っていたし(煮込みハンバーグありがとう…)濃厚なトマトソースがたまらなかった。語彙力が足りない。トマトソース大好きな私には「あ、これまた買おう」と思わせる味だった…としか言いようがない…。ハンバーグ食べたいそこの貴方…。ぜひ買ってみて…。

結局残さず食べきってくれた相手の「ごちそうさま」の声にほっとした。
相手は元々あまり食べる方ではないので盛りは少な目だったけれど、綺麗に空になったお茶碗と汁椀と、トマトソースがちょっぴり残った白いお皿に安心した。
お互い食事中はおしゃべりをしないのだけれど、一口目に「おいしい」といってくれたあとに(ほぼキッコーマンさんのおかげだけど)黙々と食べてくれたことが何よりうれしかった。

そして、次こそは私が1から10まで作った手料理でその言葉を引き出してみたいな…と心底思った。
まずは自分の食べる分をきちんと、ちゃんと作るところから。

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