本屋で本を買いたかった

今日、本屋に行った。

名古屋で6.7番目くらいに大きな駅である千種駅は、少し歩けばお洒落なレストラン街があるのが魅力だが、駅前はなんというか‥‥古びている。

駅の正面にあるビル(ビルと言っても二階建て)に入っているお店は、コメダ居酒屋、金券ショップ、コンタクトショップといった感じでみるからに過疎っている。これはコロナのせいではない。

ただ、2階には私の大好きな正文館書店がある。なぜ好きだったかは、そこへ行くまでは忘れていた。むしろ、店に入った時は、スカスカの本棚を見て「あれ?なんでこの本屋でいつも本を買ってたんだ?」と思うくらいだった。

正文館書店の本店は東片端、私の愛する喫茶店BONBONの近くにあって、国語の先生の言葉を借りれば、かゆいところにも手が届く品揃えが魅力。

正文館の社長ってのが、こりゃまたイカしたおじさんで、10年くらい前、ライブ後に今池のTOKUZOで飲んでいたときに席が隣になって、少し話した。何を話したかは覚えてないけど、TOKUZOに馴染みすぎていることだけは印象に残っている。

今日私が行った、千種のターミナルにある正文館は、なんというか、こじんまりとしている。ぱっと見た感じ、さびれた本屋にも見える。

教材販売が主にしているようなので、そもそも品揃えは良くない。

今日雑誌を買って少し本を見ようと思ったら、雑誌、漫画、教材、以外には特設の小さなコロナコーナーとあとはワンコーナーしかない。

「ここは本当に本屋なのか?」

とフロアをグルグルしても、漫画、雑誌、受験、以上!!

仕方ないので、普通の本(?)のコーナーを覗く。

その棚には小説やら、365日毎日読むと教養がつく本やら、幸せになるための教科書やらが雑多に並べられていた。 

たぶん、様々なジャンルの本を合わせて50タイトルくらいの本しか置かれていない。

にもかかわらず!!!

能町みね子「結婚の奴」
幡野広志「ぼくが子供のころ、ほしかった親になる。」

このラインナップよ!!(小説のラインナップも良かった)

だれよ、こんな小さな本棚の雑多な本をセレクトしたの。最高かよ。

だから本屋で本買うの好きなんだよ。よくここで本を買っていた理由を思い出した。

少なければ少ないほど、本屋さんの心が見える。本との出会いは恋愛のようなもので、数打てば良い相手に出会える訳ではなく、運命を信じるから運命になる。

「勇気をください」と願って本屋に駆け込んだ日のことが遠い記憶になっていたし、

「海行きたい!」「美容院行きたい!」

のように衝動的に思うことはなかったけれど、

私はずっと、本屋で本を買いたかったんだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?