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「秘神マターラ ~Hidden Star in All Seasons. 」の転調についてひたすら語る


前置き

どうも、Klavierです。またも前回の記事から日が空いてしまいすみません。この記事の内容は先月中にはできていたんですが、ヘッダーを描いてたらこんな日付になってしまいました。今後もヘッダーは描き下ろしたいんですが、いかんせん時間がかかるので悩み所です。
今回の記事はタイトルの通り、『東方天空璋』EXボス、摩多羅隠岐奈(真)さんのテーマ曲、「秘神マターラ ~Hidden Star in All Seasons. 」(以下、マターラ)の転調についてひたすら語る回です。
私の記事を初めて読むという方はまず、次の記事に書いてある諸注意に目を通していただけますと幸いです。

さて、マターラの話に入りますが、とりあえず原曲に寄せて採譜した楽譜がありますので、はじめにこちらをお聴きください。スマホで視聴する場合は右上の「…」から「ページ」を選択すると見やすいです。

コード進行もついでに分析してあるのでよければ何かしらの参考になさってください。これについても言えることは色々あるんですが、今回は省略します。以下のツイートのリプで大雑把に解説しているので気になる方はこちらをご参照ください。

曲構成

さて、始めにこの曲の構成について触れておきましょう。私は、マターラは以下の通りにパート分けできると考えています

  • イントロ:第1~10小節目

  • Aメロ:第11~26小節目 / 第43~58小節目 / 第75~91小節目

  • Bメロ:第27~42小節目 / 第59~74小節目

  • サビ:第92小節目~123小節目

順番としては
イントロ→Aメロ→Bメロ→Aメロ→Bメロ→Aメロ→サビ
と展開する感じです。Aメロを3回も経由しているので曲の展開は結構遅いですが、そうしてタメにタメた先にあのサビが来るのが本当にシビれます。

最初の転調

イントロはFmから始まっていますが、この調性が1回目のBメロまで続きます。とはいえBメロではエオリアからフリギアへの転旋が行われているので聴き味はまた変わってきます。
最初の転調は1回目のBメロから2回目のAメロに移行するにあたって行われており、転調後の調性はCmです。詳しく見てみましょう。
まず、第42小節目からメロディが「ACEGFECE|F~♪」(|は小節の変わり目/調号・臨時記号は省略)となっていますが、私はこの部分では「メインメロディは」まだ転調していないと考えています。…メインメロディは転調していないんですが、裏で流れてるオスティナートが完全にCmのそれになっており、第44小節目にはメインメロディもCmに転調しています。つまり、一瞬FmとCmが同居しているのです。
しかも、第43小節目でF(Fmの主音)に終止したと思われたメインメロディが、第44小節目でCmに転調してさらに展開されるというのがめちゃくちゃアツくて、「いや終止したんじゃないんかい!?」という意外性を持たせています。CmとFmはスケールの構成音が非常に近いので、人によっては第44小節目以降もメインメロディはFmに聴こえるかもしれません。
ということを踏まえると、ここの転調が完全四度下への転調である理由がわかるような気がします。先ほども述べたとおり、FmとCmのような完全四度(完全五度)の関係にある調は構成音が非常に近いので、同時に演奏してもさほど違和感がありません。これらの調同士がいかに近いかは五度圏を見てもらえば明らかだと思いますが、マターラではこれを利用してBメロから2回目のAメロへの移行を、転調もしながらスムーズに行っています。
これは完全に推測ですが、Aメロ→Bメロという流れをもう一度繰り返すに当たって転調することは先に決めてあって、しかしながらサビに入るときのようなインパクトは持たせたくない、となったときに神主が思いついたのが、以上のような「構成音が近い調を同時に演奏して転調をスムーズにする」という手法だったのではないかと思っています。

2回目の転調

2回目の転調は第59小節目で行われています。パートとしては2回目のAメロから2回目のBメロに突入するところです。Bメロはフリギアに移旋するので何もしなくても聴き飽きられるようなことはなかったと思うんですが、ここいらで何か衝撃的な展開が欲しいと思ったのか、何とCmからC♯mに転調しています。これは短二度上への転調で、いわゆる半音上への転調です。
半音上への転調は減五度(増四度)の転調に次いで遠い調への転調であり、かなりのインパクトを誇るんですが、それをここで使った理由はよくわかりません。いや、私ごときが神主の思考を推し量ろうとすること自体がかなり烏滸がましいことなんですが。神主のことなので「転調したら何か良い感じになったわ」くらいの心持ちなのかもしれません。
ともあれ、第59小節目以降しばらくC♯mが使用されるわけですが、特筆すべきは第75小節目です。2回目のBメロから3回目のAメロに移るところですが、何とここは転調していません!!!!
いやさっき(1回目の)Bメロから(2回目の)Aメロに移る時は転調してたよね!?
という困惑をよそに曲は進みます。同じBメロ→Aメロという展開でも、最初は盛り上がる展開だったので転調を使い、2回目は落ち着く展開なので転調を使わないという…なんという策士。この曲展開、本当に神がかってますね。

3回目の転調

そうして2回目のBメロと3回目のAメロがC♯mで演奏された後、満を持して転調し、サビに入ります。第92小節目に入るに当たって転調している訳ですが、ここはC♯mからEmへの転調となっており、短三度上への転調(平行調同主調転調)です。
拙著『東方紅奏論』でも書いたんですが、東方原曲の基本は短三度上/下への転調です。ここでは今までイレギュラーな転調を繰り返してきたことを踏まえて、あえて正統派の転調を行っている感じがします。個人的にはやっぱり短三度転調が東方原曲には一番しっくりきますね。

ループ時の転調

一応ループ時の転調にも触れておきます。
ループ時はEmだったサビからイントロのFmに戻るので、ここもまた短二度上(半音上)への転調ということになります。2回目のAメロから2回目のBメロに入る時と同じ転調です。
とはいえサビで一度曲が完全に終わっている感じがあるので、ここの転調は意図的なものではないと思います。半音違いの調になったのも偶然…だとは思いますが狙ってやってるとしたら凄すぎますね。

まとめ

というわけで、まとめると

イントロ・Aメロ(1回目)・Bメロ(1回目):Fm
-[↓4(↑5)]→
Aメロ(2回目):Cm
-[↑♭2]→
Bメロ(2回目)・Aメロ(3回目):C♯m
-[↑♭3]→
サビ:Em
-[↑♭2](ループ)→
イントロ:Fm

という転調になっていました。
なんというか神主の調選びのセンスには脱帽です。これだけ転調してきちんと曲としてまとまっているっていうのがまずおかしい(褒め言葉)。しかもこの曲、東方原曲としては転調が多い方でもないのがまた…。私は音楽に関しては完全に趣味で、さほど界隈に踏み込まず浅瀬でチャプチャプしてるだけの人間ですが、それでもこういう曲を聴くと音楽をやるモチベーションがめちゃくちゃ湧いてきます。
参考文献は以下の記事にまとめてあります。今回の記事では全てを参考にはしていませんが、併せてご覧ください。

すごく好きな曲なので、転調について書いただけなのにちょっとしたレポートくらいの長さになってしまいましたが、たまにはこういうのもいいですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。ではまたどこかで。

2023/06/25 「秘神マターラ ~Hidden Star in All Seasons. 」をヘビロテしながら


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