リンゴの木

 「アイザック・ニュートンが、リンゴの木から実が落ちるとのみて、万有引力を発見した。」という話は有名ですが、「ニュートンがリンゴの木のもう一つの不思議に気付かなかったのは残念だ」とジョークのようにいっている人がいます。『量子力学で生命の謎を解く』の著者二人の何れかです。

 もう一つの不思議とは何かというと、リンゴの木がどうして生まれるのかということ。考えてみると実に不思議なことです。そして、何が変化してリンゴの木になったのかを考えるともっと不思議に思えてきます。

 リンゴの木に限らずほとんどの植物の成分は炭素です。大ざっぱに言うと、炭素がもととなって、いくつかの原子を含んでつらなったものが植物だといえるでしょう。この炭素、どこから来たと思いますか?土の中から?いえいえ、土から吸い上げているのは、水や養分となる無機物です。炭素は土から受け取っていません。

 光合成ということばを聞いたことがあると思います。植物は、空気中の二酸化炭素を吸って、酸素を吐き出し呼吸しているというあの光合成です。光ということばが付いているのは、光がなければこの呼吸は成立しないからです。つまり太陽光があって、はじめて木は生長できるのです。

 では、炭素はというと、そう、空気中の二酸化炭素から取り込まれるのです。つまり、目に見えない空気中の二酸化炭素が、かたちを変えて木になっているのです。

見えないものがかたちになって私たちの目の前にある。こう考えると非常に不思議です。どうやって、二酸化炭素が木に変わるのでしょうか?一言で光合成といっていまえば簡単ですが、実際に光合成の過程は、いまだにわかっていないようです。だから、再現できていない。20世紀の偉大な物理学者リチャード・ファイマンは、『再現できないということは、理解できていないということだ』といっていたそうです。

 そう考えると、我々は植物というものをまだ理解できていないということになるのかもしれません。

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