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ジオラマボーイ・フォーエバー ~鈴木“KINK”均が語る、変わらぬ音楽愛と変わり続けるスタイル 『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』リリース記念インタヴュー

KKV Neighborhood #147 Interview - 2022.09.08
VA『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』 interview by 田中亮太

DECKRECの主宰にして、TOY楽器でロックンロールを演奏するバンド、CHILDISH TONESを率いているネモト・ド・ショボーレ。彼が、LEARNERSやカジヒデキなどの作品で知られるデザイナーの鈴木“KINK”均ことKINKとともに運営しているKiliKiliVilla内のサブレーベル、BOOTRECからコンピレーション『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』がリリースされた。

RINDA&MARYA、CAR10、Petersfield、KETTLES、 BLUEVALLEY、CHILDISH TONES feat.宇佐蔵べに、LEARNERS、FLASHLIGHTSの8組が楽曲オリジナル曲とカヴァーを提供(FLASHLIGHTSはオリジナル曲のみ)。バンドの世代や活動拠点のみならず、インディーやパンク、ロックンロールとサウンド面でもさまざまながらも、微笑ましさを湛えたローファイな感覚は全組に共通している。ここで紙資料にあるネモトの言葉を引用したい。

僕とKINKが共有してた感覚で耳に引っかかるバンドは、国内外問わず、50’Sの甘いポップスとロックンロール、60’Sのスタイリッシュで暴力的なビート感、70’Sパンクのファストな衝動とスピード感、80’S NEW WAVE~90’S ギターバンド的なメランコリックなメロディ、キラキラしたサウンドや青くささを持ちつつ、ローファイ感というかガレージ的な質感みたいなものを感じるサウンドが多かった。

『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』には、まさにネモトの表現するこれらの質感が通底している。このコンピを指して、インディーやアンダーグラウンドの最前線と切り取りとるのは正しくないだろう。ここには新しさや古さといった価値観を飛び越えたフレッシュさやロウな感覚がある。本作に収録された15曲のすべてから、どこかの街に暮らしている誰かが、いままさに鳴らしたばかりのような音が聴こえてくるのだ。そして、それはとてもキュートでユニーク、そして三―ティーでビ―ティー、(ときおり)ビッグでバウンシー……。

今回は『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』の監修者のひとり、KINKにインタヴュー。デザイナーのほかにもDJやオーガナイザーなどいろいろな立場で音楽に関わり続けてきた氏ゆえに、まずはその半生から振り返ってもらった。

――KINKさんはDJやレーベルの主宰などいろいろな立場で音楽に関わられていますが、メインになさっているのはグラフィックデザインですよね。デザインの仕事はどのようにはじめられたのでしょうか?

「90年代の前半には自身のDJイベントも始めていたので、そのフライヤーを作っていました。当初はコピー機やワープロやインスタントレタリングを使用したDIYな切り貼りでのデザインだったんですが、パソコンの普及やフルカラー印刷の低価格化といった時代の変化のただなかで、独学よりも基礎は学校で学んだ方が早いと思い、専門学校に入りました。そこではデザインだけではなくマルチメディア全般について学びました。その頃は毎日レコード屋に通い、週末はDJといった感じで、楽しい日々でした。マックを使用してのデザインに移行する中で、当時よく一緒に遊んでいた杉浦くん(英治、SUGIURUMN/ THE ALEXX)のジャケットをデザインさせていただいたのが仕事としては最初です」

――杉浦さんのどの作品ですか?

「SUGIURUMN名義でのファースト・アルバム『LIFE IS SERIOUS BUT ART IS FUN』(99年)です。元々杉浦くんとは90年代の半ば頃に当時のスターウォーズのフィギュアなどおもちゃ好きとして仲良くなったこともあり、音楽だけではなく、映画やおもちゃも通じて感覚を共有していました。このアルバムの初回盤も真っ赤なプラケースにタイトルロゴをシルク印刷した、モノとして雑貨的とも言える特殊仕様でした」

――90年代前半に作られていたフライヤーは、どういうデザインのものが多かったんですか? テイストとして影響を受けたレーベルの作品や特定のデザイナーなどがあれば教えてください。

「無知ゆえの初期衝動でお恥ずかしい限りですが、当時のインディー……ジーザス&メリーチェインやソニック・ユースのビジュアルイメージが好きでしたので、最初はAndy Warhol的なアメリカンポップアートをJamie Reid的なパンクな手法でやりたかったんだと思います。また、時代的にはアシッドハウスからの影響も入っていると思います。学校で学ぶことも含め、ちゃんとやりたいと思った頃に特に影響を受けたのはMike Mills。フィジカルリリースの物作りにおいてはレーベルではMO’WAXの作品に憧れていました。他にもDaniel Burenが1995年に青山のコム・デ・ギャルソンで行った展示には言葉に出来ないほどの感銘を受けました」

――これまでご自身で手掛けられてきた音楽関係のデザインワークで特に気にいっているものはどれですか?

「カジヒデキ『BLUE HEART』(2012年)、NONA REEVES『POP STATION』(2013年)。2011年の東日本大震災というのは、自分にとっても大きな出来事で、先の見えない不安の中で自分と向き合い、いろいろ考えるきっかけにもなりました。アーティストの方々もそれぞれにそうだったのではないかと思います。そこで作られた作品ありきにはなりますが、今思うとこの時期から自分の作風も以前よりも強度を意識したものになったと思います。これら2作以外でも特にこの時期に手掛けた作品はどれも自分のそうした意識と合致しているように思えて印象深いです」

ーー〈強度を高める〉という点で具体的にどういう作業/こだわりが必要になるのでしょう?

「作業的には、視覚的な情報を必要最小限まで削ぎ落とします。情報を増やすよりも、本当に伝えたいことだけに絞った方がより伝わる強いイメージになります。当たり前のことですが、震災後はそのことをいっそう意識するようになりましたし、その表現に適した作品も多かったのだと思います。

あとはLEARNERSのファースト・アルバムもすごく大事な作品です。あのアルバムのジャケットは、例えば20年後にどこかで再発見されたときにも音源の初期衝動の熱量と共に新鮮な輝きを失わないことをイメージしていました。リリースから7年経とうとしていますが、その意図は間違っていなかったんじゃないかと思っています」

――美意識や哲学を形成してくれたという面で、もっとも影響の大きいミュージシャン/バンドは誰ですか?

「僕は所謂MTV世代で小学校高学年の頃にデュラン・デュランやカルチャー・クラブといった当時の洋楽から本格的に音楽にのめり込むようになるのですが、影響の大きさで言えば、中学生の頃に大好きだったラフィン・ノーズ。それから、シャムズという当時東京で活動していたパンク・バンドには音楽、ファッション、アート、アティチュードとあらゆる面で影響を受けました。シャムズは映画「レポマン」のテーマ曲であるイギー・ポップ“Repo Man Theme”を映画のオープニングと同様に歌抜きのインストバージョンでカバーしていたのですが、そういったDJ的なセンスにも強く影響を受けたと思います」

――最初にハマったシーンやムーヴメントは?

「ラフィン・ノーズを入り口にして、より専門店的なレコードショップやライブハウスに出入りするようになるのですが、今思えば、当時のインディーズ・ブームにも強く感化されていたのだと思います。今も手元に残っているのですが、これは僕が中学2年のときに86年のラフィン・ノーズの日比谷野音でのライブでもらった明治大学生田祭のフライヤーです。このイベントは当時大学生だった現KiliKiliVillaの与田さんの企画でした。

今の僕たちの活動と照らし合わせてみても、当時のシーンやインディーレーベルの自由な空気や熱量には惹かれ、憧れ続けているのだと思います」


――ラフィン・ノーズのライブに行くような中学生がその後はどのような青春時代を過ごしたのでしょう?

「80年代の10代の頃はライブハウスに出入りしつつも、特に洋楽に関してはまだ深いところまでは全然分かっていませんでした。パンクもニューウェーブも初期ストーンズやサイケもごちゃまぜで興味の赴くまま節操なく聴いていて、リアルタイムのインディーも雑誌で話題になっているバンドをピンポイントで聴いていたという感じでした。NHK-BSで放送されていた〈トランスミッション〉でシーンやその周辺の繫がりなどがわかりはじめ、ようやく全貌が掴めてきたんです。それから番組で気になった曲を探しに行くようになり、徐々に輸入盤の新譜をチェックする為にレコード屋に通うというルーティンになるのですが、その頃はまだ自分の周りにはその周辺の音楽の話できる人も、詳しく教えてくれる人もいなかったですね。今では考えられませんが、リアルタイムのインディーを映像で知れるというのは、本当に有り難かったです。

ただ、まだ音楽に詳しくなかった頃の知らないがゆえの宝探しのようなワクワク感も今回の『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』においては重要な感覚だとも思います。

80年代の終わり頃は1年くらいバンドにも参加していて、元々はレコード会社や音楽雑誌の方などが当時のバンドブームに便乗したお遊びのようなスタンスで組まれたバンドで、僕も若かったので、毎月代々木のチョコレートシティなどでライブをできるだけで嬉しかったですし、楽しかったです。でも、自分はフレッシュ・フォー・ルルやメリーチェインみたいなバンドがやりたかったはずなんだけどな……と思ったりもしていました(笑)。

そんな矢先にアルバムリリースのお話もいただいたのですが、お世話になっていた音楽事務所の方から〈これ以上やるとシャレじゃ済まなくなるから断った方がいい〉との助言を受けて断り、それを機にそのバンドは辞めて本当にやりたいことをやろうと思いました。

新たに自分のバンドをやりたかったはずなのですが、マッドチェスター!な時代の怒涛のリリース・ラッシュを夢中で追いかけてるうちに気付けばDJをやるようになりました。同じ音楽を同じように好きな人達と一緒にリリースされたばかりの話題の曲を大音量で聴けて踊れる喜びが、何よりも大きかったのだと思います」

ーーついにDJのKINKさんが誕生したわけですね。当時のクラブの雰囲気はどんなものでしたか?

「インディーロック系のクラブイベントについては、ブリットポップを境に普通の人も遊びに来られる雰囲気ができ、一般的にも認知されたのではないかと感じています。その少し前の前夜とも言える時期に後にSNOOZER(クラブ/雑誌)に合流する村(圭史)くんや唐沢(真佐子)さん、POP69のお二人などなどにも出会っていました。

ちなみにその頃に存在として一番インパクトがあったと記憶しているのがライドです。彼らは海外のバンドで初めて自分と同世代と思える、新時代の新世代の登場という印象でした。僕はプライマル・スクリームの初来日を見逃しているのですが、それ以上にライドの1990年の初来日公演は知り合いからどれだけ凄いライブだったか話を聞き、これは絶対行かなくてはいけなかったライブを見逃してしまった!と大後悔したことことを覚えています。幸いライドはその半年後には再来日を果たし、すぐにクラブチッタで観ることが出来たのですが、その日のフロアにはその時点ではまだ出会っていないチャべ(松田“CHABE”岳二、LEARNERS)くんもいたそうです。


加えて、当時はリアルタイムのインディーに夢中になりつつも、オリジナルパンク期のアーティストもやっぱり好きでしたので、ラモーンズやクランプス、クラッシュのポール・シムノンのバンドのハバナ3AM、ダムド、ストレイ・キャッツ、ドクター・フィールグッド、ウィルコ・ジョンソン・バンド、それから最後の来日となってしまったジョニー・サンダースのライブなどにも足を運んでいました」

ーー〈VEGAS〉や〈BLUE BOYS CLUB〉などKINKさんは、DJとして各時代にさまざまなパーティーをオーガナイズしてきました。これまでにどういうパーティーをやってきたのか、音楽的な特徴や雰囲気を紹介してもらえますか?

「リアルタイムでその時々で海外で起こるムーブメントに触発され、寄り添いながらDJ活動をしてきたように思います。ブリットポップ期はノーザン・ブライトの新井(仁)くんとの〈LONDON LOVES〉、ビッグビートやフレンチハウス期はスギウラムと曽我部(恵一)くんとの〈VEGAS〉、エレクトロ経由でインディーに回帰した頃は仲(真史)くんの〈EVERY CONVERSATION〉のパーティーに一年限定で参加し、2008年からは当時のロンドンのインディー・クラブ・シーンに影響を受けたカジ(ヒデキ)くんとの〈BLUE BOYS CLUB〉をはじめて現在も継続中です。つまり、ある意味ではずっと洋楽至上主義だったとも言える価値観を持っていたのですが、それを根本から大きく変えられたのがブラック・リップスとの出会いでした」

ーーKINKさんのレーベル、Alphavilleからブラック・リップスの4作目『Good Bad Not Evil』(2007年)をリリースされていましたね。

「海外での最先端として惚れ込んだブラック・リップスを日本で紹介したいと思い、リリースとツアーを企画したのですが、実際に彼らを会い、彼らのルーツが日本のガレージ・バンドだと知ったことで、日本人のポテンシャルに気付かされたんです。そのときから自分のマインドは180度変わりました。

具体的には、海外で流行っているものをそのまま持ち込むようなそれまでのやり方はやめようとか、誰もやっていないことをやろうとか、そんな感じに考え方がシフトしました。

そうした意識の変化に直面しつつ、チャべくんがkit galleryを作り、個人的にもこれからどうしようかな?と模索していたタイミングで震災が起こりました。その頃から、再会したネモトさんとの交流が本格的に始まりました。

当時ネモトさんが手がけていた住所不定無職のイベントにDJとして誘ってもらい、出演するようになりました。住所不定無職の作品やイベントを通じてのチャべくんやカジくん、下北沢THREEも交えてのこの頃の交流ががその後のLEARNERSやCHILDISH TONESの登場とKiliKiliVillaとの合流、FEELIN’FELLOWS、そして今回の『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』に直結したと考えています」

――KINKさんはネモトさんのどんなところに魅力を感じていますか?

「ネモトさんのバンド名にもある通り〈チャイルディッシュ〉を、自身のバランスにおいても最も大事にしているのだと思っています。決して100点ではなく、そもそも100点が必ずしも良いわけではなく、ネモトさん自身が理想として求めているものがパーフェクトなアンバランスであり、そこを追求する上で必要不可欠な要素が〈チャイルディッシュ〉であることを他の誰よりもネモトさん自身が分かっているのだと思います。才能として〈チャイルディッシュ〉であるがゆえの審美眼やアイディアを持っていると思いますし、人懐っこさであったり、何事にも10代の頃と変わらぬ初期衝動的な情熱を持って向き合えているところが魅力だと思います」

――今回の『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』は、どういうきっかけで〈作ろう!〉となったのでしょう?

「ネモトさんと再会し、意見を交換したり、交流するようになってからリリースまでを考えるとすでに12年という決して短くない時間が経過しています。参加していただいたバンドとの交流も昨日今日に始まった関係ではなく、それぞれ長い時間をかけて信頼関係を保っているバンドばかりです。ですので、それぞれのバンドの個性を尊重したうえで、現在進行形で共感できるセンスを持ったバンドをコンパイルし、その感覚を作品やイベントとして提案したいと思ったのがきっかけです。現実的に作り始めた頃にイメージとして頭にあったのは、53rd & 3rdのコンピ『Good Feeling』(89年)やK Recordsのコンピ『International Hip Swing』(93年)などです。漠然とではありますが、様々な要素が混在しながら成立しているイメージを当初から持っていました。
 
また、これは10代の頃の刷り込みなのですが、僕自身はTHE BLUE HEARTSに深く入れ込んだことはなく、同い年のTHE BLUE HEARTSが好きな友人の付き添いで2度ライブを観た程度なのですが、当時の彼らの発言で〈テッパンモッカーズ〉というのがあり、うろ覚えではありますが、テッズもパンクもモッズもロッカーズもそれぞれに良いところがあるからそれの良いところ取りを(自分たちは)目指すという趣旨の発言だったと思います。このコンピを作るうえではこの発言も頭の片隅にありましたし、他のどこにもない混ざり方やバランスということを意識していました」

――収録した8組の共通点を挙げるとすれば?

「狙ったわけではありませんが、CAR10以外の全てのバンドが男女混合編成のバンドです。あくまでも音楽的に共感できるバンドを集めていますが、自然とジェンダーの面などにおいても近いバランス感覚を持ったバンドが集まることになったのかと自分自身も興味深く思っています。
 
また、先ほどネモトさんにとっての理想をパーフェクトなアンバランスだと言いましたが、個人的には〈ありそうでなかった〉というところなのかな?と思っています。このコンピに収録されている音源も、そのフォーマットこそはどれも決して新しいものではないと思いますし、新しい/古いではなく、〈ありそうでなかった〉ものにするアイデアやバランス感覚がおもしろいと思えるところであり、共通点なのかと思います」 

――幅広い年代のミュージシャンが参加した作品になりましたが、このコンピをきっかけにより世に名が広まるといいなと思っているバンドをあえてあげるとすれば? 

「コンピのリリースのタイミング的には、特に9月21日にファースト・アルバム『『BLUEVALLEY』がリリースされる名古屋出身のBLUEVALLEYは広く知られてほしいと思います。ミナタニキクミさんを中心とし、バンドでのライブの際にはベースレスでのユニークなアンサンブルで鳴らされるDIYでローファイなサウンドは独自のバランス感を持っており、自由さも感じますし、気持ちいいです。

当初から感覚的にも共感できる地方のバンドを知りたい、また、コンピに参加してほしいと思っておりましたので、彼らと出会えたことを嬉しく思っています」 

ーーPetersfieldはネットなどを探してみてもあまり情報がありません。ファズギターとドカドカしたドラムでこれぞローファイというサウンドが魅力的ですが、彼らはどういうバンドなんですか?

「Petersfieldは、同じく今回のコンピに収録されているFLASHLIGHTSと共に〈NEO CITY〉というイベント/レーベルを主宰し、活動しています。所謂アノラック期のインディーポップを彷彿させる感じもありますが、そこだけには収まらないガレージ感など、〈ありそうでなかった〉ハイブリッドなバランス感が『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』として共感できるところだと思います」

――7組がオリジナル曲とカヴァーを提供していることも今回のコンピの特徴です。こうした構成にした理由を教えてください。

「僕やチャベくんやネモトさんは、それこそ80年代のタイマーズをリアルタイムで知っている世代ですが、LEARNERSの“Teenage Kicks”あたりからあらためて日本語カバーおもしろさや可能性を意識するようになりました。その後のCHILDISH TONES feat. 宇佐蔵べにのスミスのカバー“Ask”では、Magic, Drums and LoveのYURINA da GOLD DIGGERさんが手がけた日本語の歌詞をはじめ、音源、ジャケット、MVに至るまで、すべての要素が相乗効果を生み出し、チームとして素晴らしい作品を作ることができたという手応えを感じました。作品に関わった人たちがそれぞれに原曲に向き合ってどうするかを考えたと思いますが、原曲の世界観はそのままに、ユリナさんによる歌詞の“Ask”を宇佐蔵べにさんが歌うと岡崎京子さんの作品の世界のようにも感じられて感激しました。

この作品を通じての体験から、カバーは原曲を超えることはできないけれど、その世界を先に押し進めて広げることはできるのではないかと考えるようになり、更にマーク・ロンソンによるサンプリングについての考えを知り、カバー曲の可能性についても確信を持つようになりました。

ポップ・ミュージックの進化とまで言うと大袈裟かもしれませんが、マーク・ロンソンのサンプリング論と同様に、過去と現在を自由に行き来しながら、常に自分達が新鮮であると感じられるものをクリエイトし楽しむことができると思っていますし、『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』にもそういったイメージを持っています。そして、オリジナル曲は勿論ですが、カバー曲も同じくらい重要な表現であると考えています」

――今回提供されたカヴァーを聴いて、その原曲とのギャップであったり解釈のフレッシュさであったりで、特におもしろいと感じたものはどれですか?

「どれも本当に素晴らしいですし、FLASHLIGHTSに関してはバンドのポリシーからオリジナル曲のみの収録となっていて、そのスタンスもまたメッセージになっていてかっこいいと思っていますが、個人的に新鮮に感じたのは RINDA&MARYAの”EVERYBODY’S HAPPY NOWADAYS”です。これまで散々聴き込んだ曲なのにRINDA&MARYAが日本語で歌うだけでこんなにも新鮮に聴こえるんだ!と驚きました」

――InstagramにCAR10の楽曲をあげて、〈“いろんな君がいて良い”というタイトルこそが『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS! 』にとっていちばん大切なところかもしれない〉と書かれていましたよね。たえず変化し続け、かつ矛盾を抱えた存在である自分や他者を肯定する姿勢も音楽やアートから学んだものですか?

「今は〈これをやってはいけない〉というようなあらゆる縛りを取り払うことから考えはじめたいというか、それでこそ楽しくておもしろいことが出来ると思っています。若い頃は真逆で頑固でガチガチでした(笑)。
 
でも、プライマル・スクリームの『Screamadelica』のような、ロック・バンドが原型を留めていないような領域に踏み込んだ作品にこそ強く影響を受けたと思いますし、憧れていましたので、今になってやっと心に素直になれた気がします。理想にも近づけたのかな?と思いますね」

『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS! 』KKV-128VL

<SIDE A>
01. CANDY SUPERMAN / RINDA&MARYA(オリジナル曲)
02. いろんな君がいて良い / CAR10(オリジナル曲)
03. I'm Not Sayin' / Petersfield(NICOカバー)
04. INDIAN SUMMER / KETTLES(Beat Happeningカバー)
05. Caribbean Moon / BLUEVALLEY(Kevin Ayersカバー)
06. NIGHT & DAY / CHILDISH TONES feat.宇佐蔵べに(オリジナル曲)
07. Shout! Shout! (Knock Yourself Out) / LEARNERS(Ernie Maresca/Rocky Sharpe & The Replaysカバー)

<SIDE B>
01. twinkle winter day / LEARNERS(オリジナル曲)
02. Signal / BLUEVALLEY(オリジナル曲)
03. Lazy Sunday / Petersfield(オリジナル曲)
04. Starlight / FLASHLIGHTS(オリジナル曲)
05. In the Street / CAR10(Big Starカバー)
06. TOP SECRET MAN / CHILDISH TONES(PLASTICSカバー)
07. EVERYBODY’S HAPPY NOWADAYS / RINDA&MARYA(BUZZCOCKSカバー)
08. 突き抜けて / KETTLES(オリジナル曲)

LP発売中

カセット発売中


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