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Pervenche 『quite small happiness』 ポストパンクのビッグバンから飛散した胞子の一粒、実験性と優しさが同居したフォークロック・アルバム by 薄田育宏
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Pervenche 『quite small happiness』 ポストパンクのビッグバンから飛散した胞子の一粒、実験性と優しさが同居したフォークロック・アルバム by 薄田育宏

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KKV Neighborhood #129 Disc Review - 2022.05.19
Pervenche 『quite small happiness』review by 薄田育宏

昨年末に名古屋のレーベル、Galaxy Trainより前作から実に20年振りとなる2ndアルバム『quite small happiness』をカセットテープで発表した4人組のバンド、Pervenche。その作品がこの度、新たにKiliKiliVillaレーベルよりアナログレコードとしてリリースされる。
Pervencheは元々、1995年に東京でその前身となるLo-Fiなアコースティック・フォーク・ユニットPeatmos名義で活動をスタートし、リーダーであるサイトウマサトは同時に自身の作品をリリースするためにClover Recordsを設立する。最初はダビングしたカセットテープを数本づつ都内の輸入レコード店を廻り委託販売で取り扱ってもらっていた。サイトウいわく「その頃はROIRみたいなカセットレーベルが好きだった」と回想する。ROIRとは言わずも知れた1980年代初頭のニューヨークのレーベルで、そのラインナップはスーサイドやバッド・ブレインズ、テレヴィジョン、レインコーツ、E.ノイバウテンなどパンク、ダブ、 レゲエ、インディー、インダストリアルまでポストパンクなアティテュードを軸に雑多なアーティストをリリースする魅力的なカセットレーベルだった。そんなサイトウが語る自身の昔話も今作の研ぎ澄まされたPervencheサウンドを紐解く上で重要な手掛かりとなってくる。彼らは自らのグループの説明に「タムもしくはスネアだけのミニマルなリズムセクションの上にクリーントーンのギターとイノセントなボーカルによるポストパンクから飛散した胞子の一粒、実験性と優しさが同居したフォークロック・バンド」と語っている。ここで言うフォークロックの意味合いは幅広く60年代のザ・バーズからレッド・クレイオラやザ・フィーリーズ辺りまでを指すと言う。その辺りのニュアンスも本作を聴けば納得するだろう。

2001年には自身のレーベル、Clover Recordsから 1stアルバム『subtle song』をリリースする。その後、何度かのメンバーチェンジを経てほぼ現在のラインナップ、ナガイマサコ(Vo)サイトウマサト(G, Vo)ナガイヒロシ(Pea,B)タカハシマサユキ(G, B)に落ち着き始めている。ナガイマサコは当時を振り返り「1997年頃に既にアメリカにPeatmosという同じ名前のバンドが居て、そのメンバーからクレームが来たので仕方なくバンド名を急遽、変えないといけなかった」と話す。Peatmosは1996年にU Sインディーレーベル”Sonorama Records ”から7”epをリリースしている。彼女自身、本職がグラフィックデザイナーであることから「アルファベットの響きは残すかたちで色の見本帳のカラーコードからPervencheを選んだ」と振り返る。Pervencheとは「とても淡い青紫系の色 」で以降、彼らのジャケットや周辺のデザインにはその色味がトレードカラーとして使われている。あとは彼女の好きなネコの姿も今となってはバンドの外せないアイコンとなっている(笑)。

今作のアルバムの1曲目を飾る『Be Long』の初出しは意外と古く、Clover Recordsから2001年にリリースされたコンピレーションCD『pop jingu vol.3』に収録されている。当初はザ・パステルズを思わす柔らかなギターポップなアレンジだったが今作ではドウルッティ・コラムやフェルトという80年代のポストパンクなバンドがヴェルヴット・アンダーグラウンドの曲をカヴァーしたかの様な深いサイケデリックなムードを強め、その幽玄なギターサウンドは、この種のバンド好きには悶絶必至と言えるだろう。

この辺りのギターの音質設計にはタカハシマサユキの手腕が大きい。彼も元はClover Recordsから800 Cherriesの名義で作品をリリースする音響系ユニットとして以前は別のグループで活動していた。タカハシは2016年にPervencheに正式加入するのだが2005年頃までは札幌を拠点に活動しており、今作のレコーディングとミックスは彼がメーンで担当している。サイトウいわく「彼のレコーディングとミックスはリビングにチューブアンプを持ち込んでライブ録音したような親密さでいて蒼い炎のゆらめきを思わせる音像」と評している。その意味ではこれまでのPervencheサウンドに新たに空間的な音の広がりや奥行きを加えることに成功している。サイトウとは年齢も同じで聴いてきた音楽も似ており、タカハシいわく「初めてサイトウさんと話した時から趣味も似ていて、その時から不思議な信頼関係は生まれていた」という。またこのモノクロームな魅力を更に強力にしたヌーヴェル・ヴァーグ風なヤング・マーブル・ジャイアンツとも似た孤独と癒しを感じる『Be Long』のミュージック・ビデオも必見である。

さて今回のアルバムは先の『Be Long』を始め12曲中、5曲は過去のコンピレーションや1stアルバムに収録されていた曲のリアレンジとなり、他7曲が今作のために書き下ろされた新曲となる。その内2曲はカヴァー曲だ。1曲はA面に収録されているボブ・ディランの『I’ll Keep It With Mine』。ヴォーカルを担当するナガイいわく「ニコがカヴァーするこの曲を聴く度に何か、こうじゃ無いんだよな〜って思いもあって自分が歌った方がカヴァーのしがいがあるんじゃないか?」と感じたそうだ。またB面に収録されている70年代半のサイケ、アシッド・フォークの奇才、ピーター・アイヴァースの『Miraculous Weekend』も同様に聴いていて何か物足りなく感じるところを彼らが補完し再演している様子も面白い。こちらのアレンジも囁く歌声などはもはやPervencheのオリジナルと聴こえるくらいの素晴らしさだ。これらの選曲は「元々、カヴァー曲だけを演奏するイベントの企画が先にあったのだけれどコロナで流れてしまい、その時に候補として上がっていた曲」だと言う。これまでも彼らのカヴァー曲には定評があり1stアルバムにはサラ・レコーズのギターポップ・グループ、ザ・フィールド・マイスの『September's Not So Far Away』も収録されている。ディラン風なこちらのアレンジも最高だ。

またパーカッションを担当するメンバーのナガイヒロシは過去にレコード会社に長く勤務しておりアーティストの宣伝やレーベルのディレクター等も務めていた。その意味では彼の発言や審美眼には他のメンバーも一目置いていると言う。ナガイいわく「自分達としては何も変わったつもりは無くて、ただ年月や時間が過ぎた事でようやく自分達の演奏技術や録音のスキルが上達しただけ」と笑っている。こちらが今作のアルバムの感想を「表面は優し気に見えてその奥には狂気が潜んでいる感じですね?」と伝えるとナガイは「いや、ただ友達のいない感じなんですよ(笑)」と。続けてサイトウも「今回のアルバムは友達のいない人に聴いてもらいたい。それで何か感じてもらえると自分としては嬉しい」と言う。その裏に筆者は本作の手応えと自信を彼らが確信しているのだと強く感じた。

最後に今回、KiliKiliVillaレーベルから発売される彼らの2ndアルバム『quite small happiness』は先にカセットテープで発売されていたことは冒頭でも触れている。その際、封入されていた小冊子には多くのバンドやレーベル関係者が惜しみなく祝辞コメントを寄せている。彼らが20年振りに作品を発表する背景には盟友のRed Go-Cartや 後身バンドのSmokebees(現在は活動休止、メンバーはそれぞれdesksnail、h-shallowとして活動中)等からの後押しもあったという。本作を長く待ち望みアルバムを聴いた友人達は皆、一様に驚きアルバムを絶賛している。そんな中、今回、KiliKiliVillaレーベルよりアナログレコードの発売となる大きなきっかけを作ったのは、その冊子にもコメントを寄せている東京の伝説のネオアコ・バンド、Penny Arcadeの佐鳥葉子だった。彼らの新作をレーベルオーナーである与田太郎氏に推薦し聴かせたことから今回の話しが始まったと聞く。そんな逸話もまた東京の新旧インディーギターバンドの歴史を語る上でこの先、貴重なエピソードとして後世に語り継がれて行くのかもしれない。本作が皆さんの新たなスタンダードとなること、それこそが彼らのタイトルにもある「ほんの小さな幸せ」なのかもしれない。


40年後の遠い渚、もしくはノース・マリン・ドライブ。

ポストパンク以降脈々と流れ続けた地下水脈、変わらぬ気持ちによって濾過されたピュアなサウンドが2022年の東京にひそかに湧出。

ヴエルヴェッツ発ポストパンク経由ギター・ポップゆきの静かでながい旅


CDのDisc 1を封入したLP+CDと2010年に録音した未発表プロトバージョン、1stアルバムからのミッシングリンク『Another Quite Small Happiness』にプレ・ペルヴァンシュ Peatmosの音源を収録したCD2枚組が同時発売。

Pervenche『quite small happiness』
8月8日発売

KKV-138VL
LP+CD
3,850円税込

Pervenche『quite small happiness』
8月8日発売

KKV-138
CD2枚組
3,300円税込

LP+CDの予約はこちら
https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-138VL

CD2枚組の予約はこちら
https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-138

LP収録曲
Side-A

1. Be Long
2. Cat Horn(Good Night)
3. Blue Painting
4. I'll Keep It With Mine
5. Simple Life
6. Out of The Room
Side-B
1. We Surely Become Happy
2. I Think So
3. Miraculous Weekend
4. Fade Away
5. Quite Small Happiness
6. What's New

CD収録曲
Disc 1 収録曲

1. Be Long
2. Cat Horn(Good Night)
3. Blue Painting
4. I'll Keep It With Mine
5. Simple Life
6. Out of The Room
7. We Surely Become Happy
8. I Think So
9. Miraculous Weekend
10. Fade Away
11. Quite Small Happiness
12. What's New

Disc 2 収録曲
Pervenche - Another Quite Small Happiness
1. Simple Life
2. Quite Small Happiness
3. Cat Horn(Good Night)
4. Out of TheRoom
5. Mess
6. Blue Painting
7. Earl Gray Tea
8. What’s New
Peatmos - Watching Us With Archaic Smile
9. earl grey tea
10. many suns
11. to my little friends
12. mad cow disease
13. mess
14. picnic
15. d'yer wanna dance with kids
16. out of the room
17. blue painting
18. play the wind

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