Clover Records 初期音源配信リリースによせて by ウスイトモミ (recycledpop/red go-cart)
KKV Neighborhood #200 Column - 2023.12.12
Clover Records 初期音源配信リリースによせて by ウスイトモミ (recycledpop/red go-cart)
Clover Recordsの初期音源がこの冬続々と配信リリースされます。当時のメインフォーマットはカセットテープ。今でこそちょっとお洒落なアイテムですが、当時は、初期衝動しかない自分のアイデアを詰め込んだ音楽を伝える役目を背負う手軽な媒体として、ものすごくお世話になりました。それが配信される日が来るとは、感慨に浸ると同時に、Clover Records初代オーナー斎藤さんのコレクター気質&物持ちの良さに感謝の思いです。
今回配信されるrecycledpopは、Clover Recordsと出会う以前に誕生しました。今も活動が続くred go-cartベースのyujiが何かを爆発させてやり始めたバンドで、pixis, thee headcoats, pastels, sonic youth, そして忘れちゃならない2大巨頭kicking giantとtelevision personalitiesの音楽とスピリットを内包した、パンクなバンドです。ギターメンバーはいましたがドラマーがおらず、メンバー探しが面倒で私がやることになったような、、、もちろん初心者なので、バスドラを入れるとリズムが安定しないな、とか、見た目にもモーリンタッカー風でかっこ良くないですか?とスタンディングドラムになりました。ライブを観て気に入ってくれた人にあげたりしようと、デモテープのような1stカセットを作った頃に斎藤さんと知り合い、出来立ての音源を送ったら、すごく良かった!!!というびっくりマークがいっぱいの感想の手紙をもらってClover Recordsからリリースすることになりました。
初めて斎藤さんに会ったのがpastelsライブの後、というのも良き思い出です。仙台在住ですが、その後は東京に行くたび、新宿のレコ屋で合流(&散財)し、近くの飲み屋でぐだぐだ話しては仙台に帰る、というような生活が続きました。(斎藤さんを兄貴と慕うのは、この頃のキレのある斎藤語録のせいです)観たいライブに合わせて上京→レコ屋でライブ情報入手→ライブはしご→寝ないで帰るという行程もよくやりました。感性に任せたバンドでしたが、その感性の研ぎ澄ませ方がタフでした。この時に(図らずも)いまに繋がる土台が築かれてしまった気がしてなりません。
さて、Clover Recordsの初期のバンドに数多く関わっていた斎藤さん、中でもpeatmosは、sarah records直系のような良メロディにK labelのDIYな手触りを掌で掬い上げたようなバンドで、私の一番のお気に入りでした。太陽って暖かいよね?水って光が射すときらきら光るよね?みたいな感じ。答えを持たなくていい世界が当たり前にそこにある曲、本当に大好きです。斎藤さんが曲を作っていると初めて知ったときは軽く衝撃を受けましたが(当時の斎藤さんやや強面でした)こんな曲を作る人がオーナーなら間違いないなと直感で思えたものです。のちにpervencheと名前を変え、日常のどんな瞬間にも潜んでいる幸せや悲しみを、マッチに火を灯すような繊細さで聴かせてくれるバンドとなりました。今も同じ視点と感性を共有しながら並走してもらえているのは、奇跡のような必然のような、とにかく幸せには違いないなと感じています。
もうひとつClover Records初期の看板バンド、800cherriesのお話を。recycledpop結成前夜の1992年、大学を卒業し仙台から札幌に移り住んでおりました。北の大地と思われがちな北海道ですが、札幌は大都会。タワーレコードも広かったし、UKエジソンもあった、そして玉光堂という楽器屋兼レコード屋には充実のインディーズのカセットコーナーがありました。厚紙にカラフルな文字が印字されたジャケットが並ぶワクワク感、可愛くパッケージされたインディーズのカセットが、ちゃんとしたお店で、メジャー音源と同じラインで売られている…!DIYの何たるかを考えはじめた私の目がキラリと光りました。
その中でひときわ目をひいたFRACT UP!というコンピレーションカセット、このカセットとの出会いが全てのはじまりだったと言っていいかもしれません。聴き始めたばかりのheavenlyやteenagefanclub,my bloody valentaineみたいな音楽を自分たちで奏でているバンドばかりが収録されたカセット、同じ感覚を持った人が日本にもいることを肌で感じ、こういうかっこいい活動を自分もはじめてみよう!とスイッチが入った瞬間でしたから。そのカセットには、後に800cherriesとなるマナミさん、タカパシさんのそれぞれが所属するバンドの曲も収録されていました。二人ともすでにそのかっこいい文化圏の住人だったのです。
800cherries以前のふたりの感覚のどこかをキャッチして自分の中に摂り込んだと思う時、Clover Recordsやgalaxy train(90年代から続く名屋発世界行インディレーベル、祝25周年!)から同時期に作品をリリースするレーベルメイトとなり、札幌や東京で対バンした時、そしてpervencheに加入しギターを弾くタカパシさんと自主企画イベントmelodycatでライブを一緒にやっている今…不思議な縁を感じずにいられません。
シロツメクサの輪っかを編むみたいに、あっちこっちにはみ出しながら進んできたClover Recordsでしたが、ここにきて大きな花冠になってた!そんな気分の今回の配信リリースです。しかし何といってもCloverはKing of 雑草。始まりも終わりもなく、また、わさわさしている声が聞こえます…!
Clover Recordsカセット再発第二弾!
red go-cart / Singin'up To The Star
KKC-006CA
カセット+DLコード(Bonus Trackとして2000年8月12日開催「Clover Chat! #813 Pop Jingu Spesial?」のライブ音源を収録)
オリジナルリリースマスターからのリマスター音源使用。
2,200円税込
収録曲
Side A
1.see you tomorrow in the adventure
2.tiny star
3.clover
4.set sail for the rainbow
Side B
1.twinkle
2.森をぬけて
3.crying room
4.winter work
1988年よりウスイユウジとウスイトモミの2人が、多重録音による音源リリースをスタート。国内外を問わずインディ誌等に多く取り上げられるうちに話題を呼び、メンバーを4人としライブ・バンドへと活動の幅を広げていき、現在に至る。仙台在住。大ヒット作のファースト・アルバム「skip and make it flower」から2年振りのファン待望のセカンド・アルバムが遂に完成。米レーベルKに通じるパンク精神を持ちつつもかわいく繊細な感性で、ジャパニーズ・インディポップの代表格として海外にもファンが多く、リリースのオファーが絶えない彼らがホームレーベルであるクローバーからこのアルバムを発表。
今作品は米レーベルRadio Khartoumオーナー、Alexanderからの「red go-cartは長靴下のピッピのイメージだ!」という一言がきっかけで今回のアルバムのトータルイメージが決まりました。ピッピの世界にインスパイアされて生まれた曲たちです。また、彼らの魅力である「疾走感と素朴さ」「懐かしさや切なさ」が印象的なメロディに乗り、言葉では表せないファンタジックな世界へ連れていってくれるのです。
800 cherries / romantico
KKV-162VL
限定クリアグリーン・アナログ盤+DLコード
4,400円税込 4,000円税抜
収録曲
Side A
1.painty paint pots
2.romantico
3.rainy poppy field
4.b.b.v.u. (give me give me)
5.planc-tone
6.through
Side B
1.la pa ti ta
2.honeydew blue
3.frozen (snow, snow, snow)
4.everybody knows ’98 ~ aoringo
5.here she comes now (cover of The Velvet Underground’s song)
red go-cart / Skip And Make It Flower
カセット+DLコード
KKC-004CA
2,200円税込
1996年よりウスイユウジとウスイトモミの2人が、多重録音による音源リリースを目的としてスタート。1996年Clover Recordsから1stカセットテープEP『sweets consists of red go-cart』をリリース。1995年から活動しているウスイユウジのバンドRecycledpop、ウスイトモミ発行のファンジン「pastels badge」とともに国内外を問わずインディー誌などに多く取り上げられ話題を呼ぶ。仙台で制作しつつ、東京を中心にライブ活動も開始。1999年1stアルバム『skip and make it flower』をリリース。インディー・レーベルKへリスペクトを捧げるパンクスピリッツを持ちつつも可愛く繊細な感性で、ジャパニーズ・インディー・ポップの代表格として海外からの支持も厚い。Talulah Goshのような疾走感と素朴さ、Moving Picturesのような懐かしさや切なさが詰まった印象的なメロディはまさにポップの王道!
Pervencheの斎藤が今回リマスタリングしたマスター音源を使用。
DLコードにボーナス・トラックとして、800 cherriesやadvantage Lucyも出演したレコ発イベントCLOVER CHAT! #806のライブ音源を収録!