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800 cherriesとあの頃(前編)800 cherriesリマスター配信に寄せて by サイトウマサト

KKV Neighborhood #155 Column - 2022.12.16
800 cherriesとあの頃(前編)by Pervence/Clover Records サイトウマサト


800 cherries 1996

800cherries全アルバム、リマスターバージョン配信リリースにあたり、オリジナルをリリースした頃の話を書くことになりました。

とは言え、昔のことを思い返したりする方では無く、ましてや詳細な記録を残すタイプでもないので、ぼんやりとした記憶をつらつらと書いてみることにします。とりとめのない文章になりそうですが、お付き合い頂ければと思います。データ的な裏付けもとっていないので後日関係者から添削が入るかもしれませんが(汗)。

最初にチェリーズを知ったのは26年前になると思います。

その頃、僕はカセットテープレーベル Clover Recordsを始めた頃でした。同じ頃に活動を始めた名古屋のGalaxy Trainやファンジンライターの方々を通じてチェリーズの存在を知ったのではなかったか…。確か、ファンジンライターのイワタさんがチェリーズを大推薦してくれたのが一番のきっかけだったと思います。


piccolo 1999

おぼろげな記憶ですが、チェリーズが自身でリリースしていた1stアルバム Piccoloをカセットテープでダビングして送ってくれたのではなかったか…。余談ですが、その頃はカセットテープが実用メディアとして活用されていた最後の時期だったと思われます。しかし、26年たった今でもカセットテープは存在しているこの事実。それはどうでも良い話として、チェリーズに戻ります。最初にカセットテープを再生して流れてきた時の驚きと興奮、何て言うのかな、キラキラした甘味なテイストに思いきや、食べたら舌が痺れそうな毒気も含んでいる、曲のメロディーとオルガン系の楽器を効果的に配したアレンジも当時のStereo Lab系のMoog使いバンドとの同時代的な共通性もありつつ、しかしビートのエッジが立っていないアレンジとミックスに特殊性を感じた、そんな記憶が微かに蘇りました。あ~、真似した音楽をやってないな、この人達は、と。

そして、彼らが僕と同郷の北海道の人たちで、札幌で活動していると。世代も僕とほぼ同じ。ヨーロッパ的でありながら、日本的な感触も感じるマルフジさんのメロディーラインにも共感を覚えました。

そんなこんなで、確かチェリーズメンバーのタカハシ君へ突然電話をしたのではなかったか。未だインターネット普及創成期でありまして、電話とFAX、そして郵便が主な通信手段だったのです。Clover Recordsでも海外から突然FAXで注文が届いたり、更には国際電話で英語(フランス語だったり)で話されたり、といったことがありました。また、話がそれましたが、その時はタカハシ君と長電話をしたような。で、彼らのアルバム PiccoloをClover Recordsからライセンスリリースさせてもらうことになりました。ライセンスリリースなんて言葉もカッコ良いなぁ、なんて思いながら。Clover Recordsは完全ローファイ、多作、録音完成即リリース、みないなコンセプトでしたので、それに比べてチェリーズの完成度の高いパッケージはそれ迄のレーベル内では異色だったと思います。1999年8月、カセットテープのNo.27としてリリース。この頃はまだカセットテープを自分でダビングしてリリースしていました。チェリーズの前No.26がMaplesのリリース、後にLucy Van Pelt~Advantage Lucyへと至る彼らのリリースもそれまでの流れからの広がりを予兆しています。今思い返せばでして、その当時は全く気にしていませんでしたが。で、Piccoloの次No.28がRecycled Popなんですね。Kレーベルに通じるローファイ・ガレージ、彼らにも痺れまして、その後、Red Go-Cartへと発展した彼らとも未だに一緒に活動を続ける仲です。No.31がLucy Van Pelt、No.32がRed Go-Cart、そして次のNo.34がPervencheの前身であるPeatmosのリリース。この約20年後にタカハシ君はPervencheのメンバーとなる数奇な運命。

話を戻して(?)、Clover Recordsの活動もこの頃に転機を迎えて初の7インチをリリースします。チェリーズのシングルdizzy dizzy dizzyです。1998年1月、あれっ?Piccoloより前だったようです…。最近、高円寺DISQUES BLUE-VERYでのDJイベントで流れているのを聴きまして、大事にしてもらえているのだなぁ、と感慨にふけりました。この7インチシリーズはデザイン面での拘りもありまして、ジャケットスリーブが本格的なシルク印刷なのです。レーベルスタッフに加わっていたマサコ先生の渾身のデザインワーク。その後の7インチリリースの全て、かつイベントのポスターもマサコ先生デザインのシルク印刷で制作しました。マサコ先生は、その後Clover Recordsの主催、Pervencheメンバーとしての活動を越えて、ねこみみ編集部、寅さん関係、岩合光昭さんの写真集関係等での活躍見覚ましく。Clover Recordsでのデザインワークの評価にも光が当たるのではないかと密かに期待しています。話を戻しまして、この後にUSのSonorama Recordsが編纂したコンピレーションPop Jinguへ800cherries、Lucy Van Pelt、Red Go-Cart、Peatmosも収録されることになり、ここから大きく流れが変わっていくことになります。この続きは又次回...。

ここ最近、YouTubeで海外の若いインディーバンドがチェリーズの曲をカバーしているのを耳にして、時間と場所を越えて細々と、でも脈々と彼らの音が伝わっていることをとても嬉しく思います。僕はとても満足しています。チェリーズの皆も同じではないかと想像しています。でも、もしかするともっと世に広まるべきアーチストだったのではないか?との思いが頭をよぎりますが…。そんなこと言ってもね。

色褪せずに、いつまでも聴き継がれていくアルバムを4枚も残せたアーチストであること、それだけで尊敬の念を感じるし、彼らの活動に関われたことは幸せなことです。そして、タカハシ君とは今でもPervencheとして新たな音を模索する仲間として一緒に活動できているなんて、奇跡的です。

今回、Killikillivillaからリリース全曲をリマスタリングしての配信リリースとなりまして、かつて聴いて頂いていた方はもちろん、新たに耳にされる方々へも届くことを嬉しく思います。改めて彼らの作品を聴き返してみて、UK/USの英語圏の同時代のバンド達との共通点は大きいながら、そこには居ないパラレルワールド的な感触、デジャヴ感、レトロでいて未来的…、西洋でも東洋でもないハテナ洋、ハンドメイドのSF映画のような、そんなとりとめのない想いが巡ります。この次の作品が聴けるとしたらどのような音なのかなぁ…?そんな期待を抱きながら若い世代の音楽へも耳を傾けていきたいと思います。

Pervenche / Clover Records サイトウマサト


800 cherries 4タイトル2022リマスター配信中

800 cherries / 800 cherries (2022 Remaster)


800 cherries / piccolo (2022 Remaster)


800 cherries / romantico (2022 Remaster)


800 cherries / opuscula (2022 Remaster)


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