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BORIS『Heavy Rocks』 大文字「BORIS」の覚醒 ~ その後の路線のひとつを明確に示したマスターピース by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #130 Disc Review - 2022.05.31
Boris『Heavy Rocks』7'inch review by 長谷川文彦

Borisを初めて観たのは1995年のことだ。the原爆オナニーズの対バンで観たのが最初。その頃、原爆はよくLa.mamaでライブをやっていて、対バンで若いバンドがたくさん出ていた。ギターウルフやTEENGERERATEを初めて観たのも原爆の対バンでLa.mamaでだった。
その時、原爆のタイロウさんがBorisについて「新しいタイプのパンクロック」と言っていたのを覚えている。「新しいパンクバンド」ではなく「新しいタイプのパンクロック」というのが大事で、今までとは違う種類のパンクをやるバンドという意味だったと思う(のだけど、かなり前のことなので記憶はかなり曖昧だ)。実際にBorisは単純でわかりやすい普通の「パンクバンド」ではなかった。その時観たのライブの印象ももう微かな記憶でしかないけど、地を這うような轟音と時折突き刺さってくるギターの鋭さはだけは覚えている。
当時のBorisはどこにも属していなかったように思う。ヘヴィーロック、ストーナー、ハードコア。言いようによってはどこにいてもよさそうだが、どこにも当てはまらないような不思議なバンド、そんな風に捉えていた。

それがひとつの明確な路線を見せ始めていたことに気づいたのは2001年だった。最初に観た時と同じthe原爆オナニーズの対バンだったクアトロでのライブ。そこで観たBorisはそれまで知っていたBorisとは違っていた。はっきりとハードロックという輪郭を持った激しい音になっていた。
しかもそれは「極上」と言っていい凄いハードロックだった。この頃から彼らはハードロック路線の音のやるときは「BORIS(大文字)」、アンビニエントやアヴァンギャルドな音をやる時は「boris(小文字)」というバンド名の表記の使い分けるようになるが、大文字「BORIS」に初めて目の当たりにしたのがこの時のライブだった。それまでいろいろな方向に向いていた力をひとつの形に注いだ結果、ある種の怪物が覚醒した瞬間を目撃したような感じがした。自分の中でBorisが「不思議なバンド」から「カッコいいバンド」に変わったのがこの時だ。

翌年リリースされたアルバム「Heavy Rocks」。そのタイトル通りの音で大文字の「BORIS」の世界を余すことなく伝えているアルバムだ。大文字「BORIS」の路線を早くも決定的にしたと言える。WATAが使っているORANGEのアンプそのままのオレンジのジャケット含めて完璧な一枚。
アルバム全体のイントロダクションのような重たい「Heavy Friends」からの超キラーチューン「Korosu」への流れを最初に聴いた時に一撃で吹き飛された。今聴いてもそれは全く変わらない。
Borisの多面的に交錯する音世界の中のひとつの路線の起点になったマスターピースだ。

Boris30周年シングルシリーズ第1&第2弾は、アルバム『Heavy Rocks』(2002年)、『PINK』(2006年)から。
今回の新規カッティングにあたって、TDマスターまで遡ってリマスタリング。各アルバムの代表曲を2曲づつ、改めて7inchフォーマットでシングルカット。

6月10日発売 Heavy Rocks
KKV-139VL
収録曲
Side A : Heavy Friends 
Side B : Korosu
1,650円 税込

予約受付中!
https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-139VL

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