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Sarah Recordsについて vol.5 言葉にできない好きな気持ち by 長井雅子

KKV Neighborhood #152 Column - 2022.11.2
言葉にできない好きな気持ち by 長井雅子

「好き」と感じても、何者でも無い自分に自信が持てなくて、世の中が怖かったあの頃。傷つきやすいくせに強がっていて、だから、泣くことも多かった・・・。サラ・レコーズの音楽は、いつの間にか買い集めていたレコードの中にいて、聴くと、優しく涙を乾かしてくれる・・・そよ風のようでした。

サラを「好き」な人は自分の周りにはいなかったけれど、この広い世界のいたるところに少しずついることがわかり、全く違う生活を営んでいながらも似た感性を持つ人たちがいることに想いを馳せていました。その後インターネットの出現により、日本だけでなく、いろんな国のサラを好きな人たちと巡り会っていくことになるわけですが・・・ピュアな想いは、国境や時代も越え、損得を超え、上手い下手も関係なく、伝わることを教えてくれました。

確信は持てないものの、方向性がなんとなくわかったような気がして、絶望の中に希望を感じながら、ゆらゆらと揺れながら生きてきました。大げさかもしれませんが、当時も今も変わらずに、いつでも初心に戻れる大切な存在!それが、サラ・レコーズです。よく「初心」を忘れずにって言いますが、私の場合は、「ピュアな好きっていう気持ち」を忘れないでいようって思います。

クローバーからリリースしたThe Field Mice “Where'd You Learn To Kiss That Way?”の日本盤


極々たまに、自分でもびっくりするくらい思いがけない行動をとることがありまして、ブリストルのサラ・レコーズを訪ねたのもそのひとつです。訪問したいと電話をかけた時に、「単なる家だから、来ても何もないよ」と言われた(断られた?)のに会いに行き、クレアとマットにミルクティーをごちそうになりました。庭には、『Fountain Island』のジャケット写真そのままに置かれた自転車や瓶が転がっていて、サラ・ニュースレターに登場する黒白の足袋猫さんにも会いました。猫の名前を聞くと、隣の家の猫だからわからないと言っていました。英語もろくに話せない日本人の学生が突然やってきて、さぞかし「?」だったと思うのですが、その後は注文時の手紙のやりとりでも知り合い感が増していき、後々クローバー・レコーズからThe Field Miceのコンピレーション・アルバムの日本盤を出せることになるとは! それはそれは生きていて良かったなと思いました。ちなみにPervencheの1stアルバムでも、The Field Miceのカバー曲を入れさせてもらいました。

この度リリースされた、Space Kellyによるサラのカバー集コンピレーションアルバムを聴き、今も変わらないサラの素晴らしさを存分に伝えてくれていて、とても嬉しかったです。こうやって次の世代へと受け継がれていってほしいです。


ニュースレターのタイトル部分に登場する隣の家の猫


なぜサラというレーベル名なのかという質問へのお返事


Sarahって、まず名前がかわいいんです。そして、ブリストルの風景、エアーバルーン、さくらんぼ、お花のモチーフや、コピーとコラージュを駆使した手作りのアートワークに、7インチ・レコードへのこだわり、1から100までのナンバリングなど、音楽以外のグッとくる魅力もたくさんあるのですが、やっぱり一貫してメロディの良さを重んじる音楽性が一番の魅力だと思います!
Pervenche / Clover Records / ねこみみ編集部 長井雅子


Space Kelly 6年ぶりのアルバム・リリースは伝説のインディー・レーベルSarah Recordsに残された楽曲のカバー集!
ギター・ポップ・シーンで長く活動を続けているSpace Kellyが自身のルーツに立ち返ったカバー・アルバム。

NOW ON SALE
Space Kelly / Come To My World : a tribute to SARAH
KKV-125VL
LP+DLコード
3,850円税込

収録曲
Side A
1. Pristine Christine (The Sea Urchins cover)
2. You Should All Be Murdered (Another Sunny Day cover)
3. Are We Gonna Be Alright (The Springfields cover)
4. Killjoy (Brighter cover)
5. Emma’s House (The Field Mice cover)
Side B
1. Tell Me How It Feels (The Sweetest Ache cover)
2. Shallow (Heavenly cover)
3. Ahpranhran (The Sugargliders cover)
4. Dogman (East River Pipe cover)
5. River (BlueBoy cover)

https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-125VL

90年代中旬から20年以上にわたってヨーロッパのインディー・シーンで活動を続けてきたSpace Kellyが2020年のロックダウンの期間に自身のルーツを振り返った時に再発見したSARAH RECORDSの数々の音源。はじめてギターを手にした日をもう一度思い出しながら振り返った時に輝きだした珠玉の名曲の数々を丁寧に磨きだしたコンセプト・アルバム。

Space Kelly
ヨーロッパを中心に90年代から活動を続ける日系ドイツ人KEN STEENのソロ・ユニット。これまでに8枚のオリジナル。アルバムと数多くのシングルをリリース、そのサウンドはいつもエバー・グリーンなインディー・ポップであり爽快でカラフルなギター・ポップ。UKインディー・シーンとは古くから交流があり、とくにティーンエイジ・ファンクラブを中心としたグラスゴーのシーンとは関係が深い。 これまでに2回の国内ツアーを行っており、彼にとって日本は第二の故郷ともいえる。

SARAH RECORDS
ブリストルを拠点に1987年に活動をスタートし1995年に最後のリリースとなったカタログ・ナンバー100でレーベル活動を停止、その活動は世界中のインディー・ファンに計り知れない影響を与えた。70年代末から80年代中旬にかけてラフトレード、クリエイション、ファクトリーなどのインディー・レーベルが次々と革新的なリリースを行い、インディー・レーベルがイギリスの音楽シーンをリードし、90年代はもはやインディー・レーベルがメイン・ストリームとなる。そんな状況の中、マットとクレアというファンジンを作っていた2人の出会いによってSARAH RECORDSはスタート。完全なD.I.Yスタイルで運営されたレーベルは世界中のギター・ポップ、インディー・ファンを虜にした。サウンドはC86と同世代の素朴なギター・ポップが中心だが、すべての作品に通底する手作りで直接語りかけてくるような感覚は他のレーベルの作品とは違い独特の趣があった。 SARAHからリリースした代表的なバンドはHevenly、The Field Mice、The Orchids、The Sea Urchins、Brighter、Another Sunny Dayなど。 2014年にはSARAH RECORDSのドキュメンタリー映画『My Secret World』が制作され2022年には映画チア部大阪支部により日本でも公開となった。


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