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うつろう

昔観た映画を改め観た。当時の感情は呼び起こされず、感動もしなかった。あれほど心揺さぶられた内容は陳腐に映り、映像の古さに辟易した。

昔よく読んだ小説をたまに読み返していると、何故だかあくびばかりが出る。

直感に導かれて購入したあの絵も今はどこにしまわれているのだろう。

感激や感動はひとときの気の迷いか?そう自分に問いただす。記憶という脳内メモリが劣化しただけか、それとも自分の嗜好が年齢とともに変化したのか?理由はともかく物悲しい。脳天を貫き、体中の血液が全身を駆け巡ったころを懐かしく思う。昔あったのに今はもうないものに懐かしさを感じ、夜ベッドにはいるころにそれは寂しさに変わる。

昔好きだった画家の画集を久しぶりに開く。気に入った絵のページに付箋が貼ってあった。一度見直し、二度見直し、三度目に気付いた時、付箋はすべて取り外されていた。あの感動した絵はどこにいってしまったのか?目の前の開かれたページにその絵は現存として載っているが、自分を感動させてくれた絵はもうそこにはない。

人の心は何故にこうもうつろいゆくのか?何故、こうも簡単に感動を忘れてしまうのか?

消えては現れ、現れては消えていく。自然の掟はそうかもしれないが、どうしようもなく物悲しい。消えたものと現れるものがどこかで繋がっていることを切に望む。

うつろう2


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