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沸騰おばさん

あれは確か中学の頃の、家庭科の授業だったと思う。
その日は味噌汁を作る調理実習で、火にかけた鍋の湯が沸くのを同じ班の生徒と待っていた。
すると先生が来て、鍋を見るなり「もう沸いとるで!」と私たちに怒鳴った。
鍋を確認すると、底の方から小さな気泡がぷつぷつとまばらに浮き立っているような状態だった。
沸騰といえば、水面がぐらぐら揺れて大きな気泡がとめどなく沸き立つ様子を想像していた私たちは、納得がいかないまま鰹節の出汁を取ったのであった。
おそらく先生は本当にあの状態を沸いていると認識しているわけではないが、調理実習の時間は限られているので手早く進めてほしかったのだと思う。
思えば普段は普通の先生だったけど、なかなかキレやすくてヒステリックなおばさんだった。
まさに沸騰おばさんである。
いまだにコンロの脇でお湯が沸くのを待っていると、この出来事を思い出し、沸騰の定義について考え込んでしまうのであった。

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