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アニメ『化物語』(2009), 『偽物語』(2012)感想メモ


dアニメストア ニコニコ支店で『化物語』全15話と『偽物語』全11話をみた。



・化物語

西尾維新作品もシャフトのTVアニメもこれまで一切通ってこなかったが(まどマギを除く)、ようやく観た。さすがに名作だった。

ラノベ的なクサさ、気持ち悪さ、セクシズムは確固として存在しているのだけれど、それをアニメ演出で隠蔽せずに突き抜けさせた点が肝だろう。
イクニをさらに露骨にしたような前衛的な画面演出、過剰な言葉遊びによる会話劇。そうしたものには気恥ずかしさも覚えるが、何より劇伴が素晴らしい。時間芸術としての気持ちよさがあった。劇団ままごと『わが星』をちょっと思い出した。

個々のエピソードやキャラクター造形自体はそれほど作り込まれていない気もするが、全15話の構成が(主題歌も含めて)とても巧かった。

有名な台詞・ミーム・歌が大量に出てきて、これも化物語だったのか〜といちいちテンションが上がっていた。シャフ度が出てくるたびに観ながら真似しちゃう。
「なんでもは知らないわ。知ってることだけ」がフツーに好き

メインキャラクター以外にまったく人物を配置しない空虚で不気味とさえ感じる世界観は、慣れてくると不思議な心地よさがあった。「人がいない」っていいよね。
国道沿いのミスドをアメリカの荒野のモーテルのように描くのも痛快だった。(ヒッチコック『サイコ』みたいな。)人だけでなく建物でさえ、必要のないものは描かず、それに従って風景自体が変質する最高の世界観。

現実でもフィクションでも、「雑踏」に気疲れしたら帰ってきたくなるようなユートピア的世界=作品だった。




・偽物語

やーっと観終わった。
全11話と『化物語』よりも短いが、冗長に感じた。ラスト3話だけでいい。かれんビー長すぎる。7話もダラダラ続いてめっちゃキツかった。話数に対する物語の進行度がのろ過ぎて『絶対少年』かと思った。(あっちはこんなに会話劇じゃないが)

『化物語』はわりと楽しめたのに本作は退屈だった原因はいくつか考えられる。

まず単純に、前作では新鮮だった新房シャフト演出に慣れて、飽きた、というもの。味をしめてる感があって…… もちろん、『化物語』よりもさらにフェティッシュなカットが多かったのもいい加減にしろとなった。

次に、映像や脚本のクサさを昇華するための音楽・劇伴が、前作に比してまったく印象に残らず魅力がなかったこと。神前暁さんなのは変わってないはずだから、こちらもやはり明確に雰囲気を変えているのだろうけど、『化物語』のエレクトロニカというかミニマル・ミュージック的な曲のほうが好み。あ、「白金ディスコ」はさすがに名曲だと思いました。

それから、地味に自分の評価に大きく影響している説があるのは、物語のほとんどを占める主人公とヒロインの会話劇がおこなわれるロケーションである。『化物語』「まよいマイマイ」のマンション前の公園なんかがすごく印象に残っているが、『偽物語』では前作に比べて、屋外シーンが減り、屋内シーンが増えていたように思う。外の風景が見たい。外で会話してほしい。
屋内シーンが増えた原因は、当然ながら『偽物語』のヒロイン2人が妹という家族関係にある者だからだろう。家庭内の問題を扱うために阿良々木家を撮らなければいけないのはわかる。わかるけど、個人的にはもうちょっと外に出てもらえると嬉しかったかな~~。たまに外に出たときの酷暑の雰囲気などはかなり好みだったので。
阿良々木暦の「なか」にいる忍野忍が喋るようになり、より掘り下げられたのもまた、内へとこもる志向性の要因のひとつだろう。

そして、最初に言った通り最大の問題点は「かれんビー」が7話もあるのに話が薄すぎること。4話しかない「つきひフェニックス」が相対的に相当まいているように感じられた。尺配分どうなってるんだ。原作での比率もこんなもんなのか?
べつにヒロインのかれんが嫌いなわけではない。前作で掘り下げた各ヒロインがご丁寧に一人ずつ見せ場を貰っているくだり等で話数が膨らんだのだろう。

ただ、今回のいちおうの敵役の貝木に、章ボスとしての魅力がなさすぎる。「じぶん、『偽物』ですからぁ~」的なことを言っとけば見逃されると思うなよ。やってることは大のオトナが中学生を騙してはした金をカツアゲしてるだけ。しょうもなさすぎる。「はいその通り、じぶんはしょうもないオトナですよ。だって偽物ですからぁ~」って実際に言ってはないと思うけど、作品自体からそういうスタンス(敢えてダサい偽物の敵役を据えることに意味があるんですぅ)が漂ってきてることにムカつく。

あとは、本作の話は両方とも最終的には「お兄ちゃんの妹/家族愛」が祭り上げられて終わるので、そこも今の自分にはナイーブに映るというか……。その思想がダメだというより、なんやかんやあっても最終的にはどうせ「兄は妹を守るもの」という思想を使えば物語がまるく収まるだろうと舐めている感じが好ましくない。まったく想像を超えてこない上に、その「収まるところに収まること」に開き直っている姿勢が苦手だった。

えーと、好きじゃなかった理由の分析はこのくらいで。
忍は喋っても喋らなくてもどっちでも構わないくらいには興味ないが、11話で血を吸って成長した姿はやや好みだった。
ヨツギさん、ネットで見たことあるキャラだ!(よくTwitterのアイコンで見た)となったし、「ボクは決め顔でそう言った」もネットで聞いたことあるやつだ!!!とテンション上がった。この子のセリフだったんですね。そして早見沙織さんだったんですね。
ファイヤーシスターズは、どちらも嫌いじゃないし良いキャラだとは思うけど好みとまではいかない。(というか、西尾維新キャラ全般にそう言えるかも。キャラ立てうまいなーと感心はするけど、だからこそなのかもしれないが、刺さるキャラはあんまいない)


・追記
ステマに負けて、今日ミスド行きました…… やっぱゴールデンチョコレートおいしい




シリーズ続編も観たら感想かきまーす。次は『猫物語(黒)』ってやつでいいのかな




※本noteの感想はどちらもFilmarksに投稿したもののコピペです。


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