本人確認方法の解説 - ⑤先進的取り組み
はじめに
国内におけるクレジットカード不正利用の現状と、我々消費者がお店で会計する際の本人確認方法についてシリーズ形式で解説しています。
初めて読まれる方は、以下①〜④の順で内容キャッチアップいただけると幸いです。以下リンクよりアクセス可能なので、お時間ある方は是非!
シリーズ最終弾では、今後のキャッシュレス化にも大きな影響力を持つ最先端の認証技術を取り上げながら、お店の近未来の姿について考えていきます。
会計スタイルの多極化が近年顕著に現れている、コンビニやスーパーなどの小売業をベースに見ていきたいと思います。
小売業における最新動向
いちいち決済手段の名称を店員に伝えないといけないのが面倒。。
暗証番号を入力するボタンが不衛生な気がして、触りたくない。。
支払いのタイミングで、いちいちマスクを外して顔認証しないといけないのは不便。。
こうした消費者ニーズの変化や消費行動の変容に対する迅速な対応が小売業には求められています。
最新の動向としては「現金しか取り扱えない従来のレジ」から「キャッシュレス決済に対応したPOSレジ」への入れ替えです。
柔軟性と拡張性に優れたセルフレジなど、現代の消費行動と社会情勢に適したPOSレジの導入が進んでいることは皆さんもお気付きでしょう。
我々消費者が会計する際の「体験」を大きく変える、認証技術も進化を遂げています。
本人確認に利用される認証技術は、以下3つの要素で構成されています。
本人認証の3要素とも言われている「知識」「所持」「生体」のうち2つが組み合わさることで、本人確認の安全性と利便性が実現しているのです。
>接触ICカードで決済:①知識(暗証番号)× ②所持(物理カード)
>Apple Pay(iPhone)で決済:②所持(スマホ)× ③生体(顔認証)
ところがクレジットカードの不正利用手口は年々複雑化・巧妙化しており、被害額も増加傾向にあります。
加えて、今後のキャッシュレスの拡がりを想定すると、現代の本人認証技術だけでは安全性と利便性に限界があることが業界内でも問題提起されています。
そんな中、決済(ペイメント)業界内で注目されているのが、第4の要素である「行動」です。
アプリ履歴や位置情報などの「行動」を「生体」と掛け合わせることにより、ストレスのない購買体験が実現可能となるからです。
行動パターンという要素の追加により、買い物は以下のように進化します。
①自分の顔を撮影した画像をシステムに事前登録。
②店舗の入口のカメラで顔認証をして入店。
③陳列棚から取られた商品はカメラやAIによって特定。
④特定された商品は仮想カートへ追加。
⑤店舗の出口を通る際にカート内の商品を自動決済。
⑥取引情報を含む電子レシートをスマホに通知。
このようなレジレス型店舗、省人型店舗の事例はすでに数多くあり、小売業の店舗運営や設計にも大きな変革を起こしています。
前置きが長くなりましたが、多要素認証(Multi-Factor Authentication)を活用した先進事例を3つ紹介します。
先進的取り組み - ①無人コンビニ「Amazon Go」
2018年1月に米国シアトルで開業し、大きな話題を集めた無人コンビニ「Amazon Go」。
2019年5月にはニューヨークでもオープンし、オフィス街や乗降客の多い駅構内などに店舗網を広げています。
米国のコロナ禍は日本以上に深刻であり、非接触ニーズという観点から今もなおAmazon Goの動向は注目されています。
最大の魅力は、POSレジでの会計がいらない「Just Walk Out」技術を取り入れていることです。
先進的取り組み - ②無人コンビニ「TOUCH TO GO」
日本国内においても、利用客の行動パターンをカメラやAIで分析する取り組みが本格開始しているのはご存知でしょうか。
JR高輪ゲートウェイ駅の2階コンコースに位置する無人コンビニ「TOUCH TO GO」です。
2020年3月にオープンし、筆者自身も過去に3度訪れましたが、かなり衝撃的でした!
買い物するのに専用アプリやユーザー登録は一切不要で、クレジットカードのみならず、Suicaなどの電子マネーでも決済できることから利便性を強く感じました。
Amazon Goと同様、天井に多数のカメラとセンサーを設置し、利用客が手に取った商品をAIで判別することで、店内スタッフの無人化を実現しています。
参考までに、TOUCH TO GOの運営に携わっている民間企業は以下3社です。
■株式会社 TOUCH TO GO(合弁会社)
>参考ウェブサイト:https://ttg.co.jp/
■JR東日本スタートアップ株式会社
>参考ウェブサイト:https://jrestartup.co.jp/
■サインポスト株式会社
>参考ウェブサイト:http://signpost.co.jp/
先進的取り組み - ③ライフスタイル認証
「何時に起床」「どこへ移動」「いつどのアプリを利用」「何を買った」。
行動や買い物などの生活習慣から「その人らしさ」を解析し、その情報に基づいて本人認証する技術が実用化に向けて歩みを進めています。
東京大学と民間企業4社(※)により、世界に先駆けた取り組みとなる「ライフスタイル認証」の研究開発が行われています。
※凸版印刷、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、三菱UFJニコス
この「ライフスタイル認証」は、スマホやウェアラブル端末などに搭載されたセンサー情報から行動パターンを収集し、個人のライフスタイルに合った新サービスを可能にするのです。
今まで当たり前のように行っていた認証操作が不要であるという利便性を活かし、手ぶら決済の実現にも大きく貢献します。
ライフスタイル認証の精度や安全性はすでに確立されており、これによりキャッシュレス決済がより一層浸透していくでしょう。
最後に
決済サービスの乱立化と同時に、対面取引における会計スタイルも多様化・複雑化していることを本シリーズで取り上げました。
個人的な見解ですが、2030年頃には都市部を中心にレジレス型店舗、省人型店舗が拡がり、手ぶら決済が当たり前になると感じています。
並ばず、払わず、ストレスフリーな買い物ができる時代が非常に楽しみです。ありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?