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不意打ちカラスと怒れる私。

私はカラスが大嫌いだ。

これは別に理由もなくカラスに対して怒りの矛先を向けているわけではない。きちんと怒りの矛先を向けるべき理由がある。

今日、カラスに糞を落とされた。

もう一度言わせて欲しい。というか言います。

今日、カラスに糞を落とされた。

そう、今日、カラスに糞を落とされたのである。なんてこった。本当になんてこった。ちくしょうっ。
だから、私はカラスが大嫌いなのである。


私はその時、近所の本屋に行った帰りで、自宅へと向かっていた。そしたら、「ボトッ」という何やら鈍い音が聞こえた。
それと同時に私の服には、なにやらペイント弾でも投げつけられたかのような、気味の悪い変なものが付着していた。

その物体の正体は明白だった。もちろんペイント弾などではない。それは天から舞い落ちてきたものであった。
私は静かに真上を見上げた。すると予想通り、そこにはやっぱり奴がいた。

カラス(一羽)

奴は威風堂々としたたたずまいで、遥か遠くを眺めていた。認めたくはなかったが、その姿はとても凜々しく、とても立派なものであった。
それでも、いくら佇まいが素晴らしかろうと、奴は糞を繰り出した。私のもとにジャストミートさせたのである。

私は頭上のカラスを確認した後、二三歩進み、額に左手の人差し指を当て、その場で数秒停止した。もはや停止せざるを得なかった。

私の左側では、信号待ちのいくつかの車が止まっていた。その車からは私はどんな風に見えていたのだろう。
糞が服にジャストミートした位置は車道とは反対側であったため、もしかしたら糞が私にジャストミートしたことには気づいていなかったかもしれない。

つまり、車の中の人達から見た私の姿は、「突然真上を見上げ、二三歩進み、額に人差し指を当て、突然停止しそのまま動かなくなった」という具合であろう。

これではなんというか、滅茶苦茶イタい奴ではないか。信じてください。私、カラスに糞を落とされただけなんです。イタい奴じゃないんです(たぶん)。

ただ、この時の私は不思議と冷静だった。怒りの激情に駆られることなく、至って冷静に現状を理解し、ただただ静かにこの悲劇を受け入れていた。

「しょうがない。自分の人生なんてそんなもんだ。カラスに糞を落とされてなんぼだ。しょうがない…..」


そうは言っても結局悔しかった。悔しすぎた。全然しょうがなくなかった。普通にふざけんなって思った。
それと同時に私の心には「この悲劇をいかにnoteのネタにしてやるか」という思惑がフツフツと燃え上がっていた。

私は自宅についたらすぐに糞を拭き取り、急いでパソコンを立ち上げnoteを開いた。
「鉄は熱いうちに打て」という言葉がふと脳裏を駆け巡り、私はこうしてただひたすら無我夢中で、己の身に起きた悲劇を書き殴ったのである。

こうしてnoteに書いたことによって、なぜだかカラスに対する怒りの情動は少し収まってきたような気がする。少しだけ。

それでもやっぱり、カラスは大嫌いだ。糞を落とされたから。


そんな出来事があってから数日が経過した。

今振り返ってみても、さすがにカラスのあの所業は下劣だなと思う。
不意打ちにも程がある。「正々堂々と勝負せいやっ」という感じである。勝てる気はしないが。

そんなこんなで、やはり私はカラスが大嫌いだ。

カラスさんよ、本当に、もう、勘弁してください。

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