ばつ
頭が痛い。
全部全部面倒くさくなって、私の唯一の味方の犬を連れて二駅分歩いた。
それはきわめて小さな逃避行のようなもので、この冬にマフラーすら巻かずに家を飛び出した。思ったよりも寒くて少し後悔したけれど、それを振り払うような気持ちで、大好きな音楽をイヤホンでガンガン流しながら歩いた。
折り返し、昔好きだった人の家の前を通った。ここは漫画やアニメの世界ではないから、丁度その好きな人が家から出てきて、なんて展開は無くて、そのまま素通りで、それがいつもよりも酷く私を感情的にさせた。波みたいに無機質に脳裏に浮かぶ記憶で頭が痛かった。
帰ってきてから、冬の寒さと、2時間ほど歩きっぱなしだったにも関わらず水を飲まなかったことが災いして頭痛がやまない。ノイズみたいに、眼窩の奥が絞られてるみたいだ。
だから八つ当たりみたいに、あなたに連絡を送ってみたんだ。バカみたいだ。あなたは私の友達。私より賢くて、絵が上手い、私の友達。ずっとずっと嫉妬してるの、いつから気づいてたの?きっとあのまま歩を進めていれば、あなたの家にまで行けていたのだろうか。近所の神社で待っていればあなたは来るだろうか。
頭痛は、氷が解けていくみたいに消えていく。
あなたが遠い。
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