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エクセス コンプライアンス リザルト 5-3章

勢いよく、自分の脳内に映像が流れだすーー
実体験?VRの中の話?・・・また気が遠くなってきた。

「気をしっかりお持ちなされ・・・・大丈夫。」

「・・・・」

喋る気力すら無くなってきた。意識が遠い・・・。

「そうですな・・・今の不破さんの状態という事は、このモニターの意図も伝わっていない事になりますかな・・・・そこを”もう1度”説明した方がよさそうですな・・・」

・・・そういえば、何故この実験?講義?が実施され、報酬まで貰えているのかまでは分からない。・・・というか”忘れてしまっている”ようだ。

「・・・一度私はそれを聞いてるのか?」

「ええ。ちと長い話ですが・・・もう1度言う必要があるでしょう」

「・・・すまないが、もう1度教えてくれ」

老人は、ふぅと軽く息を吐くと、ゆっくりと話し始めた。

「まず、この機関・・・我々が行っている活動は、”行き過ぎたコンプライアンスによって出てきた複起点によって、悪い方向に影響してしまった方への救済” が目的となります。」

「・・・・」

複起点。講義に出てきた言葉だ。確か未来におけるターニングポイントに近いニュアンス・・・そんな話だったか。

「・・・私はその”悪い複起点”に迷い込んだから、このモニターを受ける事になった・・・という事か?」

「はい。と言っても、相当追い込まれた者でしか、あの募集要項に興味を持ちませんからな。要はあの募集は”選定”をした事になります。・・・募集内容は覚えていますかな?」

「俺にとっては”今日の話”だからな・・・覚えている。確かに、あれは人生の窮地に立たされたような状態でしか・・・んん?・・・」

早速違和感がまた出てきた。もう慣れたものである。
私は窮地に追い詰められるほどの状態だったのだろうか?今の”感覚”では全くそんな風には思わない・・・

「今の不破さんが窮地に追い込まれていない、と感じるなら、このモニターは成功と言えましょう。この約1年間で収入も安定してきた事ですしな。」

「・・・それはお金の問題だけでは無いのか?」

「いいえ、違います。人の心境っつーもんは脆いものでしてなあ・・・どれだけ莫大な資産を抱えてたとしても、その当人の心的状況次第で簡単に破産してしまうものなんですわ。これは私がこの研究を進めていく上で幾度も経験したことです。」

・・・なんとなく、この”機関”の全容が見えてきた。要は社会不適合者への更生を促しているって事なんだろう。最初は資金を寄付するだけだったが、それでは当人の為になっていない事が分かった、とか、そんなとこだろうと思う。

「なんとなくだが、自分の置かれている状況は理解した。・・・だが、その過剰なコンプライアンスとやらで人生が狂ってしまうメカニズムがよくわからないな。」

「その辺はまあ、まともに説明すると長くなるので・・・”前の不破さん”は理解してくれたような素振りでしたが微妙そうでした。・・・そうですな。ちょっと例え話からしてみましょうか。」

「・・・例え話か。何か前例でもあるのか?」

「まあ、前例と言えばそうなります・・・・不破さん、SNSはやられてますかな?」

「・・・いや?全くと言っていい程・・・では無いが、ほとんど触ってはいないな」

「私も同じような者だったんですがな・・・まあ、中には中々とんでもない事を言う輩がいるもので、この研究とも沿いそうな人物が結構おったので、興味を持ちだしたんですわ。」

「・・・というと?」

「不破さんは陰謀論とかフリーメンソー・・?いや、フリーメイソンだったか。そういった類のモノは見た事がありますかな?」

「フリーメイソンな。・・・まあ、聞いたことは有るが、アレは言ってみれば学校の怪談のようなものだろう?フィクションの世界だ。」

「うあっはっは。不破さんは”正常”な人物ですな。・・・・要は、アレを本気で信じ込む人が結構な数でいるんですよ。」

「そんな、まさか・・・・演技じゃないのか?」

「”演技”ですか。良い表現かもしれませんな。まあ、色々と経緯はあると思いますが、言ってみれば”そう思い込みたい状況下にいる人物”が言霊のように毎度毎度陰謀論を呟いている・・・そんな人物を見かけましてな。確か北海道の方だったか。」

「まあ、陰謀論を信じ込みそうな連中は居るとしてだ・・・何故”そう思い込みたい状況下にいる”と分かったんだ?」

「その方のご親族も同様にSNSをやっておられ、そのリークから。他には”熱心なファン”とでも言いましょうかな。・・・ああ、まあアンチと言った方が良いかもしれません。そういう方がその人物のプライベート部分を垣間見せてくれるのですよ。」

なんとも恐ろしい話だ。・・・まあ、ヘイトを集めるような事をしでかしている自業自得ではあるのであろうが。

「まあ、その陰謀論というのは、言ってみれば私は”社会不信、政治不信”から生まれるものだと思っております。簡単な話ですな。人生が上手く言ってるならわざわざ社会に不満や捏造した情報をくっつけて揶揄なんぞしない。逆に人生が上手くいかず、政府や社会に転嫁していけば・・・という話ですな。」

「・・・それは”更生される前の私”にも言える事か?」

「いいえ、言えません。もし陰謀論に陶酔してしまっていれば、あの募集要項やこの機関での行いは呑まないハズだからです。そういう"ふるい"の効果もあるんですよ、アレにはね。」

「・・・そうか?あの募集要項でも一部の陰謀論者は食いつきそうなもんだが」

「まあ、どういう解釈をするのかは難しい所ですなあ。一番は私たちが行政で成り立っている組織だという点ーーー。これは反社会思想の連中には絶対に受け入れられない条件のハズですわ。」

「・・・なるほど?」

納得しきれないが、まあ言いたいことは分かった。

「・・まとめると、社会的な規律、規範に反感を持つ・・・まではいかないが、その行き過ぎたコンプライアンスで人生が上手くいかなくなる人間が居るし、その末路が陰謀論者という話な訳だな」

「まあ、大体そんなとこです。いくら善人でも社会ルールを全部鵜呑み出来る人間って居ないものです。それに政治的な要素が絡むのであれば多数決の話ですからなあ。どの党が与党になれるか、なんてのも票で負けた人には必ず不満が入ってくる。その場合、自分の主観では受け入れられないような法律、ルールも出てくることでしょう、そういったメカニズムですな」

なるほど、大体理解した。

「・・・で、あのモニターはなんなんだ?」

「その話ですな。・・・不破さん、今は記憶は落ち着いてる状態ですかな?

「まあ・・・落ち着いてはいないが、今の話を聞いて落ち着けるような状態じゃないのは把握した。

「結構・・・それでは、そのVRの中身も説明していきましょうか」


いよいよ、核心に迫るようだ。

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