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エクセス コンプライアンス リザルト 5-2章

「・・・・3月?」

「ええ」

「・・・そんな・・・はずは・・・無いはずだ。」

「・・・・4月15日。私は覚えています。その日は”去年不破さんが初めてここにいらっしゃった時”ですな」

「・・・・は?」

ちょっと待て。”初めて”?今まで来ていたという事か?
それに、もうそこから1年が過ぎてると?そんなバカな・・・・

「・・・私は、ここに何度も訪れていた、と?」

「はい。もう数十回はここにいらしてますな。報酬も月ごとにお支払いもしています・・・」

・・・・・・信じられない。今までの違和感を大幅に超えた違和感だ。

「だからあの時、モニターはいつ始まるのか質問された、という事ですな」

「・・・・証拠はあるか?私が数十回訪れたかどうか、という証拠は」

「うーん・・・御来社の記録簿はありますが、捏造されていると思われればそれまでですな・・・・」

私は平静を戻しつつあったのに、また一杯一杯になってきた。顔面全体に強張りを感じる。

「・・・なんでもいい。この空白は約一年間もあるのだろう?なにか・・・証拠が・・・あるはずだ・・・」

目の前が暗転しそうになってる。意識が遠のいてきた。

「・・・大丈夫、とにかく落ち着いて下され。言った通り、記憶の相違は必ず消えます。そうですな・・・証拠・・・ああ。」

老人はおもむろに上を見上げたあと、遠くにある受話器でどこかに電話をし出した。内線のようである。やけに小声だ。
何か注文をしてるようだ。「今用意出来るか?」と言った声はわずかに聞こえた。

「不破さん、そこに監視カメラがあるんですが、恐らくその空白部分の記録映像があるはず。これは流石に捏造は出来ないでしょう・・・加えて、モニターでやっていた事も記録されているハズです。ちょっと見てみましょう。」

老人が何かのリモコンを押す。ブラインドシャッターが閉まって暗くなり、壁に大きなプロジェクターが現れた。

「・・・記録映像・・・・監視カメラの・・・?」
「そうです。・・・別に悪意があった監視カメラではないですよ。一般的な防犯のモノです。見ての通り、大掛かりなサーバー、貴重書物がある書庫等がありますのでな・・・」

まあ、不思議ではない。それよりも、監視カメラが何を見ていたのか、それに全神経を集中してる自分が居た。

「まず、最初のカウンセリングはーー」

「ちょっとまってくれ。その最初のカウセリングの後、私はどうした?」

「・・・ああ、確か初日はーーー」

映像があるようで、すぐにモニターに映し出された。

老人と私がこの部屋で話している。例のA~Eの例題も映っている。

ーーー話が終わったようだ。私が知りたいのはこの後である。

・・・老人は笑顔で私を送り出している・・・この記憶は・・・無い・・・・そして私はこの部屋から出ている・・・この記憶も・・・無い・・・・

「・・・無論、納得いかないのは分かります」

「・・・・納得、というよりも、怖い、かな・・・」

「大丈夫、大丈夫です・・・・もう1つ、見て欲しい映像があります。今の不破さんはモニターを認知していないので、そこも見て欲しいんですな。何をしていたか、です」

モニター。そうなのだ。それを”やったハズ”?なのに全く記憶にない。

「・・・記憶が、無い・・・」

「・・不破さんの今までの言及から察すると、そうなるでしょうな。映像を見てみましょう。何か思い出すかもしれない。」

映し出されたのは、3階・・・ではなかった4階にある、例のサーバーのような機材がおいてある部屋のようだ。監視カメラはその奥を映しており、なになら椅子が1つ置かれていて・・・そこに自分が座っている。

・・・何か目隠し?ゴーグル?のようなものを付けている。これは・・・・

「これは・・・VRのようなものか?」

「ええ、そうです。思い出しませんか?これで何を見ていたか、などは・・・」

・・・・そう老人に言われた直後、自分の経験したものとは思えない、関係ない映像の記憶が蘇ってきた。


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