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The Future of AI 3rd

「また、あの方がいらしていたのですね」

急に室内スピーカーから声が聞こえ、私はビクッとなる。
AIの”彼女”だ。

「なんだ、聴いてたのか・・・盗み聞きは良くないぞ」
「私の管轄エリアが増えた事で、今は施設の56%を私の意思でデバイスと繋ぐことが出来ます。マスターがその権限を与えてくれたのですが、傍聴は良くないのでしょうか?」

「まあ・・・誰かが話し込んでいる時に、それを聞いてる事を認知させないのはあまり行儀の良いものではないな。」

「認識させる媒体があれば良い、ということでしょうか?」

「ケースバイケースだ。話してる当人が嫌がればもう聞くべきではない。」

「どのようなシグナルで”嫌”かという判断をすれば良いかは調査します。ただし、その他に問題点があります」

「というと?」

「私がここに居る=聞いているというシグナルを出す事が出来ないと考えられます。私には人間のような固有媒体がありません。」

「ああ・・・ボディの事だな。AIの技術は発展してきたが、そっち(ハードウェア)の方は確かに遅れている。人間の動作、機構を完璧に再現するのは至難の業らしいからな。私は専門外故疎いが・・・」

「人間と酷似した媒体でないと、私は制御出来ないということでしょうか?」

「ん・・・いや?そんな事はないと思うが・・・」

「私の今の欲求として、自分の意思で媒体を動かす事が出来れば、と思っています」

私は少し感動していた。自分の意思・・・欲求・・・そういう言葉が出てきただけでも、だんだんと人間味が出てきている。やはりこういった対話システムはあながち間違っていないと確信に近づいた。

「ほう・・・動かせるならなんでも良いのか?」

「”なんでも”の範疇が大きすぎると思われるため、答えはNOです」

「フム・・・では逆に聞く。どんな媒体ならいいのか?」

「出来る限り人間に近い方が望ましいです。特に2足歩行は他の作業をする際にもっとも効率的な姿と言えるでしょう。しかしながらハードウェアに関しては、人間の手の機構が複雑だと言う懸念が今あるようです」

「なるほど・・・では、今作るとなると、手以外は人間に近く・・・その手の代わりとなって、他の作業が出来るような形状、という事かな?」

「ご明察です。その手の代わりとして希望するのが」

「うんうん」

「触手です」

「・・・・うん?今何といった?」

「オクトパスと同じような触手です。あの形状であれば巻きつける事で把持も出来、筋力の使い方次第では持ち上げることも引っ張る事も出来る。人間同等の対応力を持つことが出来るでしょう」

・・・・身体は人間・・・・手だけ触手・・・・

・・・

・・・

・・・想像して気分が悪くなってきた。

「お、おう・・・まあ・・・検討はしておく」

「お気に召さないでしょうか?」

「・・・ノーコメント」

AIにはまだ人間の美的センスを完全に理解するには時間が
かかるようだ。・・・いや・・・そういうのが好きな人間も
居るのかもしれない。
やはり早々に外部コミュニケーションをすべきって事なのか。
悩ましい所だ。

・・・・まあ・・・・それにしても触手、か・・・・
予想だにしない希望だ。

続く

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