寝ても終わらない日

日記を書く。今日が終わる。


夜中に目が覚める。何故かパンツ一丁だ。お腹が痛いように感じる。自分の足を動かすことに違和感を覚えつつもベットから立ち上がる。

今日は春のくせに肌寒い。このまま寝ていたら風邪をひいてしまいそうだ。徐にクローゼットの中へ入り適当な服を選ぶ。

高校生の頃に買った着慣れたスウェットに袖を通し、そこに脱ぎ捨ててあったハーフパンツを履く。


お腹が空いた。何か食べ物を胃に入れたい。暗闇の中いつもの感覚を頼りに冷蔵庫の取手に手をかけ開ける。

見事に何もない。そういえばここ数日スーパーへ行っていない。しかし、一度生まれてしまった食欲は食事以外では収まらない。


そうだ、肉まん行脚をしよう。


急いでナイロンジャンバーに袖を通し、家の鍵を持ち外へ飛び出す。

やはり外は上着無しでは寒い。4月とはまだ名ばかりと言った具合である。

ポケットに手を突っ込み、少しキザな歩き方で横断歩道を渡る。夜中の四時だ、誰も見てやいない。ヘッドホンから流れる音楽に合わせて軽快なステップを決める。


まずは最寄りのコンビニだ。ここにはかなりお世話になっている。何か食べたくなったらここへ行くが、果たして夜中に肉まんはあるのだろうか。

無かった。

見事にホットスナックが一つも無かった。当たり前だ。こんな夜中に作り置きしておいても買うお客さんなんていない可能性の方が高い。


気を取り直して2軒目のコンビニへ向かう。ここのコンビニはたまに訪れる。コンビニ支払いの時はここにお世話になることが多い。入口にたむろしているちょっと髪色の明るめの人たちを横目に店内へ入る。

ここも無かった。

そうだ、この店はいつもホットスナックが少ないことで有名だった。悔しいが、今は夜中の4時。有る方が稀である。明日も休みなことだしどこまでも行こうではないか。


いよいよ3軒目のコンビニだ。このコンビニは散歩するときの休憩地点としてよく利用させてもらっている。バイトの人がクッソイケメンである。夜中に訪れるのは何気に初めてで、いつもと入り口の雰囲気が違うように感じなくもない。


無かった。

イケメンの店員さんが夜中も働いていた。お仕事頑張ってください。


かなり遠くになるが4軒目へ向かおう。ここまでくると友達の家の方が近くなってくる。ここのコンビニは友人が夜中に働いている。果たして今日はシフトが入っているのだろうか。


入っていなかった。

そういえばまだ地元へ帰省中であった。あ、肉まんはなかった。


もうここまで来たら肉まん無しでは帰れない。かなり遠くになるが5軒目だ。このコンビニはかなり新しめのコンビニである。なんかこう、真ん中に入口があるタイプの店舗だ。田舎民は共感の渦であろう。

あった。

めちゃくちゃ色々あった。確かな温度を掌中に感じる。これが肉まんだ。長い帰路のことを考えて、肉まんは2個買った。


まずは一つ目の肉まんの包み紙を開ける。肌寒い夜風を一変させる美しい湯気が空気中に揺蕩う。紙越しでも伝わる重量感。まずは半分に割ってみる。白く弾力のある皮の中から溢れんばかりの黄金色に透き通った肉汁が流れ出てくる。そこへすかさず酢醤油をかける。透き通っていた肉汁が徐々に茶色へと染まり、皮の部分へと染み込んでいく。たまらずかぶりつく。

皮が上唇に引っ付く。口の中に温度が飛び込む。皮の甘み、肉の旨味、酢醤油のツンとした酸味、全てが混ざり合い喉を通る。次の一口が止まらない。


帰ってから一個は食べようと思っていたが、帰り道に2個食べてしまった。思わぬところで今日の出来事が増えた。


日記を書く。今日が終わる。

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