2023.05.10 深水エリアの整備とカエルの新顔
深いエリアを作りたい
5/10に平日ですが、急遽ビオトープの整備をしました。ユンボ(重機)を使った最後の作業として水深の深い場所を作ります。
水深が深ければ、そこを好む生物が生息することになり多様性が増します。できれば50cm程度の水深を作り、深めの水深が好きな水草、生物がくることを願って作業しました。
場所を決めて、試しにユンボで深く掘ってみました。場所は夏に日陰が多くて日照時間が短かくなるところにしました。夏にある程度の水深が残っていると、そこに生き物が退避してくれることを期待しています。
ユンボを操作して掘っていたWさんが、一言。
「ここ、固いね」
確かにユンボのショベルが硬いところにあたっている雰囲気です。掘ったところを棒や足で確かめたところ、確かに泥でなく石に当っているようです。手を入れて確認してみると、付近の山に転がっている青い石でした。
掘り上げた土を調べてみると、砂礫が混じっていました。
恐らくここは、山の斜面を平坦に削り整地して、その上に粘土を敷き詰めて水が溜るようにして水田を作ったのでしょう。水田の遮水層を突き破ってしまうと、水が洩れてしまう危険性があります。
この砂礫層まで掘ってみると水深は約20cmでした。目標の水深50cmには及びませんが、昨年の夏の渇水時の水の少なさを考えると、この程度の水深でも存在すれば、水が残ってより多くの生き物が集まってくれそうです。
ひとまず水深20cmのエリアを拡張して深水エリアをつくりました。
作業の後は、ユンボが堀起した土を積んでいる山を、少しづつ解体しました。ユンボで掘り起こした土は粘土質で、イグサ、ヨシ、セイタカアワダチソウの株が根や水分を多く含んでとても重いです。土を乾かし、鍬で土を削り落とし、植物部分だけを取り出して、下の水田にもっていきます。そこで乾燥させて植物を焼却し、灰を水田にまくことで再利用する予定です。
残った粘土は畦道やエコトーンを作るのに利用する予定です。現在はビオトープの周囲を一周歩いて回れないので、周囲を歩いて観察できるようにできると良いですね。
春に入ってあわただしかったですが、これでやっと(相対的な)深水エリアができました。これから水を溜めて、どのような生物が出現するかを、逐次調査観察していきます。
新顔のカエル
この日の作業中もいくつかの生き物を確認しました。
アカハライモリはこのビオトープの住人で、最もよく見かける両生類です。今回も至るところでみつけました。作業で潰されないように、みつけたら待避してもらいました。
今回はカエルも数種類みつけました。アマガエル、ツチガエル、シュレーゲルアオガエル、といった馴染みの顔だけでなく、このビオトープで初顔にも出会いました。それはトノサマガエル!
昨年、下の水田には顔を出してくれていたのですが、このビオトープでは初めてです。2個体みかけたので、もっと来てもらってここで繁殖してくれると嬉しいですね。
愛媛県の生物相が豊かな水田環境では、トノサマガエルのオタマジャクシが「シャワシャワ」音がするくらい大量に生息し、畦道を歩くと沢山のトノサマガエルが水に「ボチャン」と飛び込む音が聞こえます。このビオトープも、そういった環境になってくれるのを夢見ています。
目指せカエルコンプリート!?
このビオトープでは、これまで5種類のカエルを確認しています。2019年の調査結果によると愛媛県の水田域に生息するカエルは9種類だそうです。
https://www.pref.ehime.jp/h25115/book/documents/2019_01_03.pdf
分布が局所的で絶滅危惧ⅠB類のナゴヤダルマガエルや、分布が平野に限定的なヌマガエルなどは生息可能性は低いですが、残り2種類のニホンヒキガエル、ヤマアカガエルは生息する可能性があります。(実際にニホンヒキガエルは近くにいるのを確認しています)
このビオトープで、愛媛県の水田エリアのカエルがほぼほぼコンプリートできると嬉しいですね。引き続き調査観察していきます。
水生昆虫は?
3月に確認したクロゲンゴロウは、4月に入っての整備作業では確認できていません。整備が一段落して落ち着いたらまた来てくれることを祈っています。
整備作業中には、ミズカマキリ、マツモムシ、コシマゲンゴロウなどを見かけました。小さなゲンゴロウかガムシ類もみましたが、同定まではしていません。これからの季節はトンボのヤゴも増えるはずで、楽しみです。
最近愛媛県でも増えているといわれているコガタノゲンゴロウ、珍しくなりつつあるシマゲンゴロウなどが来てくれると、更に賑やかになります。来てくれるといいなぁ。
重機の整備作業で気づいたこと
これでひとまず、重機を使った整備はおしまいです。あとは人力で積み上げた粘土を崩したり、移動させたりしていきます。
重機は整備がとても捗る反面、環境への負荷も高く、あっというまに環境を大きく変えてしまいます。かなり気をつけていてもそう感じたので、開発などで重機を使うと、環境を破壊するのはあっという間なのだと痛感しました。
今回は時間に追われて、春になってから整備をはじめ、重機の力を借りました。このこと自体は手間と時間を考えると、止むを得ないと判断しましたが、正当化はするつもりはありません。
理想を言うと、環境を変えるには、人力で少しづつ、漸進的に作業していくほうが、環境への負荷も低くなり、生物も少しづつの環境変化に対応して慣れながら、生息していけるのだと実感しました。
泥水の中を逃げ惑う、アカハライモリやミズカマキリをみて、申し訳なさと同時に、このことを体験で教えてくれたのだと感謝します。
持続可能な循環型の環境デザインを行うパーマカルチャーでも、いきいきとした建築や環境をデザインするパタンランゲージでも、変化は少しづつゆっくりが原則となっています。
同じようにビオトープの施工も、できる限り小さな変化の積み重ねで変えていきたいものです。
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