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アカデミックにぶつかり稽古

週末なのにまた仕事の話をします。
弊社は、とある製造業なんだけど、おれの仕事はその中でも手足より脳を動かす比率が高い。技術的な資料にしろ語学にしろ読み解くのには時間がかかるので、同僚が汗かいている間にパソコンとにらめっこしている時間が圧倒的に長いんです。そして、そういう世界には独特の人間関係がある。

抽象的な話になってしまうけど、例えばこの製品の化学的な組成を作るにはこういう方法が王道だけど、安定して立証するには条件が厳しいので、弊社はこういうアプローチをしていますとか、まあそんなプレゼンテーションを行うとする。そして、それに対する活発な議論がクライアントから出たりするのだが、相手も味方もそれなりに知見を持っており、どちらかと言うと学校でもかなり優等生クラス(おれは違うけど)の皆様が集まっているので、討論になってしまうとどちらもなかなか譲らない。しかもいい歳のオッサン達(たまに女性もいるけどまだ少ない)だからプライド高いし、部下の手前引くわけにいかない。

場がヒートアップしてくると次第に言葉も熱くなる。聞くところによると、そのプレゼンには弊社の重鎮の一人が参加していた。ちなみに彼はおれが勝手に「マイク・ハナサーズ」という重鎮お笑いコンビに命名した片割れの「ハナサーズ」の方。
ハナサーズは最初こそ丁寧だったものの、反駁するクライアント相手に「そんな事も知らないでよくやってますね」「これは今月の◯の文献に出ていますがもうご覧になりましたか」「こんな翻訳は幼稚園生でも出来ますよ」と快調に飛ばし、ついに主導権を握ってしまった。勝ち誇るハナサーズ。
弊社としては議論の筋を通した形になったし、面目も保つ事が出来た。場の雰囲気がどうなったかは知らないがその後、プロジェクトは無事受注し、一大案件として社内で暫し話題になった。

この話には続きがある。
一つのプロジェクトが軌道に乗ると当然ながらリピートの話が出てくる。弊社もそれを当てにして、多少のマイナスはあっても先行投資と思って突っ込む部分がある。
先日、クライアントの上層部から弊社へ連絡が入り、次のコンペには参加できない旨を通知されたという。理由を尋ねると、件の議論があって弊社には大変横暴な奴がいるという認識になったのだと。
討論がヒートアップした際には互いにそれなりに熱いぶつかり稽古だったようだが、そこはやはり顧客と業者の関係性からするとちょっとやり過ぎたんだろうね。負けず嫌いなハナサーズの事だから、追い込んでからも完膚なきまでに叩きのめしたに違いない。
ただでさえ難しい仕事であり金額も大きいだけに、貴重なリピーターを潰してしまったという情報は関係者一同に暗い影を落とした。今後、関係を取り繕うかどうかは不明だが、既に勝負は付いているらしい。

おれはこの業界はまだ浅く、以前に他のクライアントのプレゼンに中途半端な知識で参戦してやはりボロクソにやられた事がある。たかが商談なのに人間性を否定されるような物言いを公衆の面前でされて、さすがにクライアントと言えども危なくちゃぶ台返しするところだった(しなかったよ😍)。そのトラウマと言う名の経験を踏まえ、今は修行中と称して後方支援に回っている。そんなおれからすれば、せっかく知見があるのに口が悪くて出禁とか勿体無い話だ。この業界でそういう嫌な性格の奴をたくさん知っている。政治家然り、圧倒的な知識や権力を持つ人ほど、それ相応の物言いになってしまい、性格を維持するのが難しいのだろうか。かと言ってグズグズしていると言葉で叩きのめされるし。だいたい、いい歳してもっと普通に物が言えないのだろうか。ハナサーズは得意になって喋り倒したんじゃなかろうか。マウンティングして罵倒する方は気持ちがいいだろうが、罵倒された方はずっと覚えてるものだ。上下関係はちょっと負けるくらいがちょうど良い。おれは結局、自分の愚直なアプローチしか信じられない。例えそれが柔らかすぎであるとしてもな!!💢