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人称から見るウルトラマンヒカリ

自分でもなんでここまでしたのかよく分からないが、気になって確認したり考察したりしてみたので頭の整理がてらまとめてみた。
無駄に大学レポートのような構成になったが、文体は多少読みやすさを優先してかっちりとしすぎないようにしたつもりなので、気楽に読んでもらえればと思う。

はじめに

現実世界において俺と私のように複数の一人称を使い分けることはおかしなことではない。だが、キャラクターにおいては基本的に統一された一人称を用いることが多い。
実際、ウルトラマンの一人称は私か僕で統一されているケースが多いように思う。平成になると俺が基本になる場合もわりとあるが、その場合も他の一人称を併用するケースはあまりなく、俺で一貫しているのが主流だ(例外はあるだろうが)。

そんな中で、ヒカリは俺と私の2種類の一人称があり、しかも場面によって使い分けられている。おおむね現実世界と同様の使い分けをしているように思えるのだが、その中にはいくつか腑に落ちない点がある。そのため、これまでの作品の中でどのような場面でどちらの一人称が用いられているか確認し、それはなぜかを考察していきたい。
また、二人称や三人称、口調なども同時に確認することで、他のキャラクターとの相関関係や心情を理解できたらと思う。

対象作品

ウルトラマンメビウス全50話(うち7~11、15~17、36話)
ウルトラファイトビクトリー
アーマードダークネス
ゴーストリバース
ヒカリサーガ
ウルトラコックピット

※49話等台詞は上記のほかの話にもあるが、人称出てこなかった話については今回省いた。
※15話も会話シーン自体はあるが、人称は出てこない。こちらは口調について考察するために視聴。
※今回は映像作品にのみ絞って検証、ショーや書籍は除外する。

作品内における人称の確認

対話者:一人称/二人称(/三人称)で表記する

本編
7話 ファントンの落し物
リュウ:なし/お前

8話 戦慄の捕食者
ボガール:なし/貴様
メビウス:俺/貴様、お前/奴(ボガール)

9話 復讐の鎧
メビウス:俺/お前/奴、そいつ、こいつ(ボガール)
リュウ:俺/お前

10話 GUYSの誇り
メビウス:俺、私/お前/奴(ボガール)

11話 母の奇跡
メビウス、母:俺/なし

16話 宇宙の剣豪
ザムシャー:俺/お前/こいつ(メビウス)

17話 誓いのフォーメーション
メビウス:俺/お前

36話 群青の光と影
ババルウ星人:俺/お前、貴様
メビウス:俺/なし*/彼ら(ブルー族の後身達)

* 36話は全体的に、ヒカリとして喋っているのかセリザワとして喋っているのかあるいは混じりあった状態での台詞なのかが不明な場面も多く、セリザワの発言でミライのことを君と呼んではいるがヒカリとしての台詞かどうか曖昧なため今回はノーカウントとする。

ヒカリサーガ
視聴者(ナレーション):俺/なし
アーブ:私/あなた
惑星トワールの老人:私/なし
キング:なし/あなた/奴(ボガール)
ゾフィー:俺/なし
母:なし/あなた
父:私/なし
ババルウ星人:俺/お前
※惑星トワールの老人=キングだが、話しかけた時はそれを知らないため分けた

アーマードダークネス
メビウス:私/お前
リュウ:俺/なし
全体:私/なし

ゴーストリバース
メビウス:俺/お前
暗黒四天王:俺/なし

ウルトラコックピット
プレイヤーとリュウ:なし/君、君たち/奴(ボガール)
メビウス:私/お前

ファイトビクトリー
ビクトリー:私/君
ショウ、サクヤ、レピ:私/君たち
ヒカル、ショウ:なし/君たち

ギャラクシーファイト大いなる陰謀(以下、ギャラファイ)
ソラ:なし/お前、君
トレギア:私/お前


 以上から、基本的な一人称は
立場が上、または尊敬の念を抱いている相手の場合はを使用するが、それ以外にも私を使用している場面が複数みられる(後述)。

二人称は君、お前、あなた、貴様の4種類が確認できる。
お前は敵、もしくはそれなりに親しい相手に使用。
一人称が私の場合、相手が明らかに年下の場合はを、それ以外はあなたを使用。
貴様は感情が昂った際に敵に対して使用。一度だけメビウスに対して使用しているが、ボガールを取り逃した場面での使用だった。

三人称に関してはそもそも少なく特筆すべき点もなかったが、気になったのはメビウスを指して使ったこいつ。台詞の内容がメビウスを賞賛するものであったので、敵に対して使用している場合と異なりこの時点でメビウスのことをそれなりに親しく思っていると捉えてもいいのではないだろうか。

口調に関して

敬語の使用に関してはおおむね場面や相手等は日本語と同じ感覚と言ってもいい。
ゾフィーに対して普段は使わない(15話不死鳥の砦、ヒカリサーガSAGA2)が、公的な場面では隊長と隊員としての体面もあるので、ギャラファイ1話での返答が「はい」だったのかもしれない。

基本的には砕けすぎない、やや固めの口調が多い。例外はゴーストリバースでの「ヒヤヒヤさせてくれたな、メビウス」という台詞。やや砕けた印象だが、これはメビウスと気安く話せる関係性が築けている時期(言葉を交わさずとも相手の意図が伝わるレベル)の会話なためと思われる。

考察

1.人称の使い分けについて

ゾフィーに対しての口調の違いから、自身の立場、立ち位置によって話し方を変えている可能性がある。
これはビクトリーファイトが特に顕著で、おそらくは一人称が私なのも開発者、責任者的立場から来るものと予想される。

また二人称においては、ソラに対してはお前、君の両方とも使っている。前者は個人的な協力要請のためお前(そしてそうであるならばそれなりに既知の間柄であることが読み取れる)を、後者は辞令のようなところが見受けられたため、公的な発言に近い意味合いで君を使用した可能性がある。


2.対メビウス時の一人称について

メビウスに対しては俺と私の両方が使われている。確認している中で一番不可解な点がこれだった。
メビウスと話をしていて私を使用している場面は以下。

・GUYSの誇り
「私の命はまもなく消える……ボガールの爆発を見届け、復讐を果たす!」

・アーマードダークネス
「私は今、この甲冑の中に囚われている」
「私に残った最後のエネルギーで、ダークネスフィアを光の国へ運ぶ(この台詞はメビウスを含むGUYSメンバー全員に対して)」

・ウルトラコックピット
「私にはこの勇者の鎧がある、あるいは……耐えられるかもしれん!」

対メビウスに関しては時系列で見てもある時期から切り替わっているというわけではないのでやはり使い分けと捉えてもいいのではないだろうか。

また、英語で言うところのI willのニュアンスに近い場合、こと意志の意味合いになる場合と、コックピットの時のように自分を強調したい場合に私を使用している傾向があるように思う。



3.ギャラファイでの惑星アーブの場面について

惑星アーブでの対トレギアの一人称はこれまでの考察を鑑みると俺でもいいような気もするが、実際に使われているのは私。考えられるものとしては、

①上司である意識がまだあった
② 後半部分のセリフがアーブに対しての宣言のようでもあるので、アーブに対する一人称として私を使用

の2点。
①はもう長官ではないといいつつまだ残っている上司としての意識が、私的な俺ではなく公的な私を用いらせたというもの。
②の場合は対アーブというだけでなく、対メビウス時と同様、I will(意思)の意味合いも含まれているものと思われる。
なお、この場面の「私は滅ぼされた者たちの怨念を身に纏い、この惑星を滅ぼしたボガールを必ず倒す」のEnglish ver.の台詞は以下の通り。

I will avenge those who have been killed,and I will defeat Bogarl who destroyed this planet!
(ギャラファイ5話 英語字幕より)


どちらも意志のwill、それも文脈から強い意志であることが読み取れる。このため、おそらく②の説が濃厚。強い使命感からくる強調の意味合いでの私なのではなかろうか。

最後に

ここまで長々と書いてきたが、正直自分が納得できるようこじつけた感も否めないし、おそらくほとんどはここまで深く意図せず使われてるんじゃないかとは思う。

またできればザ・ウルトラマンヒカリ(ヒカリサーガのDVDに付属している)も資料として加えるために書籍も対象にしたかったが、所持しているものが一部である上に、どこからどこまで揃えたらすべてと言えるかも不透明、偏りをなくすためにも今回は断念。当時の書籍類は見かけ次第買うようにしてはいるものの、入手困難であったりしてすべてを網羅するのは正直厳しい。そのうち所持しているものだけでも確認、検証してみたい。

確認として内容は飛ばし飛ばし見たが、何度も見てきて前後を知っているだけについつい魅入ってしまい、特にザムシャーの最期と鎧が砕けてボロボロになった姿に泣いてしまったりしていたので、もしかしたらカウントを忘れているところもあるかもしれない。そこは反省している。が、ほとんどは網羅できていると思うので、参考になればと思う(何のかはわからないが)。

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