どうしてわかってくれないの と言う前に

先日、双子の赤ちゃんが退院しました。
生後約3ヶ月。
夜泣きがまだあり手はかかるけれど
ちいさく産まれて入院したばかりの頃を思えば
大きくなったね、と微笑ましく感じます。

新生児をご存知でしょうか。
新生児とは、生後0日から28日未満の赤ちゃん
のことをいいます。
産まれたての赤ちゃんは
白っぽい（胎脂）場合が多く、だんだん
赤みを帯びた肌になる場合が多いです。
手はW字、足はM字に曲げ、よく動かします。
お腹はポッコリしていて、首はグラグラです。
手はグーであることが多いです。
手のひらに指などを当てると握り返してくる
把握反射があります。
口に触れたものに吸いつこうとしたり、
乳首がロに入ると吸う能力があります。
体温は少し高めで37度前後。
と、ざっと特徴を上げてもまだ足りません。
赤ちゃんはそれぞれ個性があり、とっても
可愛いです。

新生児の赤ちゃんは目まぐるしく成長します。
目に見える身体的成長は勿論のこと、
精神的な部分、心と脳の成長は目を見張ります
どんな赤ちゃんも学術的なことを越えた
能力を発揮したり、成長を遂げたりするのを
私は何度も見る機会を得てきました。
毎日私はそんな赤ちゃんの成長を見る事が出来
この上なく幸せな時間をいただいています。

本来であれば私の得ている幸せは、
誰よりもご家族様、中でも
赤ちゃんを出産されたお母様が
毎日感じ取られること。
病棟の赤ちゃんは、何らかの理由により
入院となり、ご家族様、お母様の代わりに
ドクター、ナース、心理士などなどと共に
保育士として私は接しているのです。

殆どのお母様は出産後ご自身の体調を加味し
または赤ちゃんのみが救急搬送の場合は
お母様が退院なさるまで、
赤ちゃんと対面は なかなか難しいです。
ですから、面会可能となりお母様が
初めて赤ちゃんを抱っこされる時、
涙を流される方が少なくありません。
皆さん『可愛いね、可愛いね』
と大切に大切に赤ちゃんを優しく愛でて
抱っこをずっとされています。
そして殆どのお母様は
「いつ退院出来ますか」
と聞かれるほど退院を望まれます。

冒頭の双子の赤ちゃんのお母様は出産後
面会にいらっしゃるまで1ヶ月ありました。
当院で出産されたので、
一般的に双子出産されたお母様が
出産翌日に車椅子で面会にいらっしゃる事が
殆どですが、冒頭の双子ちゃんのお母様は
ご自身の退院時には面会に足を運べる筈。
しかし、そのお母様は退院時ご都合が合わず
約1ヶ月後に面会に。
驚くことに初めての面会時に
5分も赤ちゃんの側にいたかと思うと
お帰りになる様子。
担当ナースが
「赤ちゃんを抱っこしてあげてください」
と促しましたが、対するお母様の回答は
「長女が待っているので帰ります」
でした。
近くにいた私と担当ナースが口を揃えて
「AちゃんとBちゃんはお母さんを
　ずっと待っていたので、1度でいいので
　抱っこしてあげてください」
と声かけました。
お母様は了承してくださり、双子ちゃんを
1人ずつ順に抱っこくださいました。

それから2ヶ月近くの入院中、
お母様とお父様が面会にいらしたのは2回。
2回目の面会時に
「あと1ヶ月は入院希望します」
と言い残し眠っている双子ちゃんを
抱っこすることなくお帰りになったことは
記憶に新しいです。

双子ちゃんは２卵生でありますが、そっくりで
日本人でありながら、パッと見ると顔立ちは
彫りが深く、更に髪の色素が薄く
欧米諸国の赤ちゃんに見え、
モデルの赤ちゃんのように可愛いのです。
産まれたばかりの頃は
２人とも殆ど眠ってばかりで、
ミルクもあまり飲まず心配でしたが、
２週間も経つと次第に大きな声で泣いて
手足をバタバタさせミルクを欲しがったり
ウンチが出たよ！と合図をくれたり。
そして、ミルクを飲んで満足すると
にこーっと笑っては２人で見つめ合ったり。
１人を抱っこすると、
「あーズルいな~抱っこ抱っこ！！」
とばかりに大泣きして抱っこをせがんだりと
心身ともに成長している姿を病棟のみんなで
見守っていました。

保護者様が双子ちゃんのご希望の入院期間が
過ぎて、
再度の入院延長希望に面会にいらした際、
ナース役職者から保護者様に退院のお願いが。
その際お母様が
『どうしてわかってくれないの！』
と大きな声で叫びました。
近くにいた双子ちゃんは眠っていた目を覚まし
手足をバタバタさせ大きな声で泣き出しました。
『うるさい、うるさい！』
とお母様の声が赤ちゃんに向けられます。
いつも泣いたら泣き止まない双子ちゃんが
お母様の声を聞いて目を丸くして黙りました。
私は少し離れたところにいたのですが、
その様子を見て、涙が出そうになりました。
″久しぶりにお母さんに会えたのに、
　「うるさい」って言われて、
あなた達はお母さんの声に耳を澄ませて
きっと黙ったんだよね。
もっと大好きなお母さんの声が聞きたいよね
抱っこしてほしいよね″
と心の中でつぶやいた私。

『どうしてわかってくれないの！』
と言う前に、
分かってあげてほしい赤ちゃんの気持ち。
お母様には届いていないのかな。

病院とご両親と話し合いが交わされ
期限を２週間延ばし先日退院した双子ちゃん。
お父様お母様に１人ずつ抱っこされていました
双子ちゃん２人とも笑顔で退院していきました

ご両親には理由があって、
双子ちゃんの３ヶ月の入院中、面会に
来れなかったとのこと。
ご事情は私には分かりかねますが、
双子ちゃんはずっと病院で待っていたのです
お隣の赤ちゃんは毎日お母様が面会にきて
抱っこしてくれたりお風呂に入れてもらえたり
そのお隣の赤ちゃんはお母様が来れない時は
お父様がいらして声掛け。
その間、
双子ちゃんにはナースや私を含む保育士や
多くの人が愛情を注いでいたけれど、
２人はいつもご両親を待ち望んでいた筈。

『どうしてわかってくれないの！』
と言う前に、お母様には双子ちゃんに
何か出来たように思います。

双子ちゃんたち、
今頃お母様の側にいて大きな声で泣いてるかな
今までずっと待っていたんだから、
沢山甘えていいんだよ。
今は我慢はしなくていいからね。
私は双子ちゃんたちの元気に泣いたり笑ったりする姿を
沢山見させていただけたことを感謝しています
ご両親から託された双子ちゃんへの愛情を
たっぷり注げた自信はあります。
今の私は、
双子ちゃんが何より嬉しい待ち望んだご両親との日々の幸せを願わずにはいられません。

今日も1日が始まりました。
自分の機嫌を取り
気持ち良い1日を過ごします。

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