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「Life is Strange」と「Remember Me」

前者はゲームが好きな人は知っているだろうけれど、後者はおそらく日本で知っている人は多くないと思う。ちなみに、ピクサーの映画ではなく前者を作ったゲームスタジオ「DONTNOD Entertainment」の処女作となったゲームだ。

「Remember Me」を最初に知ったのは確か日本人ゲームクリエイターの記事だかブログでこのゲームに携わったとの記述を見て、「聞いたこと事無いゲームだなぁ」とか思ったのがキッカケだった。ちなみに映画の方はこの件から数年後の2017年に日本公開なので、この頃は検索すればこのゲームが普通に上位に並んだ。

ゲーム系メディアでも派手に扱った記事も見つかり、パブリッシャーがカプコンだった事もあって興味を持ったのだが、何か様子がおかしい。日本版が見つからないのだ。PS3版が発売されていて、カプコンがパブリッシュしているのにも関わらず、だ。

その時に軽く調べて見た感じでは、どうやら開発元の会社が業績不振で潰れかけていてカプコンも困ってるらしい、的なイマイチ確証に欠ける情報しか見つからなかった。まぁ、とりあえず入手しておくかという感じでヤフオクで見つけた海外のPS3版を落札して、そのうちプレイするかぁ、といいつつ積みゲーになってそのままだった。

それからしばらく経って、「Life is Strange」の記事を読んだ際に開発会社の欄に「DONTNOD」の文字列を見つけて驚いた。おぼろげな記憶の中では既に潰れた事になっている会社から新作が発売されている。一体どういう事だ? という野次馬根性から詳しく調べてみると意外な事実というか経緯が見えてきた。

まず、「DONTNOD Entertainment」はフランスのゲーム会社。UBI Soft や EAからのスピンアウト組が2008年に設立したようだ。(ちなみに、「Criterion Games」という会社から来た人もいるとあるが、この会社は全く知らなかった。「Burnout」が代表作っぽい)

wikipedia先生によれば、最初はSIE(当時は多分SCE)の出資を受けてPS3専用のRPGを制作していたようだが、3年後の2011年に出資を打切られた模様。まぁ、3年経っても完成しないとそうなりますよね・・・・。

その後、Gamescomで他にパブリッシュしてくれる会社を募ったところカプコンが名乗りを上げる。そういった状況でリリースされたのが「Remember Me」だったらしい。

しかし、売上は期待を遥かに下回ったようで開発会社は財政的に破綻。その後公的資金で再建する事になったような記述のような気がするが、海外の法の元での出来事なのと英語力の乏しさから今ひとつ自信が持てない。おそらく、日本で言うところの「民事再生」のような状態になったと思われる。

ここからは完全に推測になるが、カプコンなので日本向けのローカライズも予定されていたとは 思う。が、海外でのセールスがそんな感じで開発会社もヤバイのに、更に規模の小さい日本市場での発売となるとパブリッシャーという立場のカプコンとしてはこれ以上の出資は出来ないという判断になったのではないだろうか。

「Remember Me」はPC版PS3版Xbox360版が発売されていてPC版はSteamでも扱っているが、全てのプラットフォームで日本版は無い、というか日本では発売されていない。Steamに至っては日本からは購入する事が出来ない。

Steamでの扱いから推測するに、日本リージョンでの販売契約を結んでいない可能性がある。まぁ、上記のような状況で新たに販売契約を結ぶという話にはさすがにならない気がする。

肝心のゲームの方はと言うと、どの記事も取り上げている様に世界設定が「ネオ・パリ」を舞台とする近未来モノなのがポイント。「ブレードランナー」「AKIRA」スナッチャー」なんてタイトルに反応する実在都市系近未来SF(?)が好きなあなたにオススメな感じ。実際にプレイすれば分かるが、街並などは非常に雰囲気のある面白い風景になっている。

ただ、どの記事も深く突っ込まない所からもお察しだが、ゲーム的な観点から見たこの作品は相当にアレだったりする。ここでは詳細に書かないが、ジャンル的にはアクションゲームで敵やボスと戦闘したり、建物の壁から壁へと飛び回ったりする。日本では発売されなかったが、海外版は比較的容易に入手できるので興味のある方はプレイしてみるのもいいだろう。

そんな感じで失敗した「DONTNOD Entertainment」だが、その後もゲーム開発は続けていたようで2015年に「Life is Strange」が発売され、これがヒットする。「Remember Me」での失敗を知っていると最初リリースされた海外で1エピソード単位の販売なのは資金繰りの関係では?と邪推せずにはいられない。だが、ヒットした事により経営は安定したようで、次の作品の開発もアナウンスされている。

個人的に興味深かったのは、「Life is Strange」の続編を除いて、すべての作品でパブリッシャーが違うという事。仲のいい会社が無いので毎回パートナーが違うのだろうか? とか勝手に想像してしまう。

ちなみに「Life is Strange」のSteam版はエピソード1が無料配信になっている。ゲーム的には日本語に対応していない事になっているが、後に日本語対応DLCが無料で配信されたので、無料で日本語でプレイ出来る。

「Remember Me」と「Life is Strange」を両方プレイすると分かるが、両方共ゲーム的に象徴的なシステムは「逆再生出来るカットシーン」だ。「Remember Me」では記憶操作、「Life is Strange」では時間操作という形で使われている。

確かに他のタイトルでは見ない要素で(知らないだけかもしれないが)ユニークなシステムだと思う。「Remember Me」では他に色々混ぜ過ぎて微妙な感じになっているが、「Life is Strange」はそれにテーマを絞っているのがヒットした要因ではないかと個人的には考えている。

まぁ、さらにぶっちゃけて言うと、フランスのゲームスタジオはストーリーにものすごく重点を置く印象があるので (「HEAVY RAIN」のQuantic Dreamとか)、小賢しいゲーム性とか考えずにストーリー が魅力的になるように頑張った方が良い結果が出るような気がする。

あと、フランス人はアクションゲーム作るのには向いてない国民性なのかもしれない(個人の感想です) 。

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