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「ヒカルの碁」で一世を風靡した囲碁、なぜ再び埋もれたのか?一力遼九段の応氏杯世界選手権優勝で囲碁界再生なるか!?

囲碁と将棋、どちらも日本の伝統的なボードゲームで、長い歴史を持っています。

特に将棋は藤井聡太七冠の登場により、近年再び大きな注目を集めています。

一方、囲碁は一時的に「ヒカルの碁」ブームで盛り上がったものの、その後は再び目立たなくなってしまった感があります。

ここでは、特に漫画やアニメという視点から、囲碁と将棋の違い、そして囲碁が盛り上がりにくい要因を解説します。

漫画・アニメにおける将棋の魅力

将棋は漫画やアニメで非常に描かれやすい題材です。

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まず、将棋の駒には「王」「飛車」「角」「金」などの漢字が書かれており、視覚的に分かりやすいという特徴があります。

これにより、初心者や将棋をよく知らない人でも、「王手」や「飛車取り」といった状況が視覚的に理解できるため、物語としての展開が非常に盛り上がりやすくなっています。

さらに、将棋の対局では、駒が動く瞬間に劇的な転換点が訪れることが多く、逆転劇や最後の「王手」など、ストーリーにおいても山場を作りやすいのです。

将棋のゲーム自体が、攻防が明確に視覚化されるため、駒を動かす一手一手に緊張感やドラマが生まれやすく、漫画やアニメで描かれる際には視覚的にも物語的にも魅力的な題材となります。

『ラブひな』『魔法先生ネギま!』の原作者で漫画家の赤松健さんも「将棋漫画は絵的に映える」「囲碁は(対局中の盤面を)パッと見てどちらが勝っているか分かりづらい」と、囲碁を漫画やアニメで魅力的に魅せることの難しさを語っています。

赤松さんのABEMAのリンクは視聴期限が切れて見られないので、下記のポストにあるリンクからABEMAに飛んでいただくと該当部分の映像が見られます。


囲碁の漫画・アニメにおける難しさと『ヒカルの碁』の工夫

これに対して、囲碁は視覚的に分かりにくいという特徴があります。囲碁では白と黒の石を盤上に配置していき、陣地を広げることが目的です。

しかし、石が動くわけではなく、盤上に静かに積み重なっていくため、攻防の劇的な瞬間が将棋ほどはっきりとは見えません。

さらに、囲碁のルール自体が将棋に比べて複雑で、初心者が今の局面がどのように進行しているかを直感的に理解するのが難しいのです。

こうした囲碁の難しさを克服し、視覚的にわかりやすくするために工夫されたのが、漫画『ヒカルの碁』です。

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この作品は、単に囲碁の対局を描くだけでなく、平安時代の天才棋士・藤原佐為(ふじわらのさい)の霊が主人公の進藤ヒカルに取り憑くというファンタジックな設定を取り入れることで、囲碁に興味のない読者にも楽しんでもらえる要素を加えています。

『ヒカルの碁』の設定と視覚的わかりやすさ

進藤ヒカルは、運動好きで囲碁のルールも知らない普通の小学6年生。

ある日、祖父の家で見つけた古い碁盤に触れたことをきっかけに、藤原佐為という平安時代の天才棋士の霊に取り憑かれます。

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佐為はかつて、実在する歴史的な棋聖・本因坊秀策にも取り憑いていたという設定で、囲碁界の歴史ともリンクしています。

この「霊に取り憑かれる」という設定が、囲碁の対局を視覚的に魅力的に見せるための工夫の一つだったと言えます。

物語では、佐為がヒカルを通じて囲碁を打つ場面が多く描かれますが、ヒカルは当初囲碁のルールを知らないため、佐為が盤上でどのように戦っているのかを観客と同じ視点で知ることになります。

つまり、読者もヒカルと一緒に囲碁の奥深さや戦略性を学んでいく仕組みができているのです。

また、佐為がヒカルに碁を打つよう促す理由は、「神の一手」を極めたいというものです。

この神秘的な目標が物語全体を通じた大きなテーマとなり、単なる対局以上のドラマ性が加わります。

これにより、囲碁が未知のものだった読者も、佐為とヒカルの成長と挑戦を通じて囲碁の魅力を感じられるようになっています。

一時的な『ヒカルの碁』ブームとその後

『ヒカルの碁』は、1999年から2003年にかけて連載され、囲碁界に一大ブームを巻き起こしました。

多くの若者がこの漫画をきっかけに囲碁に興味を持ち、囲碁教室に通う子どもたちが急増しました。

特に若い世代に強い影響を与え、囲碁の普及にも貢献しました。

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しかし、このブームは長続きしませんでした。

囲碁のルールの難解さや、ゲームとしての地味さが、次第に若者を囲碁から遠ざける要因となったのです。

囲碁は一度覚えると非常に奥深いゲームですが、覚えるまでのハードルが高く、ブームが過ぎ去ると、再び多くの人々の関心は薄れてしまいました。

その一方で、囲碁は日本だけでなく中国や韓国で強力なプレイヤーを輩出するようになり、国際大会が盛んに行われるようになりました。

日本は国際舞台でもかつての勢いを失い、国内での囲碁人気も徐々に減少していきました。

一力遼さんの快挙と今後の展望

そんな中、2024年に一力遼さんが囲碁の世界大会「応氏杯」で初優勝を果たしたことは、日本囲碁界にとって大きな希望となりました。

彼は、準決勝で中国の強豪棋士・柯潔九段を逆転で破り、決勝でも圧倒的な勝利を収め、日本勢としては初めての快挙を達成しました。

一力さんの成功は、日本の若手棋士にとっても明るいニュースであり、彼の活躍が再び囲碁界を盛り上げるきっかけになることが期待されています。

囲碁が再び脚光を浴びるためには、こうした若手棋士の活躍や新しいメディア戦略が欠かせません。

囲碁を視覚的にわかりやすくするための工夫

囲碁の魅力をもっと多くの人に伝えるためには、『ヒカルの碁』が行ったような視覚的な工夫が今後も重要です。

将棋はそのルールや駒の動きが視覚的にわかりやすく、漫画やアニメでの表現も容易です。

しかし、囲碁はその地味さや静的な対局展開がネックとなるため、物語の中で囲碁そのもの以上に、対局者の心情や霊的な要素を絡めるなどの工夫が求められます。

また、現代の技術を活用して、デジタルなビジュアルやAIを使った対局の可視化が進めば、囲碁の戦略性がより理解しやすくなる可能性もあります。

視聴者や読者が対局の動きや展開を直感的に理解できるような新しい表現方法を開発することで、囲碁は再び広く親しまれるようになるでしょう。


まとめ

漫画やアニメの視点から見ると、囲碁と将棋には視覚的な違いが大きく、将棋が漫画やアニメで描かれやすい一方で、囲碁はその地味さやルールの複雑さが障壁となっています。

しかし、『ヒカルの碁』のように、ファンタジー要素を取り入れたり、キャラクターの成長を軸にした物語展開を工夫することで、囲碁もまた多くの人々に愛される題材となり得ます。

一力遼さんの国際的な成功もあり、今こそ日本の囲碁界が再び盛り上がる可能性が見えてきています。

新しい表現方法やメディア戦略を取り入れ、次の世代に囲碁の魅力を伝えていくことが、これからの囲碁界にとって重要な課題となるでしょう。

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