ちいさな庭だより。2020年3月号。

[intro]
 
新型コロナウイルスが猛威をふるい、世界的に大変な状況になっている。たのしみにしていた花苗の交換会も中止が伝えられた。加えて地震や天候の急変もあり、落ち着かないまま三月尽を迎えた。と、これは人間の世界の話。植物たちは、といえば、芽吹いたり花開いたり。どことなく淋しげだったちいさな庭に、色彩が戻ってくる。
 

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[畑のこと…よしもと農園の、今月のヒトコマ。]
 
 春はいろんな意味で変化が大きい時期なので、なんだか急かされているような気になることもあり、少々苦手だったりするのだが、植物たちの姿をながめる分には、とても好きな季節だ。不安定な気候にもめげず芽吹いてくる、ちいさくも力強い姿を目の当たりにして、毎度感動する。
 今月おどろいたのが、玄関先の杏とおぼしき植物。父が植えたものなのだが、本人も覚えがないと言っていた。鉢植えだったのだけれど、鉢皿がないまま土の上に置いたため地植え化してしまい、移動できない状態に。昨年は父の急逝もあり、剪定らしい剪定もしないまま3mほどの背丈になっている。晩秋から先月までは寒々とした姿をしていたのが、ここにきて枝の先に蕾らしきものがつき、ふくらみ始めた。梅にしては少し遅いし、いくら今季はあたたかいとはいえ、桜にしては少し早い。杏とおぼしき…と書いてはみたけれど、確証はなかった。
 そんな折、能登を震源とする地震があり、祖父母の家が傷んでいないか確認に出向くことになった。この家の庭には、おおきな杏の木がある。しかしこの時期に祖父母の家を訪ねたことがなかったわたしは、当然ながら庭の杏の花も見たことがない。実際に行ってみたところ同じ蕾がついていたので、杏に間違いない、ということになった。長年の謎が解けて少しほっとしたと同時に、花が咲いたところを見ることなく父は逝ってしまったんだな、と思うとなんともいえない気持ちになった。

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 花が咲いているのを見たご近所さんにたずねられて、杏だと答えると、珍しいのか少し驚かれる。そして結実がたのしみね、鳥たちに狙われないようにね、と。ともあれ、長いことよしもと農園にいながら、今さらのまさかのニューカマー、という感じである。

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 果樹ではブルーベリーが蕾をつけ始めている。スグリといちじくはようやく芽が出てきたところ。ブラックベリーがここ数年あまり調子が良くないので、ちょっと心配している。アキグミは昨シーズン落ちた実から発芽したものがまたひとつ見つかったので、室内の鉢に移植して育てることに。実生のスチューベンも、やわらかな明るい緑の芽を伸ばし始めた。鉢底から根が見えているので、そろそろ植え替えかも。
 

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