ちいさな庭だより。2024年1月号。

[intro]
 元日からいきなりの地震。ちいさな庭があるここ富山も震度5強、祖父母の家がある石川・能登は6強の揺れを観測。祖父母の家には未だ行くことができず、建物だけでなく庭の状況や今後について心配が尽きない年明けとなった。
 
[街なかの、裏庭より。] 

 

 年が明けて一か月が経とうとしているところだが、まず正直に言って、年が明けたという実感がない。今までとはまったく異なる世界線に放り込まれたような気分。元日の揺れでカオスと化した自室を片付けるのに2週間を要し、ようやく少しずつ日常を思い出してきた、といったような感じだ。
 裏庭の状況はというと、もともと鉢がしっかり隣合っていることもあったのか、倒れたり折れたり、というトラブルはほぼなかった。ブロックの上に乗せていた鳥たちのための自作フィーダーが少々ずれていた程度。危ないので現在はフィーダーも下ろしている。
 一方で室内管理の植物には一部被害が出た。作業テーブルの上のイワヒバのちいさな鉢が、置いてあった棚ごと揺れにより倒れ、鉢から苗が放り出されてしまったり、サボテンの金盛丸を植えた陶製の香炉が床に落下し、香炉が大破して土が散乱したり。どちらも植え直して様子をみているところ。
 不思議だったのは、窓際の植物たちがすべて無事だったことだ。揺れの方向によるものなのだろうか、幅の狭い場所にあるにもかかわらず、落下することも倒れることもなかったのは救いだ。それでもいちおう、揺れがある程度収まるまでは一旦低い場所に下ろし、滑り止めのマットを敷いて配置し直した。マットの色がピンクなので、どことなくファンシーな印象になってしまったのがちょっと笑えてしまう。
 

(マミラリア赤刺カルメナエ)

 能登の祖父母の家については、倒壊こそ免れたものの、応急危険度判定では「危険」の赤い紙が貼られたとのことで、目下は解体する方向で話が進んでいる。やむなしとは思うが、祖父の愛でていた庭の植物も撤去や伐採するとなると、挿し木や移植をいくらかしてきたとはいえ、やっぱり心が痛む。何かいい方策がないか思案の日々。
 

(ヒヤシンス・白)


(シクラメン)

 そんな中でのささやかな喜びが、ヒヤシンスとシクラメンだ。ヒヤシンスの方はやはり2年目ということもあり、高さが出なかったが花をつけた。そしてシクラメンは、ちいさいながらも葉が力強く伸びて、白っぽい蕾をつけている。開花がたのしみだ。
 

(羽化不全のツマグロヒョウモン・雄)

 そして、正月の混乱の最中に、2匹のツマグロヒョウモンが羽化した。1匹は羽化不全ながらも一命をとりとめ、毎日ハチミツ水を吸ってケージの中で暮らしている。もう1匹は羽化には成功したものの、寒さのせいか、はたまた力を使い果たしたのか、その日のうちに息絶えてしまった。そもそもこの時期に羽化することが、彼らにとってはとてもリスキーなことであり、ましてや人間でさえもうろたえる状況下だったのだから、むしろよくがんばった、と思う。ちなみに、先月羽化した個体もまだケージで暮らしている。天気の良い日にバタバタとケージ内を飛ぶので、2か月も経って羽根が幾分傷んできているが、まだ元気だ。落ち着かない状況の中でもこの2匹のハチミツ水給餌は欠かさず行った。残っていた幼虫たちは地震の際にケースの転倒や落下で死んでしまい、残るは蛹が1つのみとなった。
 
 
[ロザリアンへの途…雨とか雪とか。]
 

(マダム・ヴィオレ)

 バラたちは軒並み冬休みの真っ最中。古い葉が落ちて、どことなく淋しい風景ではある。湿雪の重みでたわんでいるものもあるが、画像のマダム・ヴィオレのように早くも芽吹いているものも。肥料が効いているのだろうか。カイガラムシがしつこいので、また薬剤散布かなぁ。もう少し枝の整理をするべきだったか、と思わないでもない。雪が落ち着くのを待って、できるところからまたはじめようと思う。
 
 
[outro]
 

 

 新たな年が、こんなスタートになるとは思いもしなかった。それでも、まだこうしてなんとか無事でいられるのはありがたいことなのだ。未だに水や電気のない中で暮らすひとや、家屋が倒壊して行き場のないひとがたくさんいる。住み慣れた場所から避難して見知らぬ土地にいるひとも。どれだけ心細いだろうかと思う。祖父母の家はもちろんのこと、自身のルーツである町が無残な姿になってしまったのを見るにつけ、胸がつぶれる思いだ。そして、こんなにも、北陸という地がじぶんは好きで、大切に思っているのだ、と改めて感じることになった。じぶんに、どんなことができるだろうか、どんなことでならこころを寄せられるだろうか。被害があまりにも甚大で、息の長い支援が求められている。しょんぼりしてはいられない。ささやかなことからでも、きもちを重ねて届けてゆこうと思う。
 

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