氣づきの国語辞典「蝿」編
「蝿」は羽延え(羽ふるう)が語源。
ハウル→ハエル(生えるもの)ということから名
付けられ、生ずる、湧くを意味する。
ハエは口だけでなく、足の先に味を感じる器官を
持っており、手足をこする行為はゴミを落とし、
いつでも味がわかるようにするため。「蝿」とい
う漢字は、この動作を表したもので、前足をこす
る姿が「縄」をなっているように見えることに由
来する。
蝿の目は複眼で約4,000もの個眼に分かれてお
り、ハエの視覚は対象物をモザイクとしてとらえ
ている。
うるさいという言葉を漢字で書くと「五月蠅い」
「心」を意味する「うら」に「狭い」を意味する
「狭(さ)し」が付いたもの。刺激によって心が閉
鎖状態になる様子をいった。
五月の蝿が特にうるさいということから来た当て
字だといわれている。
横水利一の短編小説「蠅」
1898年福島県出身の小説家で、菊池寛を介して
川端康成と出会い、2人は生涯に渡る師友とな
り、新感覚派の作家として活躍した。
『日輪』と『蠅』を同時に発表したことで文壇の
注目を浴び、『機械』が小林秀雄(こばやし ひ
でお)に絶賛され、次第に志賀直哉と並んで「小
説の神様」と称されるようになった。蠅目線で
書かれた珍しい作品で、人間をリアルに描いた読
みやすさがある。